見出し画像

同期の彼 15

ずっと日本語検定のテスト勉強をしていた彼。
今週はやっと解放されて日帰りドライブに行くことになった。
「マジで久しぶりに運転するなー。でもいい天気だし気持ちいいね!」
「うん…」
「どこに行こうか?海?山?」
でも気分はのらない。
ちょうど信号で止まって
「まだ元気でない?」
両手で顔を挟んでそう聞かれて
ブンブンと首を振って手を振り解いた。

2週間前…

仕事できない。
いつもならルンルンで仕事を片付けて週末を迎える金曜日の午後。
デスクでボーッとパソコンを打ってる私にジミンが話しかけてきた。
「アツ…どうした?具合でも悪い?」
「んー大丈夫…ですよ。仕事…続けてください」
「えっ?どーした?いつもなら俺が話しかけたら、待ってましたっ‼︎とばかりに週末の計画話しまくるのに笑」
「んー今そんな気分じゃなくてー」
「なんだよー悩みがあるならさー話してみなよっ」
っとジミンはサービスのかわいいポーズをしてくれた。
「ありがと。でも超くだらない悩みなんです。ジミンさんに相談するようなことでも…ない…」
「おっ⁈な…なにお前泣いてんの?
えっ?えっ?おれ?じゃないよね?」
「ジミンじゃないし、泣いてないし。
大丈夫だから。仕事します」
「いや、お前から仕事しますとかおかしいじゃん。どーした?」
「ジミン。ここで話したら私泣いちゃうからあとにして。」

定時のチャイムと共にジミンに連れられてオフィスをでた。
「今日テヒョンは?」
「べんきょー。来週試験だから今週はずっと勉強してる…んだと思う」
「それで拗ねてんの?笑」
「違う」
「じゃー何?」
運ばれてきた生ビールで乾杯しながらジミンがイジワルそうに聞いた。
「じつは…午前中に私宛のお客さんが来てね…受付にいったら女性で…私の顔をみるなりすごい怖い顔になって…テヒョンを返してって。」
「はー?」
「すっごい怒った顔で…怖くて」
「なんで俺のこと呼ばないんだよ」
「だってジミン午前中会議だったじゃん」
受付に呼ばれて彼女に会った途端
「テヒョンと別れて」と低い声でいわれた。
意味のわからない私に、彼女は韓国にいた時にテテと付き合ってたこと、この間韓国に帰った時会ったこと、テテと彼女の仲を私が邪魔してるってことを一気に
説明した。
「つまりあなたとテテは好き合ってるけど、私が邪魔してるの?私が浮気相手ってだって思ってるの?」
そう聞いたら「かわいそうだけどそういうことよ。テヒョンはモテるから少しくらいの浮気はしかたないと思ったけど、
そろそろ身を引いて」
と自分の言いたいことだけを言い放ってる帰っていった。

ジミンにひと通り話したら…
「女ってすごいな。こえー」
とビールを飲み干した。
「あまりの迫力に圧倒されて…さ」
「お前が圧倒されるってよっぽどだな笑
それでテヒョンには連絡したの?」
「してない。勉強してるはずだし。
でももしかしたら彼女と会ってるのかもだし…」
「ふーん」
ジミンは新しくきたビールをぐいっと飲みながら「じゃ、このまま邪魔者は手を引くの?」と意地悪に笑った。
「ジミンは…知らないの?彼女のこと」
「知らない。俺はもともと釜山のオフィスにいたからテヒョンと仲良くなったのは日本に来てからだし」
ジミンからの情報提供と否定のことばを期待していた私はまたまたすっかり落ち込んだ。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?