見出し画像

スタートアップの法務に向いている人

はじめに

最近、スタートアップの経営者などから、「法務の人材を探しているのだけど、どのような人がよい?」と聞かれることが増えてきました。
※てなわけで、スタートアップへの移籍を考えている法務担当者や弁護士の方は、ぜひご一報ください!

こうして頼っていただけるのはうれしい反面、自分自身、日々悩みながらあるべき法務の形を模索しているという感じで、上記の問いに対しても、いまだにハッキリとした答を見つけられておりません。

このように自分自身の考えも十分にまとまってはいないのですが、ぜひとも皆様のご意見を伺えればと思い、この記事を投稿してみます!

スタートアップにおける法務の役割は?

まず、事業領域や組織の規模・成長段階などにもよると思いますが、スタートアップの法務を概観すれば、
①サービスの「安心・安全」
②コンプライアンス
③リスクマネジメント
④内部統制
⑤コーポレート・ガバナンス
⑥契約管理
⑦紛争管理
⑧資本政策(ファイナンス)/M&A
といったところかと思います。

スタートアップによっては、新規事業の企画・検討や、戦略法務・ルールメイキングも法務の役割に含まれるかもしれません。

また、子会社をもっているスタートアップであれば、子会社管理も法務の役割に入ってくるだろうと思います。

法務のカバーする範囲はけっこう幅広い

上記の役割の中には、法務以外がイニシアティブをとり、法務はサポートに回るものも含まれますが(たとえば、④内部統制は経理が、⑦資本政策は財務がイニシアティブをとることが多いと思います)、そうはいっても、上のように法務の役割を書き出してみると、法務のカバーする範囲はけっこう幅広いなと感じます。

しかも、たとえば、コンプライアンスと一口にいっても、適用される法令はさまざまあるのが通常ですし、また、リスクマネジメントと一口にいっても、個人情報漏えいや大地震など、会社をとりまくリスクはさまざまあるのが通常です。
このように、上に書いた法務の役割は、それぞれが重く、また、なかなかに奥深いといえるのではないかと思います。

そういうわけで、法務は、世間的にはニッチな仕事という印象が強いかと思いますが、専門性(リーガルマインド)はとがらせておかなければならない一方、けっこうジェネラルな知識も求められるように思います。

(意外かもしれないけど)主体性・積極性が求められる

また、法務というと、後ろ向き・受け身な印象もあるかと思います。
しかし、たとえば、サービスの「安心・安全」をとっても、どのような状態が「安心・安全」なのかを定義して、その実現のための施策を考えなければいけません。
また、リスクマネジメントについても、会社をとりまくリスクを未然に抽出し、優先度をつけて対策を講じていかなければなりません。

このように、法務も、いい仕事をしようと思えば、主体的・積極的に、意志をもって取り組まなければならないことは他の仕事と同様です。

どういう人がスタートアップの法務に向いている?

このような法務の役割も踏まえて、どういう人がスタートアップの法務担当者に向いているかを考えてみます。

(1)「どうすればできるか?」を考えられる人

スタートアップは、積極果敢にチャレンジを続ける組織なので、コンサバ過ぎたり、リスク回避思考が強すぎる人よりは、「できる前提」で、「どうすればできるか?」を粘り強く考えることが好きな人が向いているだろうと思います。

とはいっても、「攻めの法務」の名の下に違法を犯しては意味がなく、ときには体を張って事業部を止めるリスク感覚や遵法意識も必要となりますので、相当にバランス感覚が求められるように思います。

(2)勉強熱心な人(あるいは責任感の強い人)

日々勉強して知識をアップデートしなければならないことはスタートアップの法務に限った話ではありませんが、スタートアップでは、複数の法務担当者がいることは珍しく、ひとりで幅広な業務を担当することが通常だろうと思います。

スタートアップの事業環境の変化の速さもあいまって、法務担当者としては、法務のカバーするさまざまな業務について、必要な知識をその都度勉強しながら対応せざるを得ないように思います。

そのため、スタートアップの法務担当者については、ある程度勉強熱心な人(あるいは、自分の仕事はやり切るという強い責任感を持った人)の方が望ましいだろうと思います。

(3)コミュニケーション力がある人

これまたスタートアップに限った話ではありませんが、法務の仕事には、契約書の起案・レビューのような、自チーム内で完結する職人的な仕事に加え、チーム横断的に取り組む仕事も相当あると思います。

