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人生初の119番

人生初の119番。初めての救急車。初めて接する救急隊。

ついこないだ110番と119番を間違ったという話を聞いたとこなのに、どっちがどっちか迷う。迷った末選んだ番号は、「消防ですか?救急ですか?」の第一声に正解と知る。

救急車に乗り、父に39.2°の熱があることがわかった。全く想像してなかった発熱。コロナかもしれないとのこと。

受け入れてくれる病院探しが始まる。
そうか、救急車に乗ってもすぐには発車しないのは、そのためか。

一つ目に当たってくれたわりと近めの病院はダメで、受け入れてもらえた病院はうちから少し離れていた。ただ、受け入れてもらえるといっても、その病院もベッドは埋まってるらしく、コロナが陰性の場合は診てもらえるが、陽性の場合は、そこで診てもらうことはできず、保健所を通しての病院探しが始まるとのこと。それがもしかしたら3時間位かかってしまうことを、申し訳なさそうに、ご了承くださいと言われる。

父みたいに意識はあり、まだいける!的な感じとは違い、緊急を要しててそんなにも待ってられっか!という患者さんもいるだろうし、感じ方は人それぞれ。先に伝えておくのがお互いのために良いということなんだろう。

病院に着くと、病棟の建物の脇に、小さなプレハブ小屋があり、父はそこに運ばれた。患者一人のベッドが入る位のスペースだ。私も一緒に入る。看護師さんが一人いて、まずコロナかどうかの検査をするらしい。鼻に綿棒のようなものを入れられる。それをまた別の看護師さんが受け取りにきた。

私はベッド脇の丸イスに座らせてもらい、看護師さんが、点滴をするために父の腕の血管を探すのを見守る。往診の先生も採血の度に困る父の腕の血管の細さ。救急隊の一人の方だけ一緒にいて看護師さんの手助けをされている。今回も何度かやってみるもダメで、おそらく4回目で無事成功。点滴と共に採血もしていたらしく、それをまた別の看護師さんがとりにくる。その時にコロナの結果まであと20分とのやりとり。

結果は、コロナ陽性だった。

救急隊の方から、改めて、これから受け入れてくれる病院を保健所を通じて探すこと、時間がかかるかもしれないという説明を聞く。時間は全く問題ないのでよろしくお願いしますと頭を下げる。

すぐ隣にいるので何かあれば呼んでくださいと言い残して救急隊の方は出ていかれた。

搬送先が決まるまで、そのプレハブの部屋を使っていいとのことで父と私はそこで待つこととなった。

その時、おそらく22時頃。

看護師さんが暖房を温度高めにセットしてくれたはずが、じっとしてるとかなり寒い。
ふとんを被せてもらっているが、父も寒い寒いと、もぞもぞと動こうとする。
点滴してるから動いたらあかんと言うと、あぁそうかとわかってくれて一瞬じっとするけど、やっぱりすぐ動く。動くたびに、動いたらあかん、あぁそうかとエンドレスなやりとり笑。

エアコンの温度を確認すると30度。かなり高くしてくれてるけど、寒い。プレハブの寒さを思い知る。上着をはおってこんかったのがあかんかった。

そのうち父は寝てしまった。
私はたまにスマホを見たりするが、落ち着かない。

救急隊の方に、家を出るとき持ってくるよう言われた父の靴が入ったビニール袋をカサカサいわせる音で父を起こしてしまったり。そのうちまた目をつむり、寝息が聞こえる。

そんな中、目覚めた父が胸が痛いと言い出した。心臓痛いん?と近づくと、痛いと顔をゆがめる。

救急隊の方を呼びに行った。
救急隊3人の方と部屋に戻ると、なんともない感じで父は天井を見つめてる。

救急隊の方が父に確認するともう痛みはなくなったとのことで、そこから一切痛みを訴えなかった。
先日亡くなった伯父が、コロナワクチンを打ったあと、心臓が痛むと訴えて診てもらった先で即入院となった話を聞いてたので、心配になってたのだ。

その後、念のため一人の方が一緒についてくれていた。

狭い部屋に父と私と救急隊の方が一人。
父がまた寝息を立て始めた。

救急隊の方が寝てますねと笑って言ってくれたことで、ちょっと緊張してた部屋の空気がゆるんだ。

そこから、普段の父の生活のこととか一緒に暮らす私が仕事に行ってる時はどうしてるのかなんかを聞かれる。仕事は家でしてるのでと答えると、コロナでですか?とコロナきっかけの在宅ワークと思われてる感じ。合わせときゃいいものを、いえコロナ関係なくと言ってしまい、話が続かなくなる笑。

話題は違うものへ。
お父さんワクチンを2回打たれてるんですよねという話から先の伯父の話をする流れとなった。救急隊の方も驚いていた。
ワクチンを打っても絶対かからないわけでもないし、そういうこともあるみたいですよねと返された。

伯父の件があったので、父のさっきの心臓痛いに怖くなったことや、父も今後ワクチンは打たないと言っていること、私は打ったことないことなんかを話した。

ワクチン打つ打たないはそれぞれの考えがありますしね、どっちが良いとか悪いとかいうのはないようなことを言ってもらえてなんだかホッとした。このときに、私は、自分はワクチン打たない派やけど、コロナにかかるのが怖くて打つ人、本意ではないけど色んな理由で打たざるをえないような人のこともみんなオッケー!と抱きしめたくなるような気持ちになった。

