野球部と応援部のいいところ満載だった8回裏・対立教3回戦
今日、私は休暇をとっていました。
私の仕事は2~3月と7~8月、12月が繁忙期で、それ以外の時期に休暇をとっています。
今日は、箱根に行く予定でした。
箱根の国道1号線最高点(箱根駅伝の5区6区で通りますね)の付近にある、いつもお世話になっているホテルに行って、高地でまだ咲いている桜を見て、白濁した硫黄の温泉に浸かり、かまぼこと魚料理に舌鼓を打つという計画でした。
しかし昨日、対立教3回戦が発生しました…
温泉と神宮、どっちを取るのかと言われたら、それは間違いなく神宮です。
(ホテルのみなさんごめんなさい)
私は朝から神宮に行く支度をしていました。
私の家から明治神宮をお参りして神宮球場まで、全部歩いて1時間くらいで着くので午前10時前に家を出たのですが、出てわりとすぐに、先に学生さんに会いたいと急に思いました。
そこで進路を変えて地下鉄大江戸線に乗り、国立競技場駅で降り、10時半前には球場に着きました。
もう学生さんが来ています。昨日負けたので、どんな感じか少し心配していましたが、みんな吹っ切れていて、頼もしい限りでした。ここで何人かと話せて、よかったです。
たぶんこの心配を自分の中で解消したかったので、学生さんに会いたいと思ったのだと思います。
安心した私は明治神宮に向かいました。
ふだん明治神宮→球場はよくあるのですが、球場→明治神宮は去年秋の早慶1回戦などでしかやったことがありません。
「そういえば、去年秋の早慶1回戦は9回表に2点取られて負けそうになったけど、9回裏に2点とって逆転サヨナラ勝ちしたなあ」
「今日もそんなゲームになるといいな」
そんなことを思いながら明治神宮で「今日は勝てますように」とお願いし、午前11時半過ぎに球場に戻ってきました。
ここでまた何人かの学生さんと話をしました。
みんないろんなことを考えて、部活に向かい合っています。
今日も含めて、今回の3日間の対立教戦でよかったのは「ずっと『この学生さんのいいところを言いたいな』と思っていた学生さんと話ができた」ということです。今日もそうでした。
まだ上記を果たせていない学生さんは何人もいますので、次週以降楽しみにしています。
そして同時に、学生さんがいろいろなことを抱えながら神宮で頑張っていることを知りました。いろいろなことを抱えながら、悩みながら、でも一生懸命取り組んでいる学生さんのことを尊敬しますし、いっそう応援したくなりました。
そして試合前です。
私は月曜日の神宮が大好きです。というのも、少数精鋭でみんな熱いですし、大人の目が少ないので思い切ったことができます。やや治外法権になる指揮台も魅力的です。
さて、試合が始まります。
今日のテーマは「すぐりし精鋭」と場内当番のリーダーが掲げました。私が上記した通りで、なんだかうれしくなりました。
そして「裏テーマがある」として「敵を知る」ということが掲げられ、立教のある池袋のビックカメラのCMソングの替え歌や池袋でバイトをしていてお客さんに聞かれたことベスト3など、いろんな話をしてくれました。
ネタを持っているということはいいことです。特に今日みたいに平日で前の方にしかお客さんがいないときはみんな場内当番の声が聞こえるのでとても有効です。準備は大変だったかもしれませんが、一生懸命でいいチャレンジだったと思います。次も期待しています。
2回表。
少数精鋭の楽団が守備中応援で客席内に動き出しました。ここまでは昨日と同じだったのですが、いいなと思ったのが、アウトが取れてナイスプレーコールになったときです。
ハリセンを持って客席の中にいた楽団部員が近くにいたチアと一緒に、観客に向かってナイスプレーコールへの同調を促しました。
守備中応援で楽団とチアがコラボ。素晴らしい光景でした。これも今年の応援部の目標の三位一体の一つだと思いました。
3回表。
今日はチアもすぐりし精鋭で、2~3年生が少ない布陣でした。このため、普段2年生が持つ選手名パネルや歌詞パネルを4年生が持ったのですが、対応が早い早い。さすが4年生と思いました。
このように「年次が上になってから、年次が下の仕事をやってみる」というのは意外にも重要なことで、私も会社でたまに10年くらい下の人の仕事をあえてやらせてもらうことがあるのですが、ここで新しい発見をすることが間々あります。
また、年末の大きな音楽番組でも、役員クラスが、普段なら20年くらい下の人がやる仕事をやっていることがあります。
