見出し画像

«分析»CL決勝の前哨戦?? 戦術的には違うかもね [前半]

 こんにちは。Atsudです。今回はプレミアリーグ第35節マンチェスター シティ vs チェルシーの一戦を分析します。
 この試合はなんといっても今シーズンのCL決勝と同じ対戦カードです。前哨戦との声も多く見られましたが、CLとは違ってプレミアリーグではお互いの目指しているものが同じではないですしCL決勝は3週間後の話なので、結果から言うと戦術的には決勝のプレマッチにはならなかったと思います
 とはいっても、CLファイナリスト同士の戦いですからとても楽しみで、興味深い試合にだったことは間違いありません。
 では分析をどうぞ。

 

 両チームにとって非常に大きな意味を持つ一戦はチェルシーが敵地でCL決勝の対戦相手を逆転勝ちで沈めた試合となった。トゥヘル率いるブルーズはシティ相手に連勝を飾った。では、トゥヘルがどのようにして親友ペップを苦しめたのかを解明していきたい。 

ラインナップ(スタメン)

Manchester City Chelsea live score, video stream and H2H results - SofaScore および他 5 ページ - 個人 - Microsoft​ Edge 2021_05_09 4_07_12

 両指揮官がこの試合に向けて用意したラインナップがこれだ。両チームともミッドウィークにメガクラブとの激戦を戦ってきたために、大幅にメンバーが変わっていることが分かる。シティは3-1-4-2で注目すべき点は2列目の中央に座るスターリングとトーレスだ。シティの攻撃において重要なビルドアップでこの2人の関与は欠かせない。普段はデブライネやギュンドアン、フォーデンが務める繋ぎの役割にアタッカーの2人がどれだけコミットできるかは注目すべき点である。
 一方でチェルシーは3-4-3で、マウントやジョルジーニョ、ハフェルツといった主力はお休みとなった。前回対戦のFA杯準決勝で決勝点を決めたシーエシュがマウントに代わってスタメンに名を連ねた。

シティのビルドアップ局面における攻防:スターリング

 シティ戦を迎えるチームにとって何より重要な局面がシティのビルドアップ局面だ。なぜなら、ここでシティに前進されてポゼッションの形に入られると、負のスパイラルから抜け出せずに保持されるがままになってしまうからだ。そこでチェルシーは下の図のような守備システムを実行した。基本はマンツーマンだ。この形は多少機能していた。シティは下のような最も一般的な形のビルドアップからなかなか前進することができていなかった。

「プレミアリーグ 第35節」マンチェスター・シティ vs チェルシー フル動画 _ サッカー動画フル視聴 および他 4 ページ - 個人 - Microsoft​ Edge 2021_05_09 22_32_14

 1つ問題があるとするのならスターリングに対するマークだろう。この試合を通してスターリングがフリーになることでシティがチェルシーゴールに襲い掛かることは多く見られた。スターリングについては担当者がはっきりしていなかった。下の図でもハーフスペースでフリーになったスターリングがボールを受け、そのままドリブルでバイタルエリアに侵入した。

「プレミアリーグ 第35節」マンチェスター・シティ vs チェルシー フル動画 _ サッカー動画フル視聴 および他 4 ページ - 個人 - Microsoft​ Edge 2021_05_09 22_27_50

 下の場面でもスターリングが機能している。ここはロドリに対するマークが甘くなったことから始まった。スターリングの巧みな位置取りからアケ→ロドリ→スターリング→ジェズスと簡単にボールが繋がった。

「プレミアリーグ 第35節」マンチェスター・シティ vs チェルシー フル動画 _ サッカー動画フル視聴 および他 4 ページ - 個人 - Microsoft​ Edge 2021_05_10 0_14_59

