トンデモ学

トンデモ学というジャンルについて。これは俗にいう「いんぼー論」に近いのだが、ユダヤ陰謀論やイルミナティの陰謀だのフリーめーそんの流しそうめんパーティーに比べると「本気度」がやや薄い。で、ありながら、根拠のないヒト型爬虫類の人類支配や銀河惑星連邦とかアセンションとかとは一線を画す。よーするに、SF冒険風反教科書的リアル歴史観とでもゆーべき実に妖しい学問ではある。しかしながら本気度が薄いというのは、輪郭を描くのに一発で線を決めないという画家の真面目さにも似た正しさへのアプローチでもある。現在、この学問を研究している人に「atsuchan69」という人がいるが、作家の塩野七生さんと比べると月とスッポンどころかダイヤモンドと鼻くそほどの知性と教養の差がある。彼が唱えているのは、太古から世界を支配しているのはスペクターであり、007シリーズを書いたイアン・フレミング自身もスペクターのメンバーであったというもので、なるほどトンデモである。ただ彼がゆーところのスペクターは「海の民」の別称であり、聖書を編纂し、実体のないユダヤ民族を創作したのが他でもない彼ら海の民であるというものだ。彼がそのことについて閃いたのは、旧約聖書の「サムソンとデリラ」が登場する件とアナトール・フランスが書いた短編小説「バルタザアル」を読んでからであり、彼はローマ帝国がキリスト教化され、その後ヴェネチュアを拠点に金融とカトリックが世界を支配してゆく過程を実際にイタリアまで行ってローケーションと街全体に漂うある秘密の匂いによって感じるという彼独自の検証までしている。今後の研究成果が気になる学問ではある。


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