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5分で現実逃避!非日常系エッセイ3選

オーディオブックを聞くようになってから、エッセイやノンフィクションの面白さに気づいたイトウです。

ひとつひとつの項目が短くて、スキマ時間にちょっとずつ聴けるエッセイは、とてもオーディオブック向きだなと思います。

毎日少しずつ寝る前に聴く。
朝出かける前にちょっとだけ聴く。
移動中に気分転換に聴く。

こんな風に、いろいろな場面でちょっとだけ誰かの日常や豆知識的なものを聞いて楽しめるエッセイは、ある意味日常的に使える「現実逃避」の手段でもありますよね。

そして今回は、

思いっきり目の前の現実から離れたい!
しばらく単に「へえーーー」って思うエッセイをダラダラ聴いていたい!

という時におすすめの「非日常系」エッセイを3冊ご紹介します。

前野ウルド浩太郎著『バッタを倒しにアフリカへ』

1冊目は、幼いころの夢をかなえてアフリカに渡り、バッタ研究者となった著者による研究エッセイです。

幼き日に見た科学雑誌で、緑色の服を着ていたせいで植物と勘違いされ、バッタに服を食べられてしまった女性の話を読んだ著者。その時から、自分も緑色の服を着てバッタの群れに飛び込み、「自分もバッタに食べられたい」という夢を持つようになります。

そして、バッタ研究者としてアフリカ・モーリタニアへ渡った著者は、大発生しては農作物などに被害をもたらすバッタの駆除と生態観察に励むのですが、なかなかバッタが大発生してくれない。

そんな中ようやく出会ったバッタの描写がこちら。

歩き回ってみるが、やはりバッタはほとんどいない。しばらく歩いてようやく一匹発見。そのまま捕獲してもいいが、せっかくの快晴なので、記念撮影をすることにした。バッタは臆病ですぐに逃げてしまうので、そっと近づかなくてはならない。ファインダー越しに覗くバッタの勇ましさよ!青空にこんなにも映える生物は、果たしてこの世にほかに存在するのだろうか。青空はバッタのためにあるのではなかろうか。あらためてウットリしてしまう。(p.134)

著者のバッタ愛あふれる一説です。

しかも、著者はこの先の所属が決まっていなかったため、研究しながら就職活動もしなければなりません。面接の日に先輩研究者と鉢合わせした、なんてエピソードも書かれていて、こちらはまた違うスリルがあります。

そして、目の前に起きていることがどんなに重大でも著者の語り口が非常に明るい。痛快という一言がピッタリの一冊でした。

ヤマザキマリ著『国境のない生き方: 私をつくった本と旅』

2冊目は、漫画『テルマエ・ロマエ』で知られるヤマザキマリさんの生き方を綴った一冊です。

14歳でのヨーロッパ一人旅、そしてその時に出会ったイタリア人に招かれて17歳でイタリアに留学。

その後詩人と恋に落ち、シングルマザーとして子供を育てながら、漫画を描いて生活費を稼ぎ、日本に帰国後はテレビやラジオでも活躍。その後結婚してまた海外へ‥‥‥。

そんなヤマザキマリさんが影響を受けたたくさんの本も紹介されています。

安部公房という作家は、決して安住しない。飄々と、もがき続けます。
水木しげるさんにしろ、開高健にしろ、この「飄々と、もがき続ける」という感覚のあるものに、私は惹かれます。
出口はない、もがき続けろ――。安部公房の小説は、今でも、私の人生の入り口に打ち立てられたひとつの道標のように、私の背中を押してくれるのです。(いずれもp.74)

文章が明るく、話のスケールがとにかく大きいので、普段の生活と全然違う刺激を得られる一冊です。自分の枠を広げること、囲いの外に出て、とにかくできることをやって生きていくことなど、力強い生き方を貫いてきたヤマザキさんの言葉に触れると、普段の悩みが小さく思えてくる気がします。

宮嶋茂樹『不肖・宮嶋 死んでもカメラを離しません』

3冊目は、報道カメラマンとして活躍する宮嶋茂樹さんによるエッセイです。

1カットを求めて、戦地から皇室のご成婚パレードまで、あらゆる場所に駆けつける報道カメラマン。

写真の提供先となる雑誌編集部のデスクと駆け引きしつつ、ターゲットと自分を隔てる障壁をどう工夫して乗り越えるか?どうやったら奇跡の一枚が撮れるか?と苦心を続け、ぎりぎりアウトなのではないかと思う方法で被写体に迫る。

そんな日々が綴られているのですが、文体がコミカルでとにかく楽しく聞ける作品です。

うまくいった!という成功譚もあれば、お腹が痛くなるような爆笑の失敗談もそのまま公開されています。面白かったところは、とてもここには書けないので、是非聞いてみてください。

いかがでしたか?お盆休みも終わってまた現実に戻らなくてはならないこの時期、やっぱりまた現実逃避したい!と思ったら、ぜひオーディオブックでエッセイを聞いてみてくださいね。

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