前田司郎さんの件について

性被害に関する詳細が含まれます。フラッシュバックなどの心配がある方は注意してください。



  • 初めに

劇作家の前田司郎さんが、自身が主催するワークショップの受講生に対して性加害をしたのではないかという件について、これまでの経緯をご説明します。

私は、映画をはじめとした映像作品や、演劇の舞台に出演していた女優です。既に退所していますが、事務所に所属して活動していました。
今回、きっかけとなったツイートをした映画監督の山中瑶子さんは、私の友人です。
この春に私は、役者を辞めることを決めて、山中さんにご挨拶の連絡をしました。
山中さんと電話で、役者を辞めたいと思うに至るいくつかの原因を話す際に、前田さんとの間に起きたことの話になりました。既に山中さんには、一年ほど前に、嫌な記憶としてお話していました。
山中さんはこのことに関してずっと引っかかっていたようで、2022年3月に榊英雄氏に対する告発があった際に、私のことを考えていたそうです。

その後、前田さんがTwitterで、次回のワークショップの告知をするツイート(現在は削除されています)に対し、2022年5月1日に山中さんが以下のように引用リツイートをしました。


山中さんのツイートの内容に関しては、私は承諾しています。
山中さんはこのツイートで、起きたことの細部には触れず、
『「やめてください」って朝まで言われても結局行為に及びましたよね』
という情報のみに留めています。もちろん私の名前は伏されています。

その後2022年5月3日に前田さんがTwitterで釈明の文章(現在は削除されています)を公開しました。
私をXと称して、私との間にあったことが書かれています。
山中さんのツイートの内容だけで、私のことを思い出したのだと思います。


その日のうちに読みましたが、前田さん視点で書かれた内容が、私に起きたこととはあまりにも違うと思いました。
前田さんが自身の潔白を証明するためだけに書かれた、私を置き去りにした一方的かつ詳細な内容にショックを受けました。しかし同時に、前田さんの文章を読んだ方のTwitterでの反応を見て、私の言うことを皆さんに信じてもらえないのではないかと怖くなりました。
私と前田さんの関係性は何も問題がなく、山中さんが誤解をして勝手に告発をしているのだと読めたからです。

その後、山中さんにTwitterのDMで告発した方の文章を読みました。


前田さんとの関係をおかしいと思っているのは自分だけではないと思えました。

前田さんとの間に起きたことを、私がどう感じて考えてきたのかは、外からははかりしれないのだと思い、自分の言葉で書きたいと思いました。



  • 起きたこと

知人の紹介で、前田さんのワークショップ(以後「WS」と略します)に参加しました。詳細な時期については明記しませんが、数年前です。私にとっては、随分前のことではありません。

WSに参加する以前は、私は前田司郎さんのことを知らず、作品に触れたこともありませんでした。

WSの会場は五反田にあるアトリエヘリコプターという劇場でした。
ご存知の方も多いとは思いますが、アトリエヘリコプターというのは、前田さんが主宰する五反田団という劇団の専用劇場兼スタジオでもあります。
WSは一週間弱あり、参加者は30名〜40名ほどいました。

連日WSが終わると、交流を深め合う時間がありました。
最終日の交流の時間では、ご飯やお酒を飲み食いしながら、そこで前田さんや参加者の人たちとで連絡先を交換する流れになり、出来たグループラインを通じて前田さんと連絡を取れる状態になりました。


やりとりの記録は残っていないですが、わたしの記憶では、前田さんの方から直接連絡が来ました。
LINEを通じ色々な話をしている内に、食事の誘いが来たと思います(前田さんの文章にも書かれていたくだりです)。
WSに参加してから、一週間程度経っていたと記憶しています。

私はWSに参加した後すぐに、前田さんが携わった映画を観たり、彼が書かれた本を購入して読んだりして、尊敬の念を持つようになりました。
この文章を書くに当たって、プライベートでやっていた自分のSNSの当時の投稿を確認したら、前田さんの著作を読んで感銘を受けたことが記されていました。
なので、食事の誘いが来たときは、前田さんに色々とお話を聞ける機会ができたことが、素直に嬉しかったと思います。


