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初めて災害ボランティアに参加しようとしている人たちへ

2019年10月12日から13日にかけて、台風19号が関東から東北にかけた広範囲を直撃し、ほとんどの地域でこれまで経験した事のない暴風雨により甚大な被害を受けました。被災された方々には心よりお見舞い申し上げます。

僕はこれまで、2011年の東日本大震災(南相馬・南三陸など)、2014年の平成26年豪雪(秩父・小鹿野)、2015年の平成27年9月関東・東北豪雨(日光・鹿沼)、2016年の熊本地震(熊本市・益城町)にて10地域以上の災害ボランティアに参加してきました。
そこそこ場数をこなし、活動後半はグループリーダーを務めるまでになっていて、その経験をもとに、初めて災害ボランティアに参加したい!という思いが芽生えた人たちのために、少しでも役立つ情報を残しておこうとnoteに書き記す事にしました。

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TVやSNSでは、被災地域の信じられない光景が湯水のように流れてきますが、その光景に心を痛めて自分も助けになりたい!何かしたい!と思う人は多いと思います。
アクションは募金だったり支援物資を送ったり色々ありますが、ここでは、実際に現地に行って人々の助けになりたいと思い行動する人に向けた情報を提供します。無理にでもボランティアに行け!と促す内容ではありません。

まず、災害ボランティアに向けた行動を始めようとするその意思は大変素晴らしいです。そう思って実際に行動に移せる人は1万人に数人いる程度でしょうか。
しかし、その素晴らしい行動も場合によっては現地で空回りしてしまうケースが少なくありません。まずは行動に移す前にしっかりと知識を身につけ、復旧の邪魔にならないか?本当に現地の被災者の役に立てるか?を把握して行動しましょう。

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1.災害復旧の順序とボランティアの役割

被災地の映像をTVやSNSで見て、すぐにでも現地に駆け付けたい気持ちは分かりますが、災害復旧には順序がある事をしっかり把握しておいてください。

1.人命救助→2.避難者の安全確保→3.ライフライン復旧→4.被災者の生活基盤の復旧→5.日常生活再開に向けた復興

大雑把ですが、このような順番になっています。ここで大事なのは、災害ボランティアの出番はどこになるか?です。

その答えは4番目の”被災者の生活基盤の復旧”からになります。

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3番目までは、地元の警察、消防、地方自治体職員、医療関係者、自衛隊がメインの活動です。それが完了するまで被災地から要請を受けた医療従事者や土木関係者以外は現地に行っても足手まといどころか、二次災害に逢ったり、行動不能になって逆に復旧活動の妨げになってしまうケースもあります。

悲しいことに、この一部の事実の断面だけを切り取って、災害ボランティアなんて行っても邪魔するだけだ!災害ボランティアは自己満足で現地の役に立ってない!とか心ない事を言う人たちがいます。

そういう事を言う人は、災害復旧の流れを把握していないのです。そして、自分が被災者になって初めて分かると思いますが、自衛隊や消防の活動は、基本的に上記順位の3番目までであり、よほどの事が無い限り個人の要請を直接は受け付けてくれません。

では、被災者の生活基盤を復旧させ日常生活に戻すまでの役割を誰が担うか?ずばりそこをやるのが災害ボランティアです。
もしあなたが被災した時に、家の床下の泥出しとか、流れてきたゴミの撤去、屋根のブルーシート張り等々の自分では手に負えない作業は、間違いなく災害ボランティアのお世話になる事でしょう。正確に言うと、社会福祉協議会が立ち上げたボランティアセンターに被災者が支援を要請し、そこから派遣されてくる一般市民を中心とした人達が、いわゆる”災害ボランティア”に参加する人たちなのです。

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2.災害ボランティア活動が始まるタイミング

上記で説明したとおり、災害ボランティアの出番は災害復旧の工程の後半になります。そこまでは、行きたい気持ちを抑えて情報収集や準備をしっかりしましょう。無理に現地へ向かうことは避けてください。

ではいつ向かえば良いか?と言う判断は簡単で、被災地周辺の社会福祉協議会がボランティアセンター(以下VC)を立ち上げたタイミングです。VCが立ち上がったかどうかは、被災地エリアを管轄する社会福祉協議会から情報が発信されますので、気になる地域の社会福祉協議会のホームページをチェックしてみてください。

イレギュラーなケースを除き、被災者の協力要請はVCが受けて、現場を確認し、必要な作業内容や必要な道具を整理し、要求に応じたスキルや派遣人数を決定します。基本的にそのVCが受けた要請を市民ボランティアの力で解決するという流れになります。

