公園で待っていた雪ダルマ

 30年近く前から、週末に20年続けた「子ども会」は年中無休でやっていた。ある年、正月に東京では珍しい大雪。ひざまで積もり、まだ降りやまない。人も車も、姿はまばらだ。

 「さすがに、こんな日には、誰も来ないだろう」家でこたつにくるまっているが、なんだか胸騒ぎがする。エスキモーのようなダウンを着こみ、公園に行った。だだっ広い一面が白銀の世界。

 遠い向こうにぽつんと「雪だるま」が2つ。「やっぱり、誰もこなかった」と帰ろうとすると、「おそいよう!待ってたんだよ」と声がする。

 雪だるま2つに見えたのは、小3の女の子Aちゃんとその弟。コートに白い雪が積もっていたのだった。遅刻したことを何度も謝ったあと、雪合戦をしたり、ミニかまくらを作った。ひとしきり遊んだあと、おやつタイムでベンチに座ったら、Aちゃんはポツリと打ち明けた。

 「私ね、最近、学校でバイキンって言われてるんだ」と悲しそうにうつむく。Aちゃんが小学校に上がる前に、お母さんは病死していた。以来、主婦代わりに晩御飯を作ったり、弟の面倒を見ている頑張り屋だった。

 しかし、まだ小3だから、毎日、洗濯までは、手がまわらない。ワンパク坊主たちは、「おまえはいつも同じ服だ。きたねえ。バイキン」とはやし立てるのだという。

 「先生には言えない。だって、チクッたのがばれたら、もっといじめられる」「一生懸命働いているお父さんにも言えない。だって、心配かけたくないもの」

 その時、何を話したのか、ほとんど憶えてはいない。しかし、「神様はAちゃんのありのままの姿を愛しておられる。Aちゃんはそのままで、かけがえがないんだ」と一生懸命話したのだろうと思う。

 最後に、Aちゃんは「ありがとう。やっぱりきて良かった。でも、もうあんなに遅刻しちゃダメだぞ」と笑った。

子どもたちの誰にも言えない悩みに耳を傾け、励ます。またある時は叱りつける「地域のおじさん、おばさん」が増えるといいと思う。


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