心を閉ざした悲しきスパイ…選ぶのは任務か?絆か?『ラブカは静かに弓を持つ』
皆様こんにちは、audiobook.jp運営のsasakiです。
今回は、本屋大賞2位に輝き、現在audiobook.jpにて聴き放題プランで配信されているスパイ×音楽小説『ラブカは静かに弓を持つ』を重要なネタバレなしで紹介させていただきます。
私はこちらの作品を聴いてドハマりしてしまいましたので、皆様にもぜひとも!!お聴きいただけると嬉しいです✨
「演奏権侵害」の証拠をつかむため、スパイは音楽教室へ
音楽関連の著作権を管理している企業「全日本音楽著作権連盟」に勤める主人公・橘は、幼いころに学んでいたチェロの演奏経験を買われ、音楽教室が著作権法の演奏権を侵害している証拠をつかむべく大手音楽教室「ミカサ音楽教室」チェロクラスへ2年間の潜入調査を命じられます。
証拠をつかみ、「ミカサ音楽教室」との演奏権に関する裁判を有利に進めるために…。
「とある事件」をきっかけに閉ざしていた橘の心に変化が…
橘は調査のため音楽教室に通ううち、快活でチェロの演奏技術が抜群なチェロ講師・浅葉や、温かく気の良い同じクラスの仲間たちと交流を持ちます。
はじめのうちは彼らと一線を引いていた橘ですが、レッスンや音楽教室での発表会、食事会などを重ね、徐々に親睦を深めていきます。
これまで避けていたチェロを弾き、彼らと交流を深めるうち、「とある事件」で凍てついた橘の心は次第に溶けていきます。
しかし、スパイとしての任務はおろそかにできません。裁判の日は刻一刻と近づいてきます…。
調査期間終了が近づく中、浅葉の「目標」を聞いた橘の決意
演奏権侵害の証拠は十分に集まり、調査期間の終了が近づきます。
音楽教室の退会をいつ告げるか迷う橘は、ある日、浅葉に誘われ2人で飲みに行くことに。そこで浅葉から「とある目標」を聞かされた橘は、この任務が浅葉の目標に大きな影を落とすことを知ってしまいます。
会社のために任務を完遂するか、浅葉のために任務を捨てるか…。考えた末、橘はとんでもない行動をとると決意するのです。
物語を深める、オーディオブックならではの音や声の演出
物語自体のすばらしさに加え、オーディオブックならではの「音」や「声」の演出が、物語にさらなる深みと臨場感を与えています。
陰のある美青年である主人公・橘や、快活で気持ちが表に出やすいチェロ講師・浅葉、ミステリアスな美女・三船の柔らかくも謎めいた雰囲気など、どのキャラクターも描写されている雰囲気と声がピッタリで、物語に没入できる朗読です。
また、章のはじめには作中に登場するバッハの「無伴奏チェロ組曲」が流れるなど、オーディオブックならではの物語の彩り方にも注目していただきたいです。
スパイ×音楽という斬新なテーマながら心理描写や風景描写が非常に細やかなので、音楽知識がない方でも抵抗なく物語に没入できる1冊です。
主人公・橘がどうなるのか、ぜひ聴いて確かめてみてください。
最後に、これは本作ファンとしてのおすすめとなりますが、本作を聴き終わりましたら、ぜひ「集英社 文芸ステーション」様に掲載されている本作のショートストーリーもお読みいただきたいです。
本編中では語られない、「浅葉が橘をどのような人物として見ていたか」を垣間見ることができますよ。