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ひとつ注意点として、VCが立ち上がればすぐに受け入れてもらえるわけではありません。参加者を県内とか市内の住民などに"限定"されているケースがあります。これは、公共交通機関が復旧していなかったり、大規模な受け入れ準備が整っていなかったり、車移動が前提になったりするからです。

ただ、災害ボランティアのベテランには、限定条件を無視して行ってしまう人もいます。県内限定の募集でも行ってみたら半数以上は県外の人で、それでもボランティアが足りないなんて状況もあります。このケースでは、初心者お断りみたいな暗黙の意味合いもあると聞いたこともありますが、自分で判断して高いレベルで活動できるまでは、基本的にVCの限定条件には従ったほうが良いかと思います。

また、たまにVCを通さず直接被災者支援に向かう人たちもいますが、後に説明する災害ボランティア保険は基本的に社会福祉協議会が認めた活動以外は適応されませんので、必ずVCを通して活動に参加してください。

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3.災害ボランティア参加前に準備すること

服装や心構えについては、色々な情報がネット上に転がってるのですが、以下リンクが分かりやすいので一通り目を通してください。

重要なポイントは、行き先が”被災地”であると言うことです。コンビニはもちろん、宿泊施設や入浴施設も営業してないと考えるのが当たり前です。衣食住を全て自分で賄えない人は被災地に足を踏み入れるべきではないというのが大前提です。ただし被災地域が広域では無い場合は、その周辺地域の宿泊施設がボランティア向けに開放されていたりするので、現地の情報をしっかり掴みながら計画を練ってください。コンビニが開いてたとしても、地域被災者の貴重な食糧確保になってる場合があるので、ボランティアが買い占めてしまう事態を避ける意味で、あまり使わないほうが良いです。

上記の記事にはマイカー乗り入れは避けろと書いてありますが、これまでの経験上、物資や人の運搬が発生し、そもそもマイカーで行ってなかったら、要請先に向かえず作業できなかったというケースが殆どでした。最低限は、現地の駐車場情報などを把握し、VCや前日の参加者に車は足りているか聞くなどして、マイカーで向かうか否かの判断をしてください。

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4.ボランティア保険

準備の中で重要な事のひとつにボランティア保険の加入があります。VCによっては予めボランティア保険に加入していない人は参加受付をしてくれない場合があります。国の定める災害ランクによっては国の負担でボランティア保険の加入をVCで受け付けている場合がありますが、VCの手間を減らす意味でも事前に加入していくべきでしょう。

ボランティア保険は、最寄りの社会福祉協議会で加入できます。種類が4つありますが、天災タイプを選んでください。さらに天災タイプAとBの2種類がありますが、値段の差も大した事は無いので、天災タイプBに加入しておけば良いと思います。

最近知ったのですが、災害発生時は全国社会福祉協議会のHPでWEBによるボランティア保険を受け付けているようです。

ここに災害ボランティア参加者を対象とした高速道路料金の無料化措置の申請が書かれていますので、そちらもご一読頂ければと思います。高速道路無料措置は社会福祉協議会で活動証明書の発行が必要で手続きは少し煩雑ですが、何回も通う人にはありがたい制度です。ちなみに、僕が熊本地震のボランティアに行った時は飛行機でしたので交通費支給措置はありませんでした。頑張って高速道路を自走して行けば無料措置が受けられたのですが、無理してはいけません。

5.ボランティアセンターから活動開始までの流れ

上記を全て理解した上で、準備を整え、いざ被災地のVCに足を運んだら、

受付→オリエンテーション→マッチング→送り出し→要請者宅へ移動→作業開始

という流れになります。事前予約は必要ありません、というかまだその仕組みがありません。ですので、当日は早く着いた人から順に受付が始まりマッチングするという流れになります。

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安全を考慮してか、作業終了時間が15時〜16時になっているので、作業開始時間が遅れると、遅れた分だけ作業時間が減るという状況になります。ベテランのボランティアは作業時間を少しでも長くする為に、遅くても受付開始の2時間くらい前からVCに並ぶと言う状況が普通になっています。熊本地震のときは、熊本市内のVCの周辺は被害も少なくアクセスも良かったのもあり、最後尾は受付開始から4時間くらい並んでやっと作業が始められたという状況もありました。そうなると現場での作業時間は3時間も無かったかもしれません。そんな状況なので、朝4時くらいから並んでいる人も結構いました。