ちょっとした会話で生まれた、今まで感じたことのない気持ちに、救急隊の方にものすごい感謝。どんな拍子で、自分の中の素敵なものに気づかせてくれる出会いがあるのかわからない。どんなところにもきっとあるんやろうと思う。

そのあと、父はもう大丈夫そうなので、立ちっぱなしで一緒にいてもらうのは申し訳なく、何かあったらまた呼びますと伝え、救急車に戻ってもらうことにした。

日付は変わり、かなり眠くなってきた。
目を覚ました父が壁に掛かっている時計を見て、8時かと言う。時計を見上げると、12:40を針は指していた。40分のとこが8時やわな笑。それを言うと、父も気づき笑ってた。

それから少しして、救急隊の方がやってきて、受け入れの病院が見つかったとのこと。長いことお待たせしてすみませんと謝られる。とんでもない。こちらこそである。今までずっと探してくれたことに感謝である。

搬送先の病院はさらにうちから離れたが、思ってたより近くて良かった。

父がコロナ陽性ということで、私は濃厚接触者のため、父に付き添って来ても、病院には入れないとのこと。救急隊の方に父の搬送を任せ、私はここでお別れとなった。

誰か迎えに来てくれる方はいますか?と聞かれ、大丈夫だと思いますと答える。

その迎えに来てくれそうな人というのは、まさかの先日携帯をブロックした母である。

実は、救急車が家の下に来てくれたとき、仕事帰りの母がちょうど通りがかり、我が家だと気づき、家にやったきたのだった。

心配してやってきたのはいいが、玄関を塞ぐように立つ母に、救急隊の方がそこ通るんでどいてくださいと言う。

しまいには、誰ですか?と聞かれ、父のことを元夫ですと答えていた。あーややこしくなるからこんといてほしかったー笑。

それでも、私が家を出る用意をしてると、何かあったら手伝うから言いやと心強い言葉!携帯ブロックしてすまん!

そんな経緯があったので、深夜1時の帰宅も迎えに来てもらえるだろうと安心していた。

それが、電話すると、迎えに行くのん無理無理と言われる。え?あのときの心強い言葉なんやったん!!

看護師さんと救急隊の方がやってきたので、いったん電話を切る。迎えは大丈夫かとまた聞かれたが、救急隊の方には大丈夫と答え、看護師さんには、ここにタクシーは来てもらえるか聞く。するとタクシーは使ってもらいたくないと言う。え?どゆこと??そのときは意味がわからず、不安ながら再度母に電話をする。

電話に出た母は、仕事で疲れているうんぬんかんぬん迎えに行けない理由を述べる。わかったもういいとキレ気味に電話を切る。やっぱり携帯ブロックしてすまん!ではなかった。再ブロック!

その後、救急車は父を乗せて出発した。
救急隊の皆さんありがとうございます!!

そこから看護師さんにもう一度タクシーを呼べないか聞く。やっぱりタクシーはやめてもらいたいとなぜか言われる。迎えに来てくれる方誰もいないですか?ご兄弟は?と。兄弟は車乗れないですと。誰もいないですか?としつこく言われる。いや、そもそもこんな深夜に身内以外によう電話せんわ。

朝まで待たせてもらって、始発で帰ろうかとも考えそれを言うと、やっぱり誰か迎えをと言われる。お互いイライラしてきてるのがわかる。

もういいや、歩いて帰ろと思いそれを伝えるとあっさり受け入れられた。なんだか見捨てられたようで悲しかった。

真っ暗でどこから出ていいのかもわからんかったけど、救急車が出ていった方に歩いていくと病院から出られた。Googleマップを開き、今どこで、家まで歩いて帰れるのか調べる。そのとき、深夜1時過ぎ。予定到着時刻3:15。2時間歩けば帰れる!

そこは水間観音駅というこの辺ではまあまあな山あいだった。

広い道路に出れたが、街灯が少なくて、なかなか怖い。歩道脇の草木がうっそうとしてて、そこからオバケとか誰かが出てきたらと思うと怖くて、車道を歩く。

Googleマップのありがたみ!全然わからん土地から家まで案内してもらえる!

上着もないので歩きだしたときは寒かったけど、風がそんなになくて寒さが気にならんくなってきた。怖さを紛らすために「あっるこーあっるこーわたしはーげんきー♪」と歌ってたら気分が良くなってきた。歩道脇の草木にもハロー!ハロー!と声をかけてゆく。みんなが家まで見守ってくれる気がした。

思ったよりもいい感じで我が家に向かって歩いていた。家に近づいた頃にタクシーがだめな意味にふと気づいた!私が濃厚接触者やからか!公共の交通機関があかんの意味を深夜で電車がもうないって意味に捉えてたけど、理由はそれやーん!濃厚接触者やから!気づくのが遅い笑。

家に着く直前に搬送された病院から父が無事運ばれてきたとの電話をもらい一安心。

家には3時頃帰宅した。

帰ったらお腹が空いてて、父が食べるはずやった焼き鮭とご飯を食べた。

長い一日が終わった。

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