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個人向けの航空機リース

【要点】
税に関わる話は鵜呑みにせず、必ず税理士に相談のこと。
・オペレーティングリース。
・航空機は中小型の飛行機やヘリコプター。
・直接所有。機体のオーナーとなる。
・個人の高所得者向け。
・5年超所有により総合課税の長期譲渡になる。
・国税は意図的に損失を作ることにネガティブなので注意されたし。

 最近私が協業させていただいた、個人向けの航空機リースについてお話します。最初に大事なことを申し上げると、税に関する話が出てきますが、個別の税に関することは必ず税理士さんに相談の上対応して下さい。
よろしくお願い致します。

<どんな形式か?>


 リースというとオペレーティングリースとファイナンスリースとがあり…という話は、詳しく知りたい方がいらっしゃれば検索してみてください。
私はリース会計等は専門外ですので、ファイナンスリース=モノを借りて契約期間使い切る。オペレーティングリース=モノを借りて使って途中で買い取ってもらう。程度の理解です。
「それってオペレーティングリースですか?」と聞かれた時に「オペレーティングリースです」と答えられれば問題無いでしょう。

ここでお話する航空機リースとはどんな形式かというと、単純に
投資家で集まって航空機を買う。
⇒運航会社(航空機を実際に飛ばす会社)に航空機を貸す。
⇒賃料をもらう。
⇒一定期間経過後、航空機を買い取ってもらう。
こんな形になります。簡単ですね。
これで航空機の減価償却費を計上し、一定期間キャッシュフローを軽くすることができます。
減価償却費については、こちらで説明していますので、ご覧ください。

 下図は国税庁の資料の抜粋ですが、航空機の耐用年数は5年~10年。
端的に、大きさ(最大離陸重量)によって耐用年数が決まっています。
一応、個人がやることですので、そんな〇十億〇百億とお金を出して大型の航空機を買うことはありません。
上限10億円に満たないくらいのヘリや中小型の飛行機を、それも複数の投資家でお金を出し合って、という話ですから耐用年数は5年~8年で考えます。

そして、この5年~8年は新しい機体の話ですから、中古機を取得した場合はどうでしょうか。中古機の場合は耐用年数=使用可能期間の年数とされていますが、簡便法の使用が認められています。償却方法は定額法とされていますが、定率法の使用も許されています。定率法を選択することにより、最短1年で取得価額の100%の損失を計上可能となります。

 計算方法は国税庁のHP(上リンク)に記載されています。
 例えば、3年経過したヘリコプターならば
耐用年数5年-経過年数3年+(経過年数3年×20%)=2.6年
小数点以下切り捨てなので、耐用年数は2年、ということになります。
ここで下の表の左端「耐用年数」の「2」の行を見てみると、
定額法償却率0.500、定率法償却率1.000となっています。
定額法であれば50%ずつ2年に亘って償却する、定率法であれば最初に100%償却する、こういうことです。

 ちなみに、航空機の運航は精密な整備とセットです。当たり前ですよね。事故=死ですからね。こまめに整備をされているが故に、経済耐用年数は長いといわれています。航空機=経済耐用年数20年とか、ヘリの場合は30~40年なんていう表示も目にするほどです。
なので、中古の取引が成立するんですね。

 航空機の利用については、日本よりも欧米の方が遙かにマーケットが広そうですよね。欧州で使われる機体ならば欧州で仕入れる為ユーロで買い、賃料もユーロで支払われる。米国ならばドルで買って賃料もドルでもらう。日本国内ならば全部円、という感じになります。
何年間かの賃貸借契約が終わると、運航会社等が使っていた機体の購入をし、売却代金がオーナーに支払われて契約終了となります。
売却価格はどうなるのか?というと、見たケースではあらかじめ運航会社が〇年後に購入する価格を定めており、その価格が市場価格よりも下になるように設定している為、運航会社が問題無ければ買う価格であるとのことでした。でなければ、取り纏めしている企業が、時価で買い手を探してくることになろうかと思います。そもそもが航空商社なので買い手を探すことになっても困らない、という企業もあるようですが。