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VC受付開始時間になると並んだ順で受付を始め、一定数集まったらオリエンテーションに入り、そのままマッチングになります。マッチングとは、被災者が前もってVCに届けた協力要請から、必要なスキルと人数をVC側で整理し、それに見合ったボランティア要員を募る事を言います。

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ほとんどの場合はオリエオンテーション後に順番に作業内容の説明があり、これができる人いますか?という係員からの問いに対し挙手して参加するという形になります。人数は少なくても5人から多くて20人くらいのグループになります。僕が経験した中では30人を超えるグループもありました。

このマッチングでは人数が揃ったら、そのグループ内でリーダーを決めて送り出しに進みます。人数が多いと1人や2人をいくつか募るより5人組を2組とかの方が効率が良いので、少人数の仲間で行くとなかなかマッチングできません。そこで僕は、受付に並んでいる間に前後の見知らぬ人と話をしながら、気が合いそうであれば一緒のグループになりませんか?と声掛けをします。この作戦で1人で行ってもマッチング前に4人組が作れるので、直ぐに作業が始められるというような事をやってます。早めに並ぶのはベテランが多いので、以前はどこそこの被災地へ行ったとか、そんな話で盛り上がりじゃあ一緒にやりましょう!と直ぐに意気投合できます。

熊本のVCでは、住職さんが後ろにいて、何かあったらその場で成仏させますので安心してください、と心強い仲間ができたというエピソードもありました(笑) 中には被災地外の消防の方や自衛隊員がオフで参加している事もあります。

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マッチングでグループができたらリーダーを決めます。ベテランがいると、だいたいその人が真っ先に手をあげてくれますが、いない場合は初心者よりも少しでも災害ボランティアの経験がある人を選ぶ事になります。僕もそのパターンで後半ではリーダーになることが多くなりました。

因みにリーダーの役割は、送り出しの説明をVCから受けて、要請場所の確認と必要な道具の把握、作業内容のメンバー告知、要請場所への移動手配の割り振り、要請先の挨拶や内容の説明、休憩時間の管理、現場作業の割り振り、VCへの状況報告、作業が完結しなかった場合の次回への申し送りなどなど盛り沢山です。

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ここは初心者向けの記事なので、リーダーの作業内容の詳細は割愛しますが、リーダーが案外大変なのは知っておいて下さい。わがまま言って困らせない、リーダーの言うことには従うなど気を使う事はとても大事です(笑)

6.ボランティア作業実施中の注意点

作業内容の細かい内容は上記で紹介したレスキューストックヤードのWEBをしっかり目を通しておいてください。

大事なのは、相手は被災者だと言う事を常に意識し、必要以上にバカ騒ぎしないように心がける事です。ただ、ボランティア側に悲壮感が漂ってると被災者も更に不安させてしまうので、相手を不快にさせない程度に明るく振る舞う事も大事です。

東日本大震災のボランティアでは、娘さんを亡くしたお宅の要請を受けましたが、どのような態度で接したら良かったか今になっても分かりません。作業後に要請先のお父さんからのご挨拶に、ボランティアメンバーの殆どが涙を流した事は覚えています。必ずしもそういう悲しい現場だけでは無いのですが、リーダーが要請者としっかりコミュニケーションをとって現場の雰囲気を作っていく事も大事です。もちろん被災者の心のケアも考慮するべきです。

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他に注意しなければいけない点は、VCへの要請があった項目以上の仕事は基本的には受けてはいけません。秩父の小鹿野町の大雪災害で活動した時は、駐車場に車が停められるように雪かきするのが要請でしたが、要請主のお婆さんから、思い入れのある庭もやって欲しいという相談をその場で受けました。その時は3人のグループだったのですが、とても対応しきれる広さの庭ではありませんでした。お婆さんは一人暮らしで、手伝ってあげたい気持ちは勿論ありましたが、庭の雪が積もったままでも生活に支障はなく、他に困っている人の要請もあるので、心を鬼にしてしっかりとお断りを伝えしました。

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さらによくあるケースとしては、要請先のお隣さんがついでにウチもお願い!と言ってくるパターンです。要請先の作業内容に合わせて人数が決められるので、普通は対応できないのですが、早めに終わらせて対応できそうな時は、必ずVCに連絡し許可を取ってください。勝手にやってしまうと、何かあったときに保険が下りなかったりする可能性もあります。対応できなければ、相手にVCの連絡先を伝え、正式に要請をお願いしてもらうようにしましょう。

