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『碁盤斬り』の感想

新しい地図の草薙剛氏主演の『碁盤斬り』を劇場で視聴してきました。

江戸時代の彦根藩に仕えていたお侍さんである柳田格之進は、文部両道、清廉潔白であり、間違った事を許さない性格だった。そんな実直なお侍さんである柳田は、殿様の気にいっていた反物を盗んだ疑義に問われ、藩を追い出される事となった。

そして、浅草阿倍川町の裏長屋に美しい1人娘と慎ましく生活していた。

柳田格之進は、元藩士だけあって剣術の腕前と囲碁の腕前が非常に優れた男だった。藩を追われる際に武士の魂である刀は没収され脇差しだけを身に着けている。映画の描写では、柳田が藩士だった頃には長い日本刀と脇差し2本を抱えており、浅草阿倍川町で生活しているときには脇差しだけだった。

浅草阿倍川町の裏長屋に移住した柳田格之進は、仕事が木彫りの職人に落ちて家賃さえ払えない程貧乏をしていても武士としての生き様を貫いていた。

そして、貧しい生活の中でも囲碁を嗜む事や囲碁を町人に指導することを喜びとしていた。

そんな柳田格之進が、仕事の納品帰りに下町の碁会所へ立ち寄ると、萬屋源兵衛が賭け碁で周囲の町人達を鴨にしていた。碁会所の席亭が困った顔をして、柳田格之進に源兵衛を囲碁で倒して欲しいとお願いする。

柳田格之進と源兵衛の賭け碁が始まり、柳田の勝利だった碁を柳田が投了した。囲碁の強かった源兵衛は、柳田が勝利していたのにも関わず投了した意図に気がついた。

文部両道、清廉潔白の武士の生き方は、自分より弱い相手に色んな手段を使って賭け碁に勝つことではいけない。勝敗より大切な何かが其処にはある。

後日、源兵衛の萬屋において高級な陶器を破損したという言いがかりを侍にいわれた。500両という今でいう5000万円相当の金額を要求されてしまった。源兵衛がそのような金額は払われないと断ると、侍は刀を抜きだした。
刀を抜いたところに、近くに立ち寄った柳田が登場する。
陶器の説明をした上で価値の無い陶器の損失を申し出る者は武人として恥であるという事を説いた。

恩義を感じた源兵衛が、柳田の家にお礼の10両を届けにいったのだが、柳田は武士として当然の振る舞いをしただけでお礼など要らないと頑固として受け取らなかった。

源兵衛は、部屋にある碁盤に気が付き、柳田に1局お願いする。
源兵衛は、武士たる生き様と囲碁でも武士の生き様をみせる柳田に惚れ込んだ。

源兵衛と柳田の生活と囲碁を共に精進する楽しい時間が過ぎていた。

・・・・

ここまでが映画の導入部分である静のフェーズですね。
武士とはどのような生き様をするのか。そして藩を追い出されても武士の魂を実直に貧しい生活の中で貫き通していた柳田の生き様。

そして、ここから柳田を現在の地位に貶めた犯人の情報が入り、同時にまた同じ様な疑義を掛けられてしまう。その結果、美人の1人娘が冤罪を晴らし賠償金のために吉原に堕ちる事を決意する。

大事な1人娘が堕ち、清廉潔白を貫き通してきた柳田が人生2度目の疑義を掛けられどのような決断と行動をしたのかは是非映画館で確認して下さい。


囲碁を知らない方でも全然楽しめます。

武士の生き様や、貧しい立場になっても高き清らかな精神を維持する尊さが非常に伝わってきます。

そして、囲碁の情緒ある情景も何とも言えない味を醸し出しています。

ラスト直前には、草薙剛さんと斎藤工との殺陣も非常に面白く、日本刀の切れ味と捌きに魅力を感じました。

私は日本囲碁界とのお付き合いは40年近いベテランですが、不覚にも5名の棋士を探し切れませんでした。映画では、以下の棋士が出演されています。

1.井山裕太王座

2.藤沢里菜女流本因坊

3.関山利通九段
4.大森らん二段
5.本田真理子初段

曲がりなりにも、アマチュア日本囲碁界に40年付き添ってきた私、そして井山裕太棋士には2度もリアルでお会いし、10年以上推しをしてきた私ならば、井山裕太先生と藤沢里菜先生2名の棋士ならば直ぐに気が付くだろうと思いましたが。

・・・・見つけれませんでした()

恐らく、柳田と源兵衛が仲良くなってから、碁会所と対局したシーンで手前に柳田(草薙剛)がアップされた奥でサウスポーの方が井山先生??かも知れません。(上映後30分前後辺り)

男性は、丁髷を全員しており女性も髪を結っていたので、5人の棋士全員を認識することができませんでした


草薙剛さんファンは必見です。切腹をしようとするシーンで鍛えられた美しい上半身がアップで視られます。

日本人の方必見です。棋士道は、武士道の魂を受け継がれており、その世界感を感じることができます。今の棋士は日本刀は持ちませんが、精神的な高みはこの映画で描かれた柳田のようです。

全ての俳優さんの持ち味が出ていて非常に良かったです。


土日祝を避けて、ガラガラの映画館でのんびり楽しもうとしたのですが、隣の人と横並びに並ばなけれならない程、人が入っていました。更に、映画が上映されてから数多くのお客様がいるにも関わらず、誰1人大きな音を立てずに映像に釘付けになっており、劇場の視聴者全員が映画の中の町人になったような感じでした。

この映画は、考えるな感じろです。

5名の棋士が全員コンプリートできたという猛者の方がいれば、こそっり教えて下さい。

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