前田さんの文章では、食事をする以前のLINEでのやりとりの段階で、私が前田さんをディズニーランドに誘ったとあります。
これは決して前田さんと2人きりで行くつもりで誘ったわけではありません。
前田さんが知人や友人と複数人でボルダリングやキャンプに行っている、とLINEで話していたことから、複数人で行くことが前提でした。
実際に、私は前田さんのWSで出会った他の参加者の方たちとグループラインを通じて、数人で遊びに行ったりしていました。

そして当時わたしには長く交際している恋人がいました。
恋人がいるのに、前田さんと2人でディズニーランドに行くという発想は私にはできないです。


前田さんと食事に行くことを事前に恋人に伝えてから、前田さんに会いました。
恵比寿の前田さん行きつけのお店で食事をしながら、さまざまな話をしました。
自分の地元の話やお芝居のこと。私の母と前田さんの生まれ年が一緒だということにお互い驚いたりしました。
服を脱ぐ映画には怖くて出たくないということを言ったら、前田さんは「自分の周りの女優でも、脱いだことを後悔して辛い思いをしている人がいる」と理解を示してくれ、私の話を終始優しく聞いてくれました。気がつくと、終電のない時間になっていました。


食事をした後、前田さんの文章に書かれていたような、私が前田さんに「わざと終電を逃した」等の発言をした記憶は一切ありません。
私には恋人がいたので、そのような発言をすることはありえません。
自分の意識が低かったせいなのですが、気づいたら終電のない時間になっていた、というのが正直なところです。


それに加えて、その頃は終電を逃すことが多い環境にありました。
私は当時、「監督に気に入られるといいね」という言葉を周囲から投げかけられる機会が度々ありました。そして、その方法はプライベートの場で話すことだと思っていました。

飲みの場で話して仲良くなったら、使ってもらえるのではないかという浅はかな考えがありました。
演出家や監督だけでなく、俳優同士の数人で飲んでいる時でも、多くコミュニケーションを取ろうとしていました。
なので、前田さんとだけでなく、そういう集まりの時は周りが帰ろうと言わない限り、朝まで過ごしていました。その輪の中にずっといれば置いてけぼりを食らわずに済むと思い込んでいました。
実際に、飲み会で演出家や監督が残っているのに若手の俳優が先に帰るのは難しい、という空気があると思います。

また、違うWSを受けた際、飲み会で演出家に彼氏がいるのか?と聞かれ、いますと答えたら、急にその演出家の顔が怖くなりました。
恋人のことを知らないのに、女優は色んな人と付き合った方がいい、別れた方がいいと言われ、それを機にその演出家は私に対してとても冷たくなりました。

「演出家や監督に彼氏がいると言ったら使ってもらえなくなる」とその時感じ、そう思い込むようになりました。


これも前田さんの文章に書いてあったことですが、前田さんから、終電大丈夫?と聞かれた覚えはありません。
むしろ、終電を気にかけていただいていたならそこで気づいて帰っていたと思います。
でも、実際にどういう言葉でやり取りをしていたかというのは、不確かな記憶のまま私の都合の良いように書けてしまうかもしれません。
前田さんの文章を読んでそう思いました。
できるだけ、詳細な会話の内容を再現しようと努めるよりも、記憶に確信のある「何があったか」を軸にこれから書いていこうと思います。


終電がないことに気づき、店を出た後、散歩をする流れになりました。
「お散歩する?」と言われたことが印象に残っています。
1時間弱歩きながら話をしました。
どこか別の店に入るのだと思って歩いていました。

着いたところは、アトリエヘリコプターでした。
アトリエヘリコプターは、前田さんの自宅も兼ねていて、自宅部分で打ち上げをすることもあったようです。
それもあって、家に入ることに対して警戒はしていませんでした。

着いてからも、私は朝まで起きていようと思い、結構長い間ずっと座りながら話をしました。
リビングのような広い部屋でした。前田さんも適切な距離を保っていてくれていました。距離感でいうと、私と前田さんの間に大人5.6人分以上入るくらいにはありました。
朝まで起きていようと思っていたのは、前田さんとはいえ男性と2人きりであることは意識していたからです。

前田さんに「お風呂入っていいよ」と言われたので、お風呂を借りました。
私から求めたわけではありませんが、着替えを貸してくれて、深く考えずにそれを着てしまいました。
今思えば、ここでもっと警戒するべきだったのかもしれません。
お風呂を借りるべきではなかったのかもしれません。
前田さんが私を性的対象として見ているとは思っていなかったので、そこではまだ違和感を持てませんでした。

