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炭と靴下のお話し①(連載)

前置き

私は、ジーンズメーカーの営業マンから国産トップスメーカーの営業マンを経て営業人生が15年以上になります。

現在は主に綿花を炭素化して糸で編んだ衣料品に適合する「植物性炭素繊維」製品の卸販売に従事しています。

綿の炭?なにそれ?興味なし。

この事業の黎明期に現代表が携わっているのを傍で見ていて、はっきり言って「なんかよくわからないけど炭の糸で編んだ靴下や生地を販売するのか」程度でしか認識も興味も有りませんでした。

代表が綿花を炭素化したいわゆる「木炭」の様な、炭の破片の様な塊に、おもむろに百円ライターで火をつけだして、「どうやすごいやろ。燃えないと言うことは炭になってるんや」と言われても「あぁすごいですねぇ」ぐらいの感情しかありませんでした。

そして今度は先程とは別の形状の綿花を炭にした「ふわふわの綿」を取り出して、ペッドボトルから水をその綿にかけて、少しだけ絞り、2、3回握りしめて振った後に手のひらのその綿を見せて「どうやすぐ乾くんやで」と、ドヤ顔で言ってきました。

もちろん私は「あぁほんとすごいですねぇ」と返しました。

その時点ではまだ1ミリもそのすごさに共鳴出来なかったのは、世の中に炭を使用した製品を含めて、既に機能性を謳う素材なんで溢れるほどに有るからです

機能性商品のトラウマ

実際に以前、百貨店を担当していた時にカニの甲羅から使った当時のニチメンさん(現 双日)の「キトサン」加工が施されている生地でカットソーを作りましたが殆ど売れませんでした。

赤ちゃんの肌やアトピー肌にも優しい素材ですとの謳い文句に惹かれたのです。

当時の他の営業全員に販売を共有し、小売店にも卸販売をかけてもいました。

上司が自分の取引先からの意見として、店舗スタッフの方から「うちのお客さんはおおよそが健常者と言われる方々なので、そう言う商品はただ棚に並べただけでは売れない」と言われたと伝えてきたのを今でも覚えています。

確かにお店の方々は「健康のアドバイザー」ではないので、余程の事がない限り能動的にこの商品をお勧め頂く事はなかったのです。

しかし自分の取引先の中で「肌が弱い赤ちゃんを抱く時に自分の服に困るお母さんもいる」という主婦のスタッフの方のお話を聞いて「なるほど、必ずしも自身の着用だけが機能性素材の利点ではない」と気付かされたのも覚えています。

つづく



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