  このようにスターリングのところは両チームにとってカギになっていた。理想としてはカンテがスターリングをマークすることだったと思う。しかし、上に挙げた3つの画像でカンテがスターリングに付いていることを想定してみて欲しい。中央のスペースにチェルシーの選手がいなくなり、シティはより簡単に攻めることができていただろう。カンテにはスターリングのマーキングor中央のスペースを埋めるという2つの選択肢があった。カンテはより良い選択をしたと言えるだろう。
 例はここまでにしておくが9:05のシーンや15:40のシーンもスターリングが大きく絡んだプレーだった。

シティのビルドアップ局面における攻防:戦術的ではない場面

 先ほど「一般的なビルドアップからの前進はできなかった」と書いたが、シティは序盤から前進には成功していた。整理されていない局面からの前進は簡単にやってのけている。
 下の図はスローイングから前進した場面だ。チェルシーの守備が画面手前に偏ったことでシティの左サイドがガラ空きになった。ロドリの素晴らしい身のこなしもあり、チェルシーのバイタルまで侵入することに成功している。

「プレミアリーグ 第35節」マンチェスター・シティ vs チェルシー フル動画 _ サッカー動画フル視聴 および他 4 ページ - 個人 - Microsoft​ Edge 2021_05_09 22_56_06

シティのビルドアップ局面における攻防:シティの打開策

 シティは繋ぐやり方を半ば諦めていたのではないかと予想する。トゥヘルの策ははまっていたし、スターリングのところもそう簡単に使える手ではなかった。そこで、この絵を見て欲しい。

「プレミアリーグ 第35節」マンチェスター・シティ vs チェルシー フル動画 _ サッカー動画フル視聴 および他 4 ページ - 個人 - Microsoft​ Edge 2021_05_09 22_32_41

 トーレスに対してリュディガーががっつりマーキングしている。リュディガーは3バックの一角であるにもかかわらず、IHのトーレスに常にマンツーマンでマークし、警戒していた。トーレスがどこまで下がってもリュディガーが引っ付いていく様は印象的ですらあった。シティがここを上手く使ってチャンスをつかんだのが下のシーンだ。キーとなったのはジェズスのスライドである。リュディガーが前に出て行くことによって右サイドの奥に広大なスペースが広がることになる。そこに、クリステンセンにマーキングされてはいるが、ジェズスがスライドしロングボールを受けることでシティの重心は一気に押しあがった。

「プレミアリーグ 第35節」マンチェスター・シティ vs チェルシー フル動画 _ サッカー動画フル視聴 および他 4 ページ - 個人 - Microsoft​ Edge 2021_05_09 22_31_11

 このシーンの他にも19:15で同じようにスライドするジェズスから一気に前進するシティが見られた。

トゥヘルが見せた適応力

 このようにチェルシーはシティを苦しめてはいたが完璧ではなかった。そこで、完璧主義者トゥヘルは守備に更なる磨きをかける。

「プレミアリーグ 第35節」マンチェスター・シティ vs チェルシー フル動画 _ サッカー動画フル視聴 および他 4 ページ - 個人 - Microsoft​ Edge 2021_05_10 1_17_26

 リュディガーを最終ラインに戻し、トーレスにはギルモア、ロドリにヴェルナーをあてることでカンテは中央のゾーンを気にせずにスターリングに注目することができた。チームとしてもジェズスのスライドによる前進を防ぐことにもつながっている。この対応はすごいなと正直に思った。

トゥヘルが修正したのになぜ失点してしまったのか

 ここまで文章を読むと、前半の終盤は完璧に守っていたチェルシーが何で失点したのか、疑問でしかないだろう。
 失点シーンを見たらわかるが、また「ジェズスのスライドによる前進」を許してしまったことが原因だ。リュディガーがトーレスを意識して前に出てきたことでジェズスのランコースが空いてしまった。トーレスに関してはギルモアがマークしているのにも関わらず、である。これはリュディガーが招いてしまった失点と言っても良いだろう。トゥヘルの修正を上手く実行できなかったことになる。少しのミスがこのように失点に繋がってしまう、、サッカーとは何とも怖い競技だと痛感させられるシーンだった。