たとえば、サービスのルールを設計する場合はPM(プロダクトマネージャー)や現場担当者との連携が欠かせないでしょうし、情報セキュリティを考える場合は、エンジニアとの連携が欠かせません。

そのため、法務担当者には、他部署と連携しながら仕事を進めることのできる一定のコミュニケーション力が求められるように思います。

また、取引先との契約交渉や、トラブル対応もコミュニケーションの一種であり、これらの文脈でもコミュニケーション力は活きるだろうと思います。

(4)マネジメント力がある人

特にひとりめの法務担当者については、その後、会社の成長に伴い、新しく法務担当者を採用し、法務チームを本格的に立ち上げていくことも想定されます。

この点、チームやメンバーを上手にマネジメントするには、そのためのスキルが必要であり、当然ながら、これは法律の専門性とは別のスキルです。
人間には向き不向きがありますので、(いい・悪いではなく)マネジメントの適性があるかもその人の性格や特長によるように思います。

このような理由で、特にひとりめの法務担当者については、マネジメントの適性があるかも重要な採用基準になるように思います。

いい人はどこにいるのか?

(1)採用応募をかけるターゲット

ひとくちに法務の経験があるといっても、大企業で法務の経験を積んだのか、中小企業で「ひとり法務」の経験を積んだのか、スタートアップで法務の経験を積んだのか、法律事務所で弁護士経験を積んだのかで、その人のスキルセットやマインドセットはけっこう違うだろうと想像されます。

そうすると、スタートアップとしては、どのような経験や属性を持った人をターゲットにして採用応募をかけるのがよいかが問題となるのですが、正直なところ、よくわかりません。

スタートアップ経験者の方がカルチャーフィットはしやすいかもしれませんし、近い事業ドメインの法務を経験している方が即戦力になりやすいように思いますが、いずれも一般論にすぎません。

結局のところ、自社の求める法務担当者をしっかりと定義し、採用面接などでしっかりと認識合わせを行うほかないのかもしれません。

(2)弁護士資格の有無は?

弁護士資格を持っている人は、法学を体系的に勉強しており、法律の専門家としての地力を有している場合が多いと思います。この点はアドバンテージかと思います。
他方、司法試験で求められる知識と企業法務で求められる知識は違いますので、その弁護士のキャリアによっては、必ずしも即戦力にならない場合もあるかもしれません(ただし、地力がある分、キャッチアップは早いだろうと想像されます)。

世の中には、弁護士資格を持たない優秀な法務担当者は多くいますし、弁護士資格を有しておらずとも、企業内で契約法務その他の企業法務に従事した経験があれば、スタートアップに移籍した後に即戦力として活躍できることも多いのではないかと思います。

そういうわけで、弁護士資格については、あってもなくてもどちらでもよい(どちらでも、いい人はいる)という感じがします。

そもそも、法務担当者はどのタイミングで採用するのがよいか?

法務担当者は売上を生むわけではないため、特に組織が小さいうちは採用の優先度は低いことが通常かと思います。
また、実際のところ、組織が小さいうちは法務の仕事はあまり多くないかもしれません。

では、どのタイミングで法務担当者を会社に入れるのがよいのでしょうか。

この点については、「法務のメンバーはだいたい30人目ぐらい」という見解を聞いたことはあります。
おそらく、メンバーが30人を超える頃になると、いよいよ組織という感じもしてくるし、外部との取引も増えてきて、法務のニーズも高まるということが、「法務のメンバーはだいたい30人目ぐらい」といわれるゆえんかと思います。

法務のニーズは会社の事業内容にもよるでしょうし、また、採用をかけてもなかなか条件にマッチする人からの応募がないという場合もあるでしょう。
そのため、あくまで一般論ではありますが、なかなか興味深い指摘であるように思います。

おわりに

スタートアップの法務担当者について、自分なりの考えを書いてみました。
もっとも、わからないこともたくさんある中で書きましたし、いまの考えはまだまだ発展途上にすぎません。

ぜひとも、皆様のご意見も教えていただければ幸いです!


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?