1月6日(土)林家つる子ひとり会(なかの芸能小劇場)
つる子 妾馬〜お鶴〜
元日に起こった地震などについて、「胸の痛む事が続いておりますが、私にできることはお客様に日常を忘れて、非日常を体験して頂く事だけでございます」と厳かに。その後、師匠の正蔵宅で起こった落語『荒茶』のような出来事をマクラにして笑わせる。
八五郎とお鶴の母親のもとへ大家がやってきて、お殿様・赤井御門守がお鶴を見初め、側室にするという。早速祝いの宴が開かれ、八五郎達は大喜びの浮かれ騒ぎ。そんな中、お鶴ひとりが浮かぬ顔だ。聞けば大工の熊五郎に惚れていて、お殿様のもとには行きたくない様子。そんな彼女に八五郎は熊五郎が三年前にお徳という女と婚礼したという。告白するまでもなく失恋して打ちひしがれたお鶴に母親は側室になるよう説得する。彼女はそれを受け入れ、大奥での日々が始まる。
それは窮屈な日々であった。お付きの者からはあくびをする事すら許されず、馬鹿にされる有様。そんな中、お鶴は吉原の花魁出身の朝霧と出逢う。彼女の想い人は上様ではなく、野田の醤油問屋の若旦那であった。二人を添わせる為、お鶴は一計を案ずる。
10月の日本橋社会教育会館でもこの噺が掛けられたが、大幅に設定が変わっている。だが、1時間に及ぶ長い噺なので、3月の真打昇進披露興行で掛けられるかは微妙なところだろう。
つる子さんの得意ネタ『子別れ』『紺屋高尾』『反対俥』のエピソードや登場人物もぶっ込んで、楽しくも感動的な一席。
赤井御門守がなぜお鶴を見初めたか告白するくだりから二人が親密となり、やがて時満ちてオヨトリノナンシご出生となるまでの流れは極めて自然であった。
つる子さんの想像力・創造力の賜物である『妾馬〜お鶴〜』は仲入り後は主人公がお鶴から兄・八五郎に替って、再び語られる事になる。
ー仲入りー
つる子 妾馬〜八五郎〜
ここからは通常の『妾馬』となる。つる子さんの八五郎は、底抜けに明るく裏表のない江戸っ子で、そして、少しばか。そんな八五郎が泣きながら、母親に赤ん坊を抱かせるよう頼む場面は泣かされた。上様の粋な計らいで、それは実現の運びとなり、まず八五郎が赤ん坊を抱く。
酒が入り、歯止めがかからなくなった八五郎は殿様相手に都々逸を披露する。
〽明けの鐘ゴンと鳴る頃 三日月型の櫛が落ちてる四畳半
小唄『並木駒形』も披露する。
〽並木駒形花川戸 山谷堀からチョイト上がり
実に芸達者な八五郎であり、つる子さんなのである。
お鶴の進言により、八五郎は士分に取り立てられるという、「鶴の一声」でサゲとなる。
『妾馬』〜お鶴〜、〜八五郎〜を仲入りをはさんで続けて演じる事によって、林家つる子はこの噺に深みと奥行きを与えた。真打を間近にして、いよいよ鶴は舞い上がる。
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