お風呂から上がり、着替えた後もずっとリビングで座っていました。
今思えばそこから、前田さんの私に対する距離が近い印象でした。
私と前田さんの間に人が1人入るくらいです。

具体的なきっかけは、前田さんが私の手を、小さいねと言ってきたことです。
前田さんが彼の手と、私の手を重ねて、大きさを比べていました。
その後も話をしていましたが、距離が近くなっただけで、手を比べる以外に触れられることはありませんでした。

しばらくすると、「あっちで寝てていいよ」と言われました。
あっちというのは別の部屋の寝室のことで、その言い方から、私を1人で寝かせてくれるのだと思って1人で寝室に向かいました。
でも、ベッドを見た時に、ベッドが大きいこともあって、少し不安になりました。自分が今どういう状況なのかを理解して身体が固まったのを覚えています。
前田さんはその時リビングにいて、何かをしているようでした。
1人で寝れるのだと思って横になりましたが、落ち着かず、棒のようになっていたと思います。

しばらくして前田さんが入ってきて、身体が固まっている私を見て、おかしそうに笑っていました。
私はその時、その笑いを、状況を理解し硬直している私に対して、そんなことしないよ、という意味で笑ったのかと思いました。
でも、前田さんはそのままベッドに来ました。
だとしても、さすがに手は出してこないだろうと思ってしまいましたが、ここからはもうずっと「怖い、どうしよう」という感情でした。でも動けませんでした。

それからキスをされそうになりました。私は抵抗しました。
なんでダメなの?と言われても、彼氏がいるからと答えられもせず、何かと理由をつけて断りました。
「嫌です、やめてください」と言うだけではやめてくれず、その前に「恥ずかしいから」とか、とにかく色々な理由を言いました。それがよくなかったのかもしれません。
前田さんは私が抵抗し続けることで、「なんでダメなの?いいじゃん」などと苛立っていました。でも、力がすごく強くて、抵抗しきれず、キスをさせてしまいました。
すると下着に手を入れようとしてくるので、それだけは絶対に嫌だと思って、抵抗し続けました。
この時も、「嫌です、やめてください」だけでは通用せず、「恥ずかしいから」「無駄毛の処理をしていないから」などと前田さんを不快にさせないように理由を付けました。
すごい力で触ってこようとするので、私も自分の出せる全力で何度も抵抗しました。一度は前田さんが諦めて寝ました。

前田さんが寝ている間も、私は一切眠ることはできず、かといってそこから逃げ出すこともできませんでした。
前田さんの眠りが浅く、何度か起きる彼に私はそのたびに必死で抵抗しました。
最終的には私が嫌がっていることが前田さんに伝わり、ようやく本当に眠ってくれました。ホッとしている自分がいました。
でも、結局朝になり目が覚めた前田さんは、私の上に覆いかぶさり、私の全力の力でさえ抵抗できないほど強引にその行為をしてきました。
私はもう開き直るというか、もう抵抗するのを諦めました。

前田さんは避妊具をつけませんでした。
私の身体がとてつもなく擦れて痛くて、早く終わって欲しいと思うしかありませんでした。
でもその時間が永遠に感じられました。
その間は恋人のことをずっと想像し、何回か恋人の名前を途中まで言っては飲み込んでいました。


終わってから、前田さんの身体を見ると、垢がついていました。
そんな光景を今まで見たことがなく、前田さんも混乱しているようでした。
私は、自分から出た垢だと思い込んで、恥ずかしくなりましたが、何も言えませんでした。前田さんも何か言うことはありませんでした。
それほど前田さんが強引で、身体が擦れたのだと思いました。
ずっと痛くてたまりませんでした。

でもその時は、私は自分のこの状況に頭が追いついていないし、前田さんも行為をしたことについて話すことはなく何事もなかったように、近くに美味しいご飯屋さんがあると言われました。普通に会話に応じてしまいました。
一緒にそのお店に入ってご飯を食べました。
私は、前田さんの顔を見ることがあまり出来ず、気まずい空気が流れていました。
それから気まずい状態をどうすることも出来ないまま、家に帰ったのを覚えています。

LINEでそのあと会話をしましたが、それでも前田さんは起きたことや、これからの関係性について触れてくることはしませんでした。


恋人に対する罪悪感と、それまで恋人以外とそういう行為をしたことがなかったし、私の中でそういう行為は恋人としかしないものだと思っていたので、前田さんとそういうことになった自分は前田さんと付き合わなければいけない、私は前田さんのことが好きなんだと、前田さんへの好意は恋愛だったのだと自分に言い聞かせました。
そして恋人には、起きたことを言えないまま別れを告げました。