そこで聞くのは「大事な舞台や、少数精鋭の舞台になったら、年下の仕事をやってみて、そこで発見したり、あるいは年下の人にそれを見てもらって学んでもらうのが有効」「伝統はそうやってつないでいくもの」という話です。
たぶん、今日来ていた2年生も4年生の仕事ぶりを見て勉強になったのではないかと思います。神宮は人の所作を見て学ぶことが特に多い場所ですので素晴らしい手本だったと思います。
4回表。
今日はバクセンの声が下にいる私までよく届きました。もちろんそれは平日でお客さんが少ないということもあるのですが、バクセンのリーダーが意識して大きな声を出しているのもよくわかりました。「ここで抑えろ」のハエタタキを一番上でぶんぶん振っていたのも印象的でした。
そして、バクセンのところにいるチアも一生懸命でした。2人で助け合って進行していたのもよかったです。
それに、客席の最上段で見たことは、学年が上がって下に降りてきたときにきっと役に立つと思います。平日に下級生の頑張りを見られて、私はとてもうれしかったです。
さらにこの回印象に残ったのは、楽団部員が「1発目からよい音で」というクリアブックを抱えて見せていたことです。
別の機会に書きますが、1発目からよい音を出せると、大きな試合の時に特に効果があります。
去年秋の早慶2回戦では慶応に逆にこれを存分にやられてしまい、そこから一気に慶応に流れを持っていかれ、ついには優勝まで持っていかれてしまったので、すごくいい取り組みだと思いました。
4回裏。
15時05分開始の4限が迫ってきました。ここで退出する部員が何人かいましたが、残った部員が一生懸命カバーしていたのが良かったと思います。
5回表。
バンド演奏です。3回戦を表す「3」と早稲田と勝利を表す「W」のポンポン文字がきれいに決まって良かったと思います。
また、3日目にして改めて思いましたし、試合後にも言ったのですが、今回のバンド演奏はいろいろハードルの高い部分があって大変だと思います。と同時に、よくチャレンジしていると思います。このチャレンジできるところが、令和6年度の強味になりつつあると思いました。
で、この回は残念ながら立教にタイムリーツーベースが出て早稲田は同点に追いつかれてしまいます。このとき、強い打者追い風だったので、立教は風も味方にしていました。
となると、今日は立教のものか…と私は思い始めました。
と同時に私は、自分が大学3年の春に、立教に1勝2敗で勝ち点を落として、明治や法政や慶応には勝ち点を挙げたのに優勝を逃したことなどを思い出してしまいました。
しかし、今回は違ったのです。
8回裏。
主将が指揮台に上がり「この3日間、楽しかった」と言いました。
私もこの3日間、10人以上の応援部員と話をしましたが、多くの部員から「楽しい」という話を聞きました。
うわ、一致している。早稲田の応援部は楽しめている。すごいと思いました。
「楽しめるに勝る武器は無い」と言います。早稲田の応援部はすごい武器を持っている。そう思いました。
そして「9回裏は無い」という言葉を2回繰り返しました。自信に満ちた学生注目でした。
(実際そうなったのですごい)
すると、この回先頭の尾瀬が鋭い打球をライトに放ち、ヒットで出塁しました。ノーアウト1塁。
ここで打席は山縣。
同点の8回裏なので、ここは当然送りバントだろうと私は思っていましたが、立教のショートがスルスルっと2塁ベースに向かうのが見えました。1塁ランナーの尾瀬の盗塁警戒です。
すると、そこで投球されたボールを山縣は見事に三遊間にはじき返しました。
尾瀬の盗塁警戒でショートが抜け、三遊間はガラ空きになってしまっていました。
おそらく、それを見た山縣が「ここに叩きつければ全部ヒット」ととっさに気づいて、打ったのだと思います。
素晴らしい判断でした。
昨日も申し上げましたが、
早稲田は「何か困ったときに工夫して状況を打開する」ということができる学校です。
これができるから、世の中に出ても評価されています。
これでノーアウト1塁3塁になりました。
ここで応援席はコンバットマーチを当然選択します。言うまでもなくF1がかかりました。
そして楽団がザッと立ち上がったのですが…ここからの音色が素晴らしかった。おそらくこの3日間で一番のF1だったと思います。
一部の楽団部員には話しましたが、たぶん、3日間で「今年の神宮の応援席でのF1」が部員の中にも染みてきて、なじんできたのだと思います。
