マックでもモスでもなく。

ロッテリアが売却されるというニュースをこの頃チラホラ見掛ける。
子供の頃、地元のド田舎にロッテリアが出来た。「ファーストフード」なんて単語など無かった時代だ。クラスの子達が口々に「ロッテリアに行って来た」という話を自慢気にしていて羨ましかった。
父が道楽者で働かない代わりに病弱の母が働いていて貧乏だった我が家では普段我儘を言わない私が珍しく「ロッテリアに行きたい・・」と何度か口にした。
ある日母親が「兄ちゃんには内緒だよ?」と言って僕だけをロッテリアに連れて行ってくれた。
初めて見る、今で言う「ファーストフード」なるメニューがキラキラと見えて、エビバーガーとロッテシェーキを頼んだ。
席に運んでふと見ると僕だけの分しか頼んでいない。「お母さんのは?」と聞くと、母はニコッと微笑んで「お母さんはお腹いっぱいだからいいの。」と言った。
初めて経験するお洒落な味を頬張る僕を、母は嬉しそうに見つめていた。
だからロッテリアは僕にとって思い出の味なのだ。僕にとっては今でも「ファーストフード」と言えばマックでもモスでも無く、ロッテリアなのだ。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?