イクメンより、イキメン

 イクメンの増加は、良いことだと思う。しかし、あえて突き放した言い方をすれば、自分の子どもを育てるのは当たり前だ。

 父親ペンギンは、母親ペンギンがエサをとってくる間、吹き荒れるブリザードの中、数ヶ月もの間、じっと身じろぎせずに卵を温め続ける。動物だって、頑張っているのだから、人間が自分の子どもの世話だけで満足してはいけないのではないか。いま地域の子育て支援を担っているのは、主に女性だ。子育てNPOにしても、PTA活動にしても、活躍している男性はごくわずかだ。

 今後、自分の子どもの世話をきっかけに、地域での役割に目覚める男性=イキ(域メン)が増えていくことを期待している。

 というのも、相変わらず、子どもたちが犯罪の被害者・加害者になる事件が頻発しているからだ。悲痛なニュースを聞くたびに、私は地域社会全体で子どもたちを育み、見守る機能が著しく低下していることを痛感する。

 三十年近く前、私は地元の公園で「子ども会」を始めた。地域社会できちんと子どもの名前を呼んで、ある時は厳しく叱り、じっくりと諭す大人になりたいと思ったからだ。

 子ども会では、聖書の紙芝居を見せ、おやつを食べ、鬼ごっこなどで遊んできた。最初は青い熊の着ぐるみをかぶって集めたこともあったが、多い時は十数人の子どもたちが待っている。見晴らしのいい公園でやっているので、毎回のように新しい子が加わる。学校や家庭に居場所がない子も少なくない。

 以前、子ども会に来ていた2人の小学生が、私たち家族といっしょにお昼ごはんを食べていた。一人が当時、2歳の長男のことを「うらやましい」というので、「しょっちゅう俺に叱られているぞ」というと、「それが、いいんだよ。うちなんて、おばあちゃんしかいないんだ。」

 その後、悪さをしたその子のお尻をぺんぺんと叩いたら、「やめろー」と言いつつも、嬉しそうだった。今後は、地域の子育てにおける「男性の役割」がますます重要になると思う。

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