<何の為にやるのか?>


 端的に、所得の高い個人の方が、減価償却費を計上することで一定期間所得税を軽減し、キャッシュフローを改善することが目的になります。
航空機(や船舶)の賃貸料は不動産所得になります。賃貸料自体を目的とするよりは、減価償却費による所得のマイナス効果を期待するものです。
ちょっとシミュレーションをしてみましょうか。
<前提>
・現状課税所得2,000万円の人
・新しい機体を共同購入。1,000万円分。
※消費税10%と合わせて当初1,100万円キャッシュアウト。
・定額法で5年にわたり年200万円減価償却。
・年2%減価していき、6年目にリース終了。売却。
・賃貸料はゼロ。

 ※上図の金額単位は千円ですのでご注意下さい。
単純に1,100万円キャッシュアウトして6年かけて1,164万円戻ってきた話、年間1%くらいの運用と捉えてもいいです。レンタル料が入ってくるはずですから、多少良くなると思いますが。売却価格が定まっていない場合は、そこはリスクになり得ます。
 年間100万円の余剰金によって、特定期間の収支を上げる…という感覚でも良いと思います。ちょっと苦し目ですが。
 
 所得が不安定な人はどうでしょうか?3,000万円稼いだ翌年に収入が1,000万円に落ち込むことが見えてる、とか。

 課税所得3,000万円ということは約1,220万円くらいの所得税住民税の負担になります。これを支払うのが収入の落ち込む翌年になるので、キャッシュフローとしては非常に辛くなります。
現状キャッシュが無かったら、金融機関に借入をしてでも所得の平準化を試みたいところです。
 例えばサラリーマンで年収1,800万円くらい給料もらっていても、予定納税はしていません。予定納税の対象になってしまうと、3月に所得税払って大きくキャッシュアウトした後、7月さらに11月に予定納税で来年分払う所得税を先払いすることになります。これがまあ極めて辛い。
誰もかれもが収入を納税の為に計画的にとっておけるわけでは無いのです。
スポーツ選手などの年俸の浮き沈みがある人は勿論、IFAなど、収入がマーケット次第で変わる人も、所得の平準化の必要性はあるのではないでしょうか。

総合課税の譲渡所得について


鋭い方は、上図の中で、最後売却代金は8,858千円なのに、所得はなんで4,429千円なの?と思われたかもしれませんね。
実は、譲渡所得は総合課税と分離課税と二種類あります。
・分離課税の譲渡所得は不動産(土地建物等)、有価証券(株式等)。
・総合課税の譲渡所得は美術品や金(ゴールド)、航空機や船舶。
総合課税の譲渡は所有期間が5年を超えると(不動産のように1月1日を5回ではない)、長期譲渡所得として所得は1/2、一時所得のようにさらに50万円を引くことができます。
※収入金額-{取得費(簿価)+譲渡費用)-50万円。
(上図では50万円を引いていないので、もう少しメリットが出るんじゃないかと思います)
これは、法人には無い個人特有のものです。この総合課税の長期譲渡のルールにより、個人の航空機直接所有のメリットが出てくるわけです。

 ちなみに。大型の旅客機を匿名組合出資で購入することは、個人は意味が無いので議論の対象になりません。ご参考までに。法人であれば出資金を限度に損金算入可能です。

いかがでしたでしょうか?
航空機リースを組成する企業の中には、例えばヘリコプターのオーナーには特典としてフライトの割引をするなどのサービスを行っているところもあり、各社で特色があります。
儲けようというよりは、減価償却費を上手く使ってキャッシュフローを安定させ、差し迫った状況を作らないことが第一、次に賃貸料をもらって使い減りするよりも良い目を見ようということ。
また、外国のものであれば為替リスク、また売却価格についてどのような縛りがあるのか?運航会社は大丈夫なところか、賃貸料は払われるのか?など様々な注意点があります。
さらに、ドローン節税などが一瞬で規制が入ったように、国税は意図的な損失を作ることに対してネガティブです。本件は伝統的に採用されてきたもので、税の抜け穴的なものでは無い…と言いつつも、今後厳しくなる可能性もあることは指摘しておかなければならないでしょう。
この辺り、リスクをご承知おきいただいた上で、キャッシュフロー計画を立てる上で有用であるとの判断があった場合は、個人所有_航空機リースで検索してみて、税理士さんと相談されると良いと思います。

以上です。
お読みいただき、ありがとうございました。
フィードバックなどいただけましたら、尚のこと有難いです。
よろしくお願い致します。

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