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枯れ葉

 フィンランドの首都・ヘルシンキを舞台にしたラブ・ストーリーである。
 スーパーマーケットでゼロ時間契約で働くアンサ(アルマ・ポウスティ)は、廃棄食品の持ち帰りを咎められ、スーパーをクビになる。職業安定所の紹介でパブで皿洗いの職に就くが、オーナーが麻薬の密売で逮捕され、再び職を失ってしまう。
 金属工場で働くホラッパ(ユッシ・ヴァタネン)は酒好きで仕事中にも酒を飲むようになり、職を追われてしまう。
 そんな中、カラオケバーで知り合ったふたり。ぎこちなく、近づくようで離れ、くっつくようで遠ざかる。
 その後、ホラッパはアンサのために酒をやめる。アンサの家へ行くべく、ホステルを出た彼はトラムにはねられてしまう。
 ヘルシンキの底辺に生きる人々をアキ・カウリスマキ監督が叙情的に描く。
 帰宅したアンサがラジオをつけるとウクライナの戦況をアナウンサーが報じている。耳を覆うばかりの惨状にダイヤルを回すと、流れてきた音楽は『竹田の子守唄』。赤い鳥が歌ったものが有名。奉公に出された少女が赤子を背負いながら労働する哀しみを歌った曲。ある理由から放送禁止歌となった。 アキ・カウリスマキ監督はなぜこの曲をウクライナのニュースの後に流したのだろうか?
 カフェでのアンサとリーサ(ヌップ・コイヴ)の会話が辛辣だ。
 
リーサ「男なんて、みんなブタよ」
アンサ「いいえ、ブタは可愛くて賢いわ」

 ラスト。アンサとホラッパと飼い犬が落ち葉を踏みしめて、彼方へと去ってゆく。BGMの『枯葉』が、しみる。濃厚なラブシーンはないが、恋人達の愛に満ちた、飾らない小品。
 

 

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