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「vol.15 職人さん100人数珠つなぎ」/野依克彦(Katsuhiko Noyori)さん/錺金具師&オリジナルブランド”和悠庵”ファウンダー

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尾張仏具

(江戸時代初期頃から愛知県名古屋市を中心に生産している、仏様を美しく厳かに飾りつけるための道具。特徴は、長野県木曽郡で産出される良質な木材を使用した木製漆塗り製品を中心として、細分化された分業制のもと、職人の高度な技術によって1000を超える多種多品目の仏具を生産する技術を有すること。仏具の中でも、木魚と丸金台が作られているのは現在尾張地区でだけとなっている。)
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fb掲載 assembly

NOYORIの2代目として、作り手として一流であることを大切にしている野依克彦さん。「作る人にとっては1/100でも、使う人にとっては1/1なので、お客様が満足するように目に見えない裏の部分まで気を遣って作ることを信念としています。」とお話しくださいました。

fb 掲載 nanako

1: 強み //錺(かざり)金具以外の他分野&他産地の技術を習得し、金属のことなら何でもできる技を持つこと//(大袈裟ですが願望です。)

 野依さんは大学時代、別の仕事に就こうと考えていたので、体育学部に所属し、剣道に励み、卒業後は剣道をいかし警察官や教員、実業団で働こうと思っていたそうです。しかし、当時面倒を見てくれた先輩から、家を継ぐ気があるなら早目に家に入った方が良いのでは。というアドバイスもあり、大学卒業後直ぐに家業を継がれました。
 職人の世界では同業他社の所で修行をしてから家業を継承するというケースが多いため、野依さんは家以外の所で修行をしていないことを引け目に感じていたそうです。
 加えて、“金属のことなら何でもできるようになりたい”との想いから、従来の錺金具の技術に加えて、金属を型に当てて金槌で打ち出して形成する鍛金技法、金属をはめ込む象嵌技法、金属の素地にガラス質の釉を焼きつけて装飾する七宝技法などの様々な技術を学ばれました。
 具体的には、他産地で使われている地彫りと呼ばれる凹凸感のある金具の技術を習得するため、週1回の休みを返上して、名古屋から岐阜県羽島市まで通い、更に京都まで錺金具の勉強に通うなどして、他分野&他産地の技術を習得されました。
 現在は、これまでに学んだ多彩な技を活かして、オリジナルアクセサリーブランド“和悠庵”を立ち上げ、ネクタイピンやヘアーアクセサリー、テーブルスタンドなどの現代のライフスタイルにマッチする工芸作品を製作販売しています。


 “金属のことなら何でもできるようになる”というビジョンに向けて、貪欲に技を磨き続ける強いパッション。そして習得された他分野&他産地の技を持つ強みを活かして、金属の可能性を追求し続ける姿が素晴らしいと思いました。 

fb掲載 cherryblossom series

2: ものづくりに対する姿勢 //100年、200年残っていく仕事なので、後世の人が見て“良い仕事をしている”“この職人はすごい!”と言われる仕事をする//

 NOYORIの誕生は、お母様方が4代続く錺金具の製造をしており、お父様がそこで修行をし、独立したことに始まります。お祖父様が仕事にこだわり、良い仕事をすると評判が高かったことから、一流の仕事をする問屋が付き、お父様や伯父様、そして野依さんと代々“良い仕事をする”ということをフィロソフィーとして受け継がれています。
 「“腕がイイ!”という良い評判は周りから言われて言葉で伝わるものです。仏壇仏具は分業制で作られるので、自分の仕事が次の職人に影響します。また、錺金具の前の工程である漆職人が塗った部分を傷つけることのないように、裏まで細心の注意を払い金具を取り付けます。仏壇仏具はみんなで力を合わせないと完成できません。そして100年、200年と修理しながら永く使われるものなので、後世の職人が修復する時に“この職人は良い仕事をしている!”と言われたい。自分で作っているからこそ、そのように言われるチャンスがあるので、少しでも腕を上げていきたい。」そう語る野依さん。
 仏壇仏具は伝統工芸の総合芸術とも言われ、木地師、漆塗師、彫刻師、錺金具師、蒔絵師など職人の技が集結することで出来上ります。

 時もジャンルも超えて語り継がれる職人として、技の可能性を次の次元に引き上げてもらいたいと思います。

fb掲載 dragon

//野依克彦さんのブランド//
和悠庵 伝統的な錺金具技法を使ったオリジナルアクセサリーブランド

//野依克彦さんの会社情報//
有限会社ノヨリ

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