前田さんと性的関係を持ったことで、「前田さんへの好意は恋愛としてだったのだ」とすり替えないとやっていけないほど、あの出来事が虚しく、苦痛でした。
そして、行為があった後に前田さんが何事もなかったかのように振る舞っていること、前田さんとの関係性がおかしくなってしまうことに焦りを感じて、LINEで告白をしました。

「自分は前田さんのことが好きなんだ」ということにして、告白をすれば、ぐちゃぐちゃになった頭の中が少しでもすっきりできるのではないかと思ったのです。
付き合えないと言われ、「そうですよね」と返しました。もう、そうですよね、しかありませんでした。


数週間後に、前田さんの舞台を見に行きました。
もともとWS参加中に他の受講者の人達と一緒に行くことを約束していたのと、私の中であの出来事をなかったことにはできず、やっぱり前田さんが起きたことをどう思っているのかが気になっていたからです。
終演後、前田さんに挨拶をした私は、動揺してしまい顔をあまり見ることができませんでしたが、前田さんは顔色を一切変えることはありませんでした。
その後、前田さんとWS受講生数人で彼の自宅で飲みながら話をしましたが、やはり何事もなかったかのように振る舞っていました。
そのとき私は、その場にいた人たちの前で前田さんに、
「色々経験して、大人って複雑で私の物差しでは測れないこともあるのだと知った」というようなことを言いました。
私の中で唯一言える小さな小さな抵抗、嫌味でした。
本当はもっとシンプルに生きていたいのに、そう思い込もうとしていたんだと思います。

その頃の私は、今振り返ればパニック状態でした。
親しい周囲の人に、前田さんとの間に起きたことを思いっきり振り切って笑い話として話をしたりしていました。
あれは恋愛で、私は恋人を蔑ろにしたやばい人間なのだと自ら言うことで、結局なにもかも自分が悪いのだと思っていました。
自嘲的に話して、それを聞いて笑ってもらえると、大したことじゃないんだ、大人の世界にはそれくらいあるのだと思えて、気分が軽くなりました。

それから前田さんと私に起きたことについて深く考えることをやめました。
そもそも家に上がった時点で私が悪かったのだと思うようになりました。
私が前田さんに対して感じていた尊敬の気持ちをないものにしたくなかったというのもあります。


後に、前田さんのWSを受講したことのある方と話す機会があった際に、
その方が、「前田さんに誘われて2人で食事に行った後、そういう空気になったが、やらせずに帰った」と言ったのを聞いて、ああ、そういう人なんだなと思いました。


気持ちを切り替えようと、 自分から連絡するのをやめました。
前田さんの文章では、コロナ禍に入っても、お互いの身を案じるやりとりがあったと書かれていますが、私から連絡したことはありません。
前田さんから数回連絡が来る度、どんな気持ちで送ってきているのだろうとは思いましたが、無下に扱うこともできず、気遣うような返信をしていました。
しかし、それすら嫌になり、前田さんと縁が切れてもいいと思えるようになって、後に前田さんのLINEをブロックして、消しました。


前田さんの文章に書かれていましたが、前田さんが私には言わずに自分の心の中で、私との将来のことについて真剣に考えていたのが本当だとしても、

「私が抵抗をし続けていたこと」
「避妊具をつけずに及んだこと」
「身体が擦れて痛かったこと」
「身体が傷ついたこと」

これらのことに変わりはありません。

そして前田さんは、
「レイプまがいの行為でないことは、明言します。それを証明するやり取りも残っています。」
とも書いていますが、先述の通り、性的関係を持った後にも、こちらが気遣うようなLINEを送っていたことでそう思われているのかもしれません。

当時の私にはそうすることしかできませんでした。
それが、「レイプまがいの行為ではないと証明するやり取り」として残り、前田さんの中で整合性がついてしまったのだとしたら、とてもやり切れないです。


