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1月19日(木)連律@神田連雀亭

 この会では、お客様のお出迎えや木戸銭の受渡しを律歌師本人が行う。彼女の後援会の件で問い合わせたのだが、とても親切にお答えくださった。やけに気さくな師匠なのである。
遊かり·律歌「トーク」
 オープニングは、おなじみゲストとのおしゃべりである。三遊亭遊かりさんは落語芸術協会に所属する二ツ目で女性である。師匠は三遊亭遊雀師。
 2011年、友達に新宿·末廣亭に連れて行ってもらい、落語の面白さに目覚め、落語家を志した。東京には落語家の団体が四派ある。落語協会·落語芸術協会·五代目圓楽一門会·落語立川流。遊かりさんは寄席に出たかったので、圓楽一門と立川流は除外される。また、落協の入門できる上限は30歳。芸協は35歳。当時遊かりさんは30歳を超えていたので、必然的に芸協一択となる。芸協の殆どの落語家の噺を聴き3人に絞る。
三遊亭小遊三
瀧川鯉昇
三遊亭遊雀
 間に入ってくれる人があり、遊雀師に会うことになった。ところは国立演芸場食堂。志願理由を理路整然と述べたところ、遊雀師、
「あなたみたいに志願理由を理路整然と喋る人は落語家には向かない」
 もっと興奮してシドロモドロになったほうが可愛げがあるというわけだ。それでも「よく考えなさい」ということになり、連絡先を交換した。
 後日、電話してみると、
「あなたの歳で入門すると、もう赤ちゃんは産めないかもしれないよ。それでもいいのかい?」
と聞かれる。遊かりさんには兄が一人おり、中国人と結婚している。だが彼らは子供をもうけない方針であった。という事は遊かりさんが産まなければ一族の血は絶えてしまう。
 母に相談した。
「跡取りは産めません」
 母は答えた。
「もう、しょうがないわね」
 後日、改めて入門を請いに遊雀師のもとを訪れ、この事を告げたところ、絶句しつつも入門を許した。
 何かを得ようとしたら、何かを失わなければならないという事か。
律歌「紀州」
※一席目は軽い話で場をあたためる。
 「御三家とは橋幸夫・舟木一夫・西郷輝彦」などふんだんにくすぐりを入れ、笑いでいっぱいの一席に仕立てた。彼女のチャームポイントである大きな瞳と大げさな表情がコミカルで可愛らしい。
遊かり「紙入れ」
※ある女性から「女性落語家が高座で裾を乱すのはいかがなものか」とメールが来た。よく考えてみると、師匠の遊雀師もよく裾を乱していた。ある人から言われた。師匠の元の師匠もよく裾を乱し…おっとこれは言っちゃいけなかった。
「紙入れ」を女性落語家が演るのを初めて聴くかもしれない。ちょっとなまめかし過ぎて笑えないのでは…と不安だったが、それは杞憂だった。師匠譲りのイタズラっぽい瞳とオーバーアクションで色っぽくもおかしい一席となった。
「何をするんだい。くすぐったいじゃないか。時間はいくらでもあるんだから、あわてちゃだめ」
というおかみさんの一言に今夜は眠れない。
 翌朝、おかみさんは新吉にこう言い放つ。
「アラ、新さん、おはよ☀️」
 この一言に女の怖さが凝縮されている。
ー仲入りー
律歌「厩火事」
※ネタ下し。
 旦那さんの名前は期せずして、先程の「紙入れ」とおなじ「新吉」
 新さんと別れたいと仲人のところへ泣きついたお崎さん。仲人「じゃ別れな」と言われると、逆に旦那への愛着を語り、逆に仲人を叱りつける。旦那より6歳年上の姉さん女房の愛と嫉妬と執着心などまぜこぜになった感情を律歌師匠が情感豊かに演じてみせた。
 途中で「新吉」を「新雀」と言ってしまう。遊かりさんの師である遊雀師匠の事が頭にチラついたか。オデコを叩き、ペロリと舌を出す姿にキュン💘
 こんなに可愛いなら、これからもちょくちょく名前を間違えてほしい…って、冗談言っちゃいけねえ。
 
 
 

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