【ヒロアカ"Hero too"】選ばなかった道が目指す夢に繋がった瞬間だった
3/21に放送したアニメ「僕のヒーローアカデミア」4期、待ちに待った文化祭1-Aステージで歌われた「Hero too」が最高だったので、溢れそうな熱を持ってるうちにと記事を書くことにしました。
基本的に歌詞を追いながら感想をまとめていきます。かぎかっこでくくってるのは日本語字幕ではなく英語歌詞の自分によるざっくり和訳ですので、ご承知おきください。
日本語字幕では「わたし」が使われていたのですが、この記事の中では一人称はとりあえず「僕」にしてます、タイトルが「僕のヒーローアカデミア」だし……あとやっぱり語感がいいので。
まずは冒頭、かっちゃんの「音で殺るぞ!!」から始まり、「よろしくおねがいしまァス!!!」が原作通りで最高。
4期のPVは「よろしくおねがいしまァス!」が弱いかな? と思ってましたがそんなことは全然なかったです。
「自分は何になる? 自分は何に向いてる?」
「諦めることは諦めた 進む準備はできてる」
「未来はまだ見えないまま すべて自分次第」
という成長過程でこれからの可能性たっぷりの前向きな始まりから、put it on the line to follow my dreamはまだ解釈しきれてないんですが「叶えたい夢に懸けて」か「夢を追うために宣言する」かなあ。
でもここで一番注目してしまうのは指をさしながら前をスッと見つめる耳郎ちゃんの表情で、ここ何度見ても好きです。
「これまでずっとやろうとしてきた 見つけようしてきたんだ」
「自分を掴んで離さない何かを」
から、耳郎ちゃんのいい声からの「僕だってヒーロー」のサビに入り、
「心は決まってる もう戻らないよ」
「強さがヒーローたらしめるんじゃない」
と、ここでA組全員が映されるのも、すごくいい。
それぞれにヒーローを目指す理由(自分を掴んで離さない何か)があって実際なろうとしている全員に当てはまる歌詞なので。
「心は決まってる(My heart is set)」の訳は少し迷いましたが、set、「位置について、用意」の「用意」にあたるので、心の準備はできてる、的なニュアンスも汲み取れるとは思います。「進む準備はできてる(ready to go)」があるので、こちらで訳しました。
そしてサビの締めの、
「本当のヒーローは自分が信じるもののために立ち上がる」
「だから待ってて」
でデクが登場するのもいいですよね。。。
ここで一番初めの演出見せ場の青山くんを持ってくるのも分かる。
そして2番に入り、
「自分はどう思われてる?」「自分は何になるって思われてる?」
「どうでもいいし知りたくもない」
「自分はちゃんとやれてる?」「自分は満足してる?」
「そうなる運命だったみたいに自分の人生を生きてゆきたい」
と、目指している真っ最中の揺らぎと覚悟が歌われながら、サビまでA組のメンバー個人個人にスポットを当てるようなカットが続きます。
ちなみに冒頭の「自分は何に向いてる?」(What is my calling?)の"my calling"は「天職・使命」という訳が多いようなので、そうなる運命だったみたいに生きてゆきたい、という歌詞と通ずるなと思っています(日本語字幕を参考にできる部分だったので「何に向いてる?」と訳しましたが)。
自分が一番目指したいものは何だろう、自分が一番叶えられるものは何だろう、それがやがて天職や使命、運命だったって言われるような選択をしていきたい、という歌詞の、何というか、発展途上のどうしようもない感じ。
それを、積み重ねてきた音楽ではなくヒーローを目指す、とその積み重ねを与えてくれた両親に涙目で告げた耳郎ちゃんが歌うことの切実さ!
そこから2番の歌詞を引き継ぐようなCメロ(Cメロ?)で、周りに構わず自分の道を行くことの改めての宣言。
「全く理由もなく人は判断するし」
「君の夢なんてって言おうとしてるのかも… 耳を貸すな」
「見下されて鼻で笑われるかもしれないけど」
「自分自身の道を進むよ」
アニメーションは耳郎ちゃんを中心とした準備期間が映り、そして同じフレーズを繰り返したあとに、
「僕はヒーローで 僕には音楽がある」
と続くことの、この曲の強さ!
