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村上春樹のアンダーグラウンドについて。

去年、フランスの監督が村上春樹の作品に関するドキュメンタリーのインタビューをと依頼があったのでオンラインで話してみたら私についての事前リサーチを全くしていなかったのでちゃんと準備して出直して来た方が良いと促した。私は根掘り葉掘り聞かれることに答えるのはPTSDがありしんどいし、そういう経験は他人の作品ではなく自分の作品だけにしたいと思うからだ。その監督にはスクリーナーを送ったがフランスに戻りしっかりと見てくれたようだった。その上で私に連絡をして来ないならそれで良い。私は村上春樹の小説はほとんど読まないが「アンダーグラウンド」は1966年にニュージャージーのヤオハンで手に入れて読んだ。その時から私の意見は変わっていないが、世界の村上春樹ファンは「アンダーグラウンド」の序文のこのことを知らないのだと気づいた。

引用の後、私の感想を記しておく。

引用1)「インタビュイーの何人かは、それまでに別のメディアの取材を経験していたが、一様に「ほんとうに自分が言いたかったことは、結局削られてしまい、発言は短く中途半端なものにされた」という不満を持っていた。つまり「メディアにとって話の作りやすい部分だけが適当に切り取られて使われてしまった」ということだ。人々のフラストレーションはかなり強いもので、我々の今回の取材はそれとはまったく正反対の趣旨と方法でおこなわれているのだということを理解していただくまでに、場合によってはかなり時間がかかった。残念ながら最後まで理解していただけなかったこともあった」

村上春樹 (2106-02-07T15:28:15.000). アンダーグラウンド (Japanese Edition) (Kindle の位置No.245-250). Kindle 版.

引用2)「自分から進んで語りたい」という人が現れるのはもちろん有り難いのだが、そのような積極的インタビュイーのパーセンテージが増えることで、本ぜんたいの印象が少し変わってくるかもしれない。それよりは、筆者(村上)としては無作為抽出的なバランスを重視したかった。

村上春樹 (2106-02-07T15:28:15.000). アンダーグラウンド (Japanese Edition) (Kindle の位置No.156-158). Kindle 版.

村上春樹の「アンダーグラウンド」はよく書かれた本だとは思うが、被害者に対して僭越であると思う。もう少し配慮があって良いと思う。

引用1)でマスメディアの問題を指摘しながら本質的には同じことをしている。

引用2)を読んで私は立ちあがろうとする度に躊躇した。映画を作り、被害者団体を作る私がそうなのだから、他の被害者にどれほどの影響を与えたのか計り知れない。

村上春樹を称賛する海外の人はこの矛盾に満ちた序文を知らない。英語版は「アンダーグラウンド2」と合本されて「アンダーグラウンド」の序文は英語版から削除されているからだ。

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