  • 考えていただきたいこと

明確にしたいのは、前田さんと私に起きたことは、決して恋愛関係にあって起きたことではないということです。

前田さんの文章だけを読むと、
「これは当事者間での問題で、恋愛のもつれなのではないか」
と捉えられるかもしれません。

私も、そう思い込もうとしていました。
私は自分を守るために、前田さんに対する好意を、
「人として」から「恋愛として」の感情にすり替えてしまっていたと思います。

だとしても、私が告白をしたのは、強引に行為をされた後です。
それ以前に前田さんに好意を伝えたことは、一切ありません。
このことは、前田さんの文章を読んでいてもわかると思います。
そして、恋愛関係にあったかなかったかを持ち出すまでもなく、私が前田さんにされたことは、性的同意のとれていない一方的なものでした。

くり返しますが、私と前田さんの間に起きたことは単なる恋愛関係のもつれではありません。
恋愛の範囲内の話だとみなし、違和感を持たないことで、前田さんが自分のしていることの加害性に気づかずにいられたのではないでしょうか。
そして、被害を見えなくさせているのではないでしょうか。

そもそも私は、お金を払ってWSに参加した一俳優でした。
前田さんと私は、講師と受講者という立場でした。
それが、こんなことになってしまいました。
このことを、前田さんに考えていただきたいです。

1番伝えたいことは、私はあなたの欲求を満たすモノでは決してないということです。

どこに真剣さがあったのでしょうか。

思いやりがあったのでしょうか。

「もし、僕とXさんとの関係になにか問題があるのなら、0対100で僕が悪いです。彼女に一切の過失はありません。」
と前田さんはご自身でツイートされていましたが、
私のこの文章を読んだ上で、改めて考えて欲しいと切に願います。
自覚のないままに謝罪はしないでほしいです。


  • 終わりに

私が声をあげようと決めた後、周囲の人たちに言われたことがあります。

「前田さんをどうしたいのか?失脚させたいのか?」
「1人の人生を奪うことになる、それでもいいのか?」

私のためを思って言ってくれたのだと思います。

でも、前田さんがこれからどうなっていくのかは、私が決められることではないと思っています。
失脚するということが具体的にどういうことを意味するのかも分かりません。

過去に加害行為をしていても、活動を続けている人もいますし、
その一方で被害を受けた人たちが静かに去っていく現状があります。
仮に前田さんが失脚したからといって、解決するような問題とはとても思えません。
私は、前田さんが自分のしたことをよく認識し、改めてほしいと思っていますが、前田さんの今後の人生について、私が考るべきことがあるのかどうかは、今は分かりません。


「前田さんのことは少しも好きじゃなかったのか?」

少しでも好きだったら、私は、起きたことを受け入れるべきだったのでしょうか。

当時私が、告白したことを含めて自嘲的に話したこともあり、私に起きたことが性暴力とは思えないが故の発言なのかもしれません。

数年前のことを、どうして今さら言うの?と思われるということも分かります。

今思えば、私はこれまでにもいくつか性被害にあっていました。
初めの頃は真剣に相談もしていましたが、「男ってそういうもんだよ、仕方ない」といったことを言われることで、「こんなことで泣いている私がおかしいのかもしれない」と、そういった出来事の積み重ねで、次第に助けてと声を出すこともできなくなりました。

私は今では、恋人間や夫婦間であっても性暴力は起こり得ることを知っています。

また恋愛感情に限らず、尊敬の気持ちや、さまざまな好意を利用し、立場を利用して、性的行為を強いる人達が世の中にいることも、理解できるようになりました。

でも当時の私は知らなかった。
それでおかしいのは自分なのだと、自らを責めていました。

どうか、同じように苦しんでいる人がいたら、自分を責めないで欲しいです。

そして、周囲の人がもし被害を打ち明けられた際には、ただただ話を聞いてあげてほしいです。


最後に、山中さんがこのことを、当初私の代わりに声を上げてくれたことに感謝しています。
1人では難しかったです。
私のことを自分のことのように思い接してくれ、私の心の部分をよく理解して、たくさん話を聞いて寄り添ってくれた山中さんに心から感謝しています。

声を上げなかったら、私はこのことをずっと1人きりでどうすることもできずに抱え込んでいたと思います。
でも、今私の周りには、他にもそばで支えてくれる人がいます。
支えられながら、前を向こうとしています。

私が今一番恐れていることは、声を上げても、何も変わらないということです。
それが一番辛いです。

どうか弱い立場にいる人たちが、傷つけられず、守られるような業界、社会であって欲しいです。


最後まで読んでいただき、ありがとうございました。


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