静かなサビで耳郎ちゃんの声が響きわたりますが、放送されたアニメの方ではCメロとこのサビの間に両親と耳郎ちゃんの回想が挟まってるのもずるい。
と背中を押された耳郎ちゃんが、「I'm a hero, I've got music」と歌い、
「なるんだ!!!(I'll be !!!)」と叫ぶことが、もう胸アツすぎてどうしようもない。
「ヒーローさ 僕だってヒーロー」
「心は決まってる もう戻らないよ」
「強さがヒーローたらしめるんじゃない」
「本当のヒーローは自分が信じるもののために立ち上がる」
「だから待ってて」
耳郎ちゃんはかつて音楽の道を選ばないと決めてヒーローを目指すことにして、だけどヒーロー科の一員としてもう一度音楽を届ける側に回り、エリちゃんを笑顔にする一人になるんですよね。
選ばなかった道だけど、迷うくらい積み重ねてきた音楽が、目指す夢としてのヒーローに繋がるのが……!
そしてアニメの方ではミリオの台詞と重なっていたところの歌詞の、MVでの演出があまりにもずるい。
「これまでの人生、たくさんのヒーローに出会ってきた」
「生き抜くための強さと勇気をくれた」
「毎日の笑顔でいられるための力をくれた」
ここでエリちゃんを救ったナイトアイ、ミリオ、デクが映されて、そして最後に、
「今度は僕の番だ、君たちを笑顔にする一人になる」
という耳郎ちゃんの歌声が、アニメでも響いてこの曲は終わります。
「今度は私の番」とエリちゃんに笑顔を与えた一人になったヒーロー・イヤホン=ジャック、彼女が「かっこよくてさ……!」と具体的に憧れたヒーローも必ずいたはずで、誰かが誰かを救うこと、笑顔にすることの連鎖が大きすぎて受け止めきれず感極まったような気持ちでした。
ここ見るときいつも感情が溢れてしまうので正しく言語化できている気もしないけれど……。
Hero tooというタイトル、もちろん発展途上のヒーロー志望としての「僕だってヒーロー」という意味で1-A全員に当てはまる曲だと思います。
だけど特に耳郎ちゃんにとっては、ヒーロー活動に根差した趣味ではないと音楽を「表立って自慢できるモンじゃないっつーか……」と言っていた耳郎ちゃんにとっては、音楽を愛する自分だってヒーローだ、と表明する曲でもあるのでは……!
「心は決まっている 後戻りはしない」
「強さがヒーローたらしめるんじゃない」
「たくさんのヒーローに生き抜く強さ、勇気、笑顔でいられるパワーをもらってきた」
「今度は自分が君たちを笑顔にする」
音楽好きな自分であるまま、ヒーローという夢に進んでいくよ、と引け目を捨てて自分自身を認められるようになった「自分だってヒーロー」。
だからこんなに、「僕はヒーローで、僕には音楽がある」という歌詞に感動してしまうのかも、とも思うのです。
エリちゃんはきっと歌詞を理解なんてしていなくて、
耳郎ちゃんもエリちゃんを笑顔にしようとしてバンドを率いて歌ったわけではなく、
でも選ばなかった方の夢を、職業として目指すわけではなくても本気でもう一度手にした耳郎ちゃんの歌声がエリちゃんに届いたそのことに、もう本当に本当にめちゃくちゃ感動しました。
何度見ても泣きそうになる、MVとアニメを繰り返し見てしまう……。
劇場版特典のインタビューで堀越先生が、ヒロアカは諦めたものにもう一度手を伸ばす再起の物語、と言っていたことに大納得して、だからこんなにこの作品が好きなんだ、と思ったものでした。
少し形は違いますが、今回のエピソードも「一度手放したものにもう一度手を伸ばす」「一度失ったものをもう一度手に入れる」場面が描かれていたなと思います。
耳郎ちゃんにもエリちゃんにもそれぞれ別の物語があって、それなのにこんな風に同じ場所でそれぞれ改めて手に入れたものがあったことが素晴らしかった……。
勝手に救われることがあるというのは音楽を巡ってたくさん起きることで、実際にこういう素晴らしいことが世の中で起きているからこそここまで説得力を感じながら感動できたと思ったりもします。
音楽の力を描いたエピソードとしても、「夢を追う」「誰かを救う」「救われる」ということを他のエピソードと変わらず一貫して描いているエピソードとしても大好きな話なのですが、アニメで実際に音楽がついたら、本当に想像以上でした。
映像になったことでエピソードに説得力が増したこと、こんな風に感動できたこと……。
アニメのあとに漫画を読んだら曲が頭の中に響いて、無限に素晴らしくなっていくような最高の物語体験でした。
引用
堀越耕平(2018)『僕のヒーローアカデミア 20』集英社
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?