F1もF4も、そして並居る応援歌・応援曲もそうですが、演奏するメンバーによって毎年違います。別の曲かと思うくらい違うこともあります。
なので、春のリーグ戦から少しずつ「その年のF1」を作っていくわけですが、そこには楽団の中でのなじみ、そして聞くお客さんのなじみ、応援されている選手たちのなじみがあって、そこを早くなじめるように丁寧かつ迅速に進めていくのが大変なところだと私は思っています。
その「なじみ」が3試合目で出てきたような気がするのです。これは単なる私見かもしれませんので世論の判断を待ちたいと思いますが、少なくとも今日の私には印象的なF1でした。
さらに、そのあとの楽団の動きも格好良かった。部員が一回り大きく見えました。
ちょうどそのころ、日本青年館の少し上に傾き気味の太陽があって、一塁側の早稲田の応援部員の楽器を優しく照らしていました。
「うわ、いい風景」
リーダーの鋭い所を突いた学注、野球部の工夫した攻撃、楽団の「なじむ」演奏。そしてここにチアの突きもうまく入っていました。さらにリーダーが複数加わり、指揮台をしっかり踏みしめた音が聞こえました。
野球の試合の終盤の攻撃なのに、私は映画を見ているようでした。
「もうこれって点が入るしかないでしょ」
そう思っていると、吉納が大きな犠牲フライ。早稲田に勝ち越し点が入りました。
待ちに待った得点紺碧です。
するとこのとき、たまたま近くにいたチアが私の隣に来て、一緒に得点紺碧を歌ってくれました。
ここまでは、たまにある話です。
しかし、次の打者の印出がすぐさま追加点となるタイムリーを打ってからが稀な展開でした。
チアが素晴らしい声で「早稲田に流れが来てるよ!」と叫びました。
私は思わず「そうだー!」と言ってしまいました。
このやりとりに私は感動してしまいました。
このチアは得点時に偶然近くにいただけなのでこのやり取りは当然想定されていないものです。
しかし得点紺碧中にさらに点が入るというボルテージが爆上がりするシーンになって、思いがけず攻撃中にチアと個別会話みたいになり、その偶然がすごくうれしく感じられました。
神宮は偶然が素晴らしい場所です。その偶然を目の当たりにしました。
しかも、このチアの声がとても素晴らしかった。私は昔アナウンサーをしていましたが、私はもちろん、ほかのアナウンサーでもあまりできない「心に響く声」で「早稲田に流れが来てるよ!」を言ってくれて、感動しました。
「早稲田って、本当に才能のある人が多い」と思いながら、得点紺碧に続くミニ校歌も歌いました。
さらにすごかったのは、この言葉のあと、石郷岡のスリーベースで決定的な3点が追加されたことです。
石郷岡は前の打者が凡退して、このまま攻撃が終わると2点差で最終回の立教の攻撃を迎えないといけない場面だったのですが、そこでセンターオーバーの素晴らしいタイムリー。仲間の凡退を帳消しにしてくれました。
この攻撃は勢いもあったのですが、「早稲田に流れが来てるよ」とチアが言ってくれたことでその勢いがさらに増したような気がします。
昨日の場内当番が「言霊」という話をしていましたが、やっばり言葉には目に見えない力があって、クヨクヨしたことを言う人のところにはクヨクヨした結果しか近づきません。一方、力強い言葉を発する人のところには力強い結果が近づくチャンスが来ます。
「早稲田に流れが来てるよ」は、まさに力強い、流れを大きくたぐり寄せる言葉でした。言葉を力にできる早稲田のチアはすごい、と思いました。
試合はそのまま早稲田が7対1で勝ちました。
よかったです。
8回裏にいいところが満載されていました。
野球部の山縣が立教の守備のスキを一瞬で見抜いてチャンスを大幅拡大したこと。石郷岡が流れが止まりそうな場面で流れを決定的にするスリーベースを打てたこと。「苦しいときに工夫して打開する」「誰かのうまくいかなかったところを別の誰かがカバーしてチームを回す」という早稲田のミッションができたこと。
応援部の各パートのいいところが百花繚乱のように随所に出たこと。
ドラマのような8回裏でした。
早稲田の野球部、応援部のみなさん、この3日間本当におつかれさまでした。
この対立教戦での粘り強い戦いができれば、対明治戦でも勝つチャンスが次々めぐってくると思います。
あ、箱根ですか…5月に延期します。
来週の土曜日、楽しみにしています。
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