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今だから、わかること。

最近、色々な場で学生の方たちが自分の大学名なども含めて堂々と自己紹介しているのを見て、自分が若い時はすごく変な意識があり、世界が狭かったな、と気づきます。

地元で北大生というと「勉強できるんだね」とか言われるのがすごく嫌で隠したりしていましたが、本当に今考えるとどうでもいいことですし、ヤンキー(?)コミュニティに育ってたんだなと痛感します。

そして、大学時代のどうでもいいエピソードを思い出しましたよ。

大学の時にずっと家庭教師バイトをしていました。

夏は自転車があるのでいいのですが、冬は50分くらいかかるので、確か22時くらいに終了して、家に着くのが23時前くらいだったと記憶しています。

ある冬の夜。その日も私は家庭教師からの帰り道で、あと10分くらいで我が家というタイミングで、札幌新道(高架に高速道路が走っている大きな道路で、高架下はちょっと暗くて怖い)を渡るところでした。

青信号を渡るとき、止まっていたワゴンから声をかけられました。

「もう帰っちゃうの?」

「遊びに行かない?」

私と同年代くらいか…、若いちょっと怖そうな(状況がそうだったので怖そうに見えたのかもしれません)男でした。

人気(ひとけ)もなく恐怖を感じたので聞こえないふりをし、見ないようにし、横断歩道を渡りました。ちょっとドキドキしましたし、無視した申し訳なさもあり、足早に家へと向かいます。

新道を渡ると住宅街に入り、もうちょっとで我が家に着きます。

北海道の冬は歩道に高い山ができます。私が新道を渡った先の歩道も、車道との境界に大人の背を悠に超える高い山ができていて、見通しが悪いです。

そんな歩道を急いで歩いていると、数10メートル先の雪山の切れ目のところに、先ほどのワゴンが歩道を塞ぐように止まっているのが見えたのです、まるで行く手を遮るように。

先ほど声をかけてきた男がこちらを見ているのがわかりました。

どうしよう、怖い。

私が選択できる行き先は、後ろに戻るか、車がいる前方に進むか、しかありません。横には高い雪山がそびえ立っているのですから。

しかし、後ろに戻るということは、明らかに相手から逃げることが伝わり、相手を刺激しそうです。

なので、私は前に進むことを選択しました。

「明日の朝は早いから、もう帰らなければならない」ときちんと伝えれば大丈夫だよね。。と思いながら。

車のすぐ手前まで近づくと、車の中の男が話しかけてきました。車内には、運転席と助手席と2名いました。

「さっき新道で声かけたのに聞こえなかったの?」

「もう帰る?ちょっと遊びに行こうよ」

私は「明日朝が早いからもう帰らなきゃいけないんです」と伝えると、

「ちゃんと送るから大丈夫」

「1時間だけ」

「なんでダメなの?俺ら怖くないでしょ」

と言ってきました。

私は怖くて、もう逃げられないと絶望しました。

せめて車に書かれている店名と、男の顔をきちんと記憶しようと思いました。

男の顔、顔、…あれ??見覚えがある!

「Tだよね?北栄中のTでしょ?私北栄中の菅原だよ」

運転席の男は、そう、中学の時の同級生でした。

男は表情を変えました。

助手席の男が興味深そうに「え?知り合い??誰だれー?」

「あっ、そっちはHじゃん!久しぶり」

助手席の男の顔も見覚えがあり、確か同じクラスではなかったはずなのに、驚くことに名前が記憶の底から出てきました。

運転手の男は、恐怖を顔に浮かべ、こう叫びました。

「こいつ、めちゃくちゃ勉強ができて、北高に行って、確か今北大に行ってるんだよ、、、、逃げろーー!!!!」

そして、ワゴンは一目散に逃げていきました。

私は心から安心しました。そして、少しだけ傷つきました。

40代になった今の私ならわかります、そんなことに傷付かなくてもいいし、夜遅くに女性を怖がらせるような行為は絶対に許されないし、自分の努力や恵まれた環境で得られたことを堂々と正しく活用すべきだし、一方でまだまだ学歴がアドバンテージになることがあり社会には格差がある、ということを。

何もなかったらから笑い話ですが、ホントにあの時の2人の恐怖の顔を思い出すと漫画みたいで笑えます、今は。

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