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早慶戦はなぜ特別なのか

以前、ある他大の出身の方から「早稲田と慶応は早慶戦のことしか考えていない」と言われたことがあります。


そんなことはありません。


ほかの大学にも勝たないと優勝できないので、ほかの大学との対戦も大事に考えています。

しかし「早慶戦が特別である」のは事実です。

なぜ特別なのか。私は3つの理由があると考えています。


①日本の野球文化の源流のカードだから

東京六大学野球連盟のホームページにも書かれていますが、連盟は「早稲田と慶応が試合→明治加入→法政加入→立教加入→東大加入」という経緯をたどっています。

また、早慶が試合を始めたことで、野球の対抗戦という概念が広がり、やがてリーグ戦やほかのカテゴリーの野球の発展へとつながっていきました。

さらに、組織的に応援するという文化も早慶戦から始まり、日本のみならずアジアなど海外にも影響を与えています。

その源流であるため特別扱いがされ、天皇杯の下賜にもつながっています。


②野球そのものだけではなく周辺が盛り上がって野球の試合だけにとどまらない影響力があるから

早稲田と慶応には、卒業しても母校が気になるという人がとても多くいます。

さらにその気になるレベルが他の学校よりも高く、気になったら行動に移すという人が多くいます。

今年夏の甲子園の決勝で、慶応高校の応援が話題になりましたが、あれは「慶応が気になる」「気になるレベルが高い」「行かなきゃ」「応援するぞ」という人がたくさん集まった結果です。

知らない人からすると、見たことのない雰囲気です。

このため、今までの甲子園の決勝の後にはなかったような、いろいろな意見が出てきました。

野球そのものだけではなく、応援という周辺が盛り上がって影響を及ぼす力が早慶にはあります。


しかも影響力のある人が他大学よりも多いのが特徴です。

明治時代から、早稲田は政界、慶応は財界を中心に大きな力を持ってきました。

今でも各界における早稲田と慶応の総合的な影響力は、他の大学とは一線を画するものがあります。人脈の力が抜群なのです。こんなところにも…と驚くことがあります。

そのすみずみまで影響力のある人たちが気にするので、自然といろいろな物事が動きます。野球だけにとどまりません。その意味でも早慶戦は特別です。


③早慶戦は東京六大学野球の稼ぎ頭だから

実はこれが「早慶戦は特別」のかなり大きな理由です。東京六大学野球は早慶戦の収入が欠かせない構造になっています。

早慶戦には年間10万人以上が入るため、ここで得る収入は他のカードの何倍にもなります。

例えば他カードの平日の3回戦で1500人しか入らない試合がありますが、こうした試合がいくつかあっても、早慶戦さえあれば収支で困ることはありません。

たまに「早慶戦を特別扱いするのはどうなのか」という意見がありますが、日程をトリにして1日1カードにするのがリーグとして最も収入が期待でき、それがリーグの運営を安定的に続ける上で欠かせないため、早慶戦を特別扱いするのがリーグとして最も理にかなっているのです。

昔、ここに風穴を開けようとしたことがありました。

30年前の平成5年秋に、明治を中心にした日程が組まれ、早慶戦だけでなく「明治対法政」「明治対早稲田」も1日1カードで組んだことがありました。

ゆくゆくは「明治対慶応」も加えた4カードを目玉カードとするという試みだったようです。

ただ、この試みは、早慶戦ほどの集客が続かないことがわかったなどの理由のため、1シーズンでとりやめになりました。それから30年、コロナ禍で1回戦総当たりとなった令和2年春を除いて、早慶戦がトリから外れたことはありません。


全くの仮定の話ですが、将来もし、東京六大学に早慶戦を上回る集客力を持つカードが現れたら、早慶戦は特別でなくなる可能性があります。そのカードを特別扱いした方が東京六大学野球のリーグ運営のためになるからです。

今のところその気配は全くないのですが、将来にわたって早慶戦を特別なものとして維持するためには、毎回の早慶戦にたくさんの人が集まり、熱心に応援をして早慶戦ではない雰囲気を作ることが重要です。

早慶戦が特別であるのは、過去の経緯だけでなく、現在のいろいろな人のたゆみない努力によって支えられています。

この秋の早慶戦は大変幸いなことに「勝ち点を挙げた方が優勝」というこれ以上ない舞台になることになりました。

この好機にいい試合といい応援をして「早慶戦はやっぱりすごい」「早慶戦は特別だ」という雰囲気がさらに生まれればと思います。


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