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『天使の翼』第10章~吟遊詩人デイテの冒険~

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繋ぎ屋、オーバーオーラーの紹介で、熱帯の惑星ラプラスの植民第一世代からの家系を誇る富農に紹介されたデイテとシャルル。富農を介してこの星のトップ官僚、植民惑星省ラプラス星庁長官フレ…
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2023年4月の記事一覧

『天使の翼』第10章(40)~吟遊詩人デイテのネバーエンディング・アドベンチャー~

 湖は、火山性のそれを思わせて、想像以上に深く、深海のような広がりを持っていた。それが、…

武田敦
1年前

『天使の翼』第10章(39)~吟遊詩人デイテのネバーエンディング・アドベンチャー~

 「……どうだね、たいした発明だろう?」  「まったくです。驚きました」  ――これは、わ…

武田敦
1年前

『天使の翼』第10章(38)~吟遊詩人デイテのネバーエンディング・アドベンチャー~

 「――この星は、水の惑星なのだよ!」  長官が、どうやら何度となく使ってきたらしいキャ…

武田敦
1年前
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『天使の翼』第10章(37)~吟遊詩人デイテのネバーエンディング・アドベンチャー~

 そのくだりで胸を張った長官の巨体が、一瞬わたしの目には、人面のウォーター・ホースと見え…

武田敦
1年前

『天使の翼』第10章(36)~吟遊詩人デイテのネバーエンディング・アドベンチャー~

 シャルルは、そのぬめりを帯びた生き物よりも、余程わたしの発作的行動の方に驚いたに違いな…

武田敦
1年前
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『天使の翼』第10章(35)~吟遊詩人デイテのネバーエンディング・アドベンチャー~

 ちなみに、わたしなどは、厭な事、心にかかることがある時は、とことんその事を考え、分析・…

武田敦
1年前
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『天使の翼』第10章(34)~吟遊詩人デイテのネバーエンディング・アドベンチャー~

 軍装を解いた長官とわたし達は、副官の操縦するエアカーで郊外にある湖の桟橋へと向かった。対岸に町の灯り、人家の灯りらしきものはなく、今はすっかり上がった雨の後の清澄な月明かりの下で、かろうじて向こう岸らしきラインが見て取れる。とても大きな湖。名ばかりの湖とは違う本物の湖。  長官は、どこかの探検家か何かのような出で立ちで、垢抜けている、とは言えなかったが、なるほど先刻までの軍服が野暮ったく見えるほどには個性的で、まるで性格まで変ってしまったようだ。中将の位階で飾り立てた軍服を

『天使の翼』第10章(33)~吟遊詩人デイテのネバーエンディング・アドベンチャー~

 「シャルルとデイテとやら、待たれよ。前々から今宵は、我が別荘に心安き者らを呼び集めて、…

武田敦
1年前

『天使の翼』第10章(32)~吟遊詩人デイテのネバーエンディング・アドベンチャー~

 逃避するものの多い事自体が、長官の心の健全なこと――ごく普通に人間的であること――を物…

武田敦
1年前
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『天使の翼』第10章(31)~吟遊詩人デイテのネバーエンディング・アドベンチャー~

 わたしは、内心絶句しつつも、シャルルが――まさかこのことあるを予感してか――いち早く機…

武田敦
1年前
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『天使の翼』第10章(30)~吟遊詩人デイテのネバーエンディング・アドベンチャー~

 しばしの沈黙を破ったのは、シャルルである。  「閣下」  「うむ」  「実は、今回偶然に…

武田敦
1年前
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『天使の翼』第10章(29)~吟遊詩人デイテのネバーエンディング・アドベンチャー~

 長官は、大変に肥満した、表情こそにこやかだが性格のつかみ難い人物、と見受けられた。軍服…

武田敦
1年前

『天使の翼』第10章(28)~吟遊詩人デイテのネバーエンディング・アドベンチャー~

 マリア=アンナは、大きな観音開きの扉の前で立ち止まり、力強くノックした。  「入られよ…

武田敦
1年前
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『天使の翼』第10章(27)~吟遊詩人デイテのネバーエンディング・アドベンチャー~

 「行きましょう」  マリア=アンナの呼びかけに、わたしは、我に返った。結局、この場で一番冷静だったのは、彼女のようだ。わたしは、幾分ボーっとした感じのシャルルの腕を、自分でも驚いた位きつくつねった。  はっとしてわたしの顔を見たシャルルが、自分は何もしてないよ、とばかりに腕を広げて見せる。  わたしとシャルルは、スタスタと――腰を振って――官邸の玄関へと向かうマリア=アンナを追った。  官邸の守衛は、マリア=アンナとは旧知の間柄らしく、なにやらサンス方言で冗談を言い合いなが