「プレミアリーグ 第35節」マンチェスター・シティ vs チェルシー フル動画 _ サッカー動画フル視聴 - 個人 - Microsoft​ Edge 2021_05_10 2_05_32


ロドリをめぐる攻防

 この章ではシティの守備について分析していこうと思う。ワンボランチで守っていたロドリのゾーンは、シティにとって重要な課題だっただろう。スタメンで両IHがアタッカーであることもあり、守備時に2列目におけるロドリの負担は大きかった。
 そしてこのロドリを上手く利用する攻撃を仕掛けたのがトゥヘルであり、カンテであった。どういうことかというと、シティに対して2つの攻撃を畳みかけたということだ。1つ目はロドリの両ワキのスペースだ。

「プレミアリーグ 第35節」マンチェスター・シティ vs チェルシー フル動画 _ サッカー動画フル視聴 および他 4 ページ - 個人 - Microsoft​ Edge 2021_05_10 0_53_06

 上の図にもあるようにロドリの両ワキには広大なスペースが存在していた。主にプリシッチとシーエシュがこのスペースでボールを受け、ボールを循環させていた。しかし、ここまではシティも想定内だったようだ。上の図でもクリステンセンがプリシッチにパスを出すタイミングで最終ラインの構成メンバーであるアケが素早く詰めに行っている。このようにロドリの両ワキのスペースに関する課題は、失点に直結しない程度に、十分なレベルでクリアしていたように思う。
 では2つ目の攻撃手法について考えたい。ここはカンテの頭脳プレーが輝いていた。そのプレーは上の図と同じシーンで起きている。

「プレミアリーグ 第35節」マンチェスター・シティ vs チェルシー フル動画 _ サッカー動画フル視聴 および他 4 ページ - 個人 - Microsoft​ Edge 2021_05_10 0_53_22

 カンテのダイアゴナルなオフザボールだ。カンテに引き付けられたロドリはバイタルエリアから離れてしまう。しかし、メンバー的にもロドリの守っていたゾーンをカバーできる人間がいない。これによってバイタルエリアがガッポリ空いてしまっているのだ。更にシティの最終ラインではチェルシーのFWたちがDFをがっつり捕まえているために、このバイタルに対するケアが十分にできなかった
 結果的にシティは大ピンチ、チェルシーは大チャンスを迎えることになった。

「プレミアリーグ 第35節」マンチェスター・シティ vs チェルシー フル動画 _ サッカー動画フル視聴 および他 5 ページ - 個人 - Microsoft​ Edge 2021_05_10 18_08_50

 

まとめ

 前半からチェルシーはシティと互角かそれ以上に優位性を保っていたと思う。戦術的には明らかにチェルシーの方が優れていた。まとめると

シティのビルドアップ 
 ①マンツーマンで守るチェルシー。システム上スターリングがフリーで受けてしまう(カンテが苦しんだ)が基本はシティに前進を許さなかった
 ②シティは対策としてジェズスがスライドしたところにロングボールを蹴りこんでポゼッションの局面に持ち込む
 ③スターリング、ジェズス問題をマークの担当を変更させることで解消
 ④だが、リュディガーのミスで失点を許す
シティの守備
 ①ワンボランチのロドリの両ワキに関して、しっかり狙う姿勢を見せるチェルシーと、対応したシティ
 ②カンテの頭脳プレーから、ロドリが引き付けられバイタルエリアがガラ空きになり、大チャンスを迎えた

といった要領だ。

 ただ、結果は1-0でシティが1点リードしてハーフタイムを迎えることになった。後半はどのような展望になったか、どのようにしてチェルシーは逆転勝ちを収めたのかを、次回深掘りしていきたい。


あとがき

 どうでしたか?久々の作文にとても苦労しました。自分の中ではよくできた分析だと満足しています。ペップvsトゥヘルの戦術的攻防はたまらなく面白いですね!! 分かりづらいところもあったと思いますが、聞きたいことがあれば僕のTwitter(@Atsudfut)のDMかここのコメント欄に書いてくださると嬉しいです。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?