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読むたびハッとする“ひらめきの宝庫”。外山滋比古さんの本を振り返る

先日、英文学者でお茶の水女子大名誉教授の外山滋比古さんが96歳で亡くなられました。

「東大・京大で1番読まれた本」というPOPでも知られるロングセラー『思考の整理学』をはじめ、今でも読み継がれている外山滋比古さんの著作。英文学や言語学に関する業績も多い方ですが、今回は多くの著作の中から、audiobook.jpをご利用の皆さまにおすすめの、考え方や読み方に関する作品をいくつかご紹介してみたいと思います。

発売から20年を経てミリオンセラーになった『思考の整理学』

まずは、外山滋比古さんといえばこの作品ですね。
詳しい経歴は知らなくても、この本の著者ということで名前を知っているという方も多いのではないでしょうか。

『思考の整理学』は1983年に刊行され、1986年に文庫化されたあと、20年以上たった2007年、岩手県・盛岡市のさわや書店の「もっと若い時に読んでいれば……」というPOPがきっかけとなって大きな注目を集めます。

そして2008年には東大・京大で最も多く読まれた本となり、あの「東大・京大で1番読まれた本」というPOPが生まれ、240万部を超える大ベストセラーとなりました。

内容は、ものの考え方、自分の思考力の伸ばし方などを紹介した学術エッセイ。学校で先生や教科書に引っ張られて学ぶだけの人間を「グライダー」、自力で好きなことを自由に学んでいく人間を「飛行機」に例えた冒頭の6ページのエッセイ「グライダー」は非常に有名です。

誰かに導かれるままに物事を進めるばかりにならないよう、自分の頭で考えて自ら飛べる力をどうやって身につけるか。常識にとらわれず、のびのびと思考し、自分なりのアイデアを生み出して育てていくにはどうすればいいか。情報が多すぎる社会で、自分の考えを整理し、組み立てていくために何をすべきか。

このような様々な知的生産の工夫が、ご本人の日常の体験も踏まえながら、軽快な文章で形で綴られた作品です。

言葉のリズムがとても良く、難しい言葉も含まれていないのですいすいと読み進められるのですが、読むたびに「これは!」と思う、ハッとさせられる文章に出会う1冊です。

忙しい時には一つの方向からしか物事を考えられなくなっていることも多いはず。そんなとき、頭を柔らかくして、まったく違う視点を与えてくれる本でもあります。学生の方はもちろん、情報を収集し、まとめ、自分の考えを組み立て発信していく必要のある社会人の方にもおすすめです。

本書は、audiobook.jpでもロングセラーとなっている作品。リズムの良い文章を味わいながらじっくり聴くのも良いですが、集中しすぎず、考え事をしながら聴くのもおすすめです。

なお、8月末までオーディオブックは20%OFFで配信中。読んだことがないという方、読み直してみたい方は、ぜひ聴いてみてくださいね。

※この項目は、筑摩書房の『思考の整理学』特設サイトを参考に執筆しております。より詳しい紹介や外山滋比古さんのインタビューはこちらから。

知識が増えるほど考える力は衰える?『思考力』

『思考の整理学』は、考えるということを中心としつつも、広く知的な活動をするためのヒントを与えてくれる作品でした。2013年に書かれた『思考力』は、より「考える」ということに注目した1冊です。

自分の考えを組み立てるためには知識が必要、とひたすらインプットをしようとする人がいます。しかしそれは本書によれば得策ではありません。

知識がいくら増えても思考力は高まらないどころか、むしろ知識を持ちすぎることで、「ものを考える力」は育たなくなってしまいます。自由にのびのびと考え、自分だけのアイデアを生み出す力を身につけたいなら、無知を恥じることなく、とにかく自分の頭で考えることを重視すべきなのです。

本書も音声化されていますので、audiobook.jpでお聴きいただくことができます。こちらは初月無料の聴き放題の対象となっていますので、より気軽にお試しいただけるのではないかと思います。

あわせて読みたい、読み方にまつわる2冊

『思考力』では知識をつけすぎないようにと言われていますが、そうは言っても、未知の分野の基礎知識などは、やはり新たに学ぶ必要があります。そして、そのためには読書が欠かせません。

ということで、音声化されてはいませんが、さらなる学びのために手軽に読める文庫を2冊ご紹介しましょう。

1冊目は、『「読み」の整理学』
1981年に出された『読書の方法』という作品をもとにしており、『思考の整理学』よりも前に書かれた読書についてのエッセイです。

こちらも『思考の整理学』と同じように読みやすく、ご本人の様々な体験をもとに書かれています。

本書の主なテーマは、二通りの読み方の違いを知り、実践すること。一つは、内容がわかっている文章、読んだら意味がすんなりと理解できる文章の読み方。そしてもう1つは、未知の分野など、書かれている内容が良くわからない文章の読み方。

自分の知っている分野の読書はできても、未知の分野の、知らない言葉だらけの読書はなかなか気が進まない。読み進められない。そんなとき、未知の分野を読み解いていくための読書への橋渡しを試みる本書が、お役に立つのではないかと思います。

そしてもう1冊は『乱読のセレンディピティ』。『思考の整理学』の読書版とも言われている本書は、2014年刊行の作品です。

本書ではタイトルの通り、ジャンルも著者も縦横無尽に乱読することによって、「セレンディピティ」つまり本来探していたものとは違う、思いがけない発見をすることができる、という自由な読み方を提案しています。

「妙に力を入れるのではなく、風のように読む」ことで、視野を広げ、探そうとしていては見つからなかった思いがけない宝物を見つけることができるかもしれない。他のことに気をとられること、途中でほかの本を読み始めることは、決して悪いことじゃない。

そんなわくわくする読書論が展開されている、普段から本を読んでいる方にはぜひ一度読んでみていただきたい1冊です。

数多くの著作を遺された外山滋比古さん。文学や言語の専門知識を背景に、わかりやすく軽快な文章で多くの人に親しまれた著作の数々に、本やオーディオブックで改めて触れてみてはいかがでしょうか。

※『思考の整理学』のオーディオブック版は8月31日まで20%OFFで配信中です。ぜひお試しください。


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