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2月23日(金)古典芸能鑑賞会 いるま二八落語会「柳家さん喬・五街道雲助二人会」(入間市産業文化センター)

小きち  弥次郎
 佐藤栄作元首相にそっくりな小きちクン。間もテンポも良くなってきた。

弥次郎「あっしゃあ生まれてこの方嘘をついた事がないんで」
ご隠居「その言葉が嘘じゃないか」


この嘘についての会話が、トリのさん喬師の科白をクローズアップさせる。

雲助  抜け雀
 
マクラにバレ噺『甚五郎作』を披露する。引き気味の笑いが起きる。意味が分かっていないお客様も多かったのではないか。この反応は人間国宝にとって、想定内なのか? 老若男女が訪れる祝日昼の落語会ではふさわしくないような気もする。
 『抜け雀』は独演会や落語会でかけられがちなネタである。先日落語協会2階で同じ一門の金原亭杏寿さんが披露していた。
「そのマミエの下に光るものは何だ」や「どうやら鼻だけは人間並みだな」などのおなじみのフレーズを使いながらも、雲助師ならではの柔軟な芸風で、おかしくも軽さのある一席となった。
 職人ならではの頑固さの中にある種の滑稽さを併せ持つ絵師と強い者につい従ってしまう弱気な主人とその主人に呆れ文句を言いつつも彼をしっかり操縦している女房。三者三様の物語を絹織物のように美しく仕立てた。この旅先における喜劇を構築した五街道雲助は正真正銘の名人である。 

 
ー仲入りー

雪之介  太神楽
 皿廻しを中心に、最後は傘の曲芸も。

さん喬  幾代餅


 大向うから、待ってました! なんて声をかけて頂きますと、心の底から、ホントかよ? と思います。


 さん喬師お得意の人情噺。
 清蔵の病が「恋煩い」と知り、「ちょっとだけ笑わせておくれ」といって笑うのが可愛らしい。この事を内緒にして欲しかった清蔵を裏切り、旦那にあっさり喋ってしまう女房。清蔵に「おい清蔵、コイワズレーだってなあ」と無神経に言い放つ旦那。割れ鍋に綴じ蓋。お似合いのいい夫婦である。
 藪井竹庵に連れられて行った吉原で、清蔵は幾代太夫と夢のような一夜を過ごす。翌朝、清蔵は「野田の醤油問屋の若旦那」と偽った事を幾代に詫びる。

 わっちは今まで嘘というものをついた事がござんせんが、今日はじめて嘘を付きやした。

 前座の小きちさんの『弥次郎』の会話を思い出してもらいたい。真逆のようなことを言っている。だが、どちらも真実なのだろう。赤ん坊などを除いて嘘をついたことない人間はいない。自分の誠の心を見せるために清蔵は(藪井竹庵の提案ながらも)嘘をついたのだ。その清蔵の嘘の奥に幾代は誠を見たのだ。
 「ありんす」や「メリンス」(笑)、「くんなます」などの廓言葉を美しく艶っぽく話すさん喬師は花魁の立ち居振る舞いも美しく演じて魅せる。日本舞踊をなさっているのがその所作に表れている。
 いわゆる「推し」と結ばれた職人の逆シンデレラストーリーをさん教師が見事に綴った。柳家さん喬もまた名人である。

 今日は両師とも、どちらがトリでもおかしくないネタであった。共通項は「職人」と「夫婦」。名人同士の競演に心躍る雪の日の午後、あたたかい気持ちで家路についた。

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