それと大事なのは、できない作業を無理に行わないことです。東日本大震災の東北では、床下の泥かき作業で邪魔になるからと家の大事な柱を切り取ってしまった為に、家を再起不能にしてしまったという非常に残念な事案が発生したそうです。本来であれば、このケースは大工や建築士など専門知識がある人の判断が必要で、自分たちでは対応できない案件としてVCに報告しその作業をやめるべきでした。

しっかり報告すれば、次回の作業でそこに必要な知識を持つ人がアサインされる仕組みになっています。災害復旧はすぐやるに越した事はないですが、無理にやってしまうと思わぬトラブルを起こし、余計に時間が掛かってしまう事もあります。1日で終わらせようとせず、次の日また来るのであれば継続作業としてマッチングされます。当日に帰る予定であっても、作業終了後にリーダーからVCへ申し送りをすれば、次の日にしっかり対応して作業が引き継がれます。

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7.ボランティア作業終了時の注意点

殆どのVCでは、VCに戻る時間が決められており、片付けや移動時間含めてそこに合わせて現場作業を終了させる必要があります。作業が途中だった場合は、VCは次の日も継続として要請を受けます。リーダーは作業進度や注意事項などを申し送り内容を整理し、それをVCに戻ったら最後に伝えることになります。

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作業が終わったあと、要請主が金品をお礼に渡そうとするケースもありますが、必ず断るようにしましょう。お茶菓子程度ならありがたく頂いても良いかもしれません。と言いつつ、東日本大震災の南三陸の復興ボランティアでワカメ漁師の手伝いをした時にワカメもってけー!と言われ断りきれず4kgほどの生ワカメを頂いて帰ったことがあります。そのワカメは冷凍して半年かけて食べ尽くしました(笑) あれほど美味しいワカメを未だに食べた事がありません。

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8.作業道具やスキル

災害ボランティアにいざ参加しようと思っても、道具が無いとかスキルが無いとか、色々できない理由をつけてしまいがちですが、現場に行ってみると意外と中学生や高校生を見かけます。彼ら彼女らが特別な能力を持っているかと言うとそんな事は無く、誰かの役に立ちたい、人を助けたい、そんな思いでやってきています。災害ボランティア作業には健全な人なら誰でもできる作業が意外に多く、自分は無理と決めつけず、何かできる事が必ずあると思って足を運んでください。できれば身近な経験者と一緒に行くと良いでしょう。

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被災地にVCが立ち上がる際は、被災地以外の社会福祉協議会から必ずと言って良いほど大量に作業道具が送り込まれ、災害経験した職員が派遣されています。僕はこれまで毎回道具を持参して行きましたが、中には手ぶらでくる人(服装はしっかり準備してますよ)が一定数いました。それでも道具が足りなくなったという経験はありませんでした。

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被災地周辺での泊まりとなると色々大変ですが、公共交通機関が復旧している場所であれば、日帰りでいく事も可能です。必要なのは少しでも自分が被災地で役に立ちたいという思いと、近所のホームセンターで手に入るレベルの作業に向いた服装など最低限あれば大丈夫な場所もあります。

作業が終わったら周辺の被害を受けていない観光地があれば、そこにお金を落とす事もボランティアの一環ですので、積極的に観光して帰りましょう。

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9.最後に

長々と書き記してしまいましたが、最後まで読んで下さったあなたは、是非この記事の内容を活用し、一人でも多くの被災者の役にたって頂ける事を期待しております。
ただし、責任感に追われ無理する必要はありません。できる人が、できる時に、できる事をやる、これが災害ボランティアの基本です。

日本ではボランティアは偽善者的な活動に思われがちですが、先に申したように被災者の生活が日常に戻る最後のケアは一般市民を中心とした災害ボランティア無くしてありえません。仕組みとしてそうなっているのです。自分自身が被災した時には、必ず彼らが助けに来てくれますが、その時ボランティアが誰もいなかったら10人でやって5日かかるような作業を1人でやることになります。夏季の水害であれば、床下の材木は腐り始め、再起不能になる可能性だってあります。

ですから、ボランティアに参加してる事をコソコソ隠さず周りに積極的に共有してください!そして1人でも多くの人がボランティアに参加したくなるような雰囲気を作って行ってください!そうする事で、ボランティアのイメージをより良くして、誰でも当たり前に参加できる風土を作って、災害時にはより多くの人たちが助け合える社会が継続される事を願いに込めて、この記事を締めくくります。

最後まで読んでくださった方、ありがとうございました。

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