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【管理会計の論点 その3】案件別損益管理やってますか?

こんにちは!
 
当コラムでは毎回、管理会計プロジェクトで論点になりそうなトピックを解説します。
 
論点というぐらいなので、選択肢は1つではありません。
どうやって答えを決めるのか?いつもお客様と一緒に悩みながら、その時にベストな解答を探しますが、ベターなやり方を選択することも多いのが実情です。
 
さて、第3回目は、「案件別損益管理」について一緒に考えていきましょう。


■なぜ案件別損益管理が重要なのか?

経営管理において、期間損益管理は重要な役割を果たしていますが、それだけでなく案件別損益管理も同様に重要です。
 
特にプロジェクトベースで仕事を行う企業にとっては、案件ごとの収益性を正確に把握することが経営判断の質を高める鍵となります。期間損益管理が事業全体の業績を把握するためのものであるのに対し、案件別損益管理は詳細な経営分析を可能にし、適切な意思決定を支援します。

■実務上のポイント

①予算(「当初見積り」)と比較しながらの進捗管理と「着地見込管理」が重要
会計は発生したことを記録していくことですが、実施した結果を「管理」するということは、少し乱暴に言ってしまいますが、何かと何かを比較して良し悪しを判断するということなんです。
 
案件別損益管理において、「当初見積り」と「着地見込み」の比較は非常に重要です。進捗状況を正確に把握し、当初予定通りに進行しているか、遅延やコスト超過が発生しているかをタイムリーに確認する必要があります。また、着地見込(完了時の予測収支)の管理も重要です。これにより、プロジェクト完了時に予想される収益や費用を早期に把握し、必要な対策を講じることができます。
 
②できるだけキャッシュフローで考える
収益と費用を把握する際には、キャッシュフローの視点も取り入れることが重要です。実際の現金の流れを管理することで、資金繰りの問題を未然に防ぐことができます。特にプロジェクトの進行中に大きな支払いが発生する場合や、収入が遅れる場合には、キャッシュフローの予測と管理が不可欠です。
 
③直接費の紐づけ方法
案件別損益管理を効果的に行うためには、直接費を正確に案件に紐づける仕組みが必要です。これには、案件ごとにコードを設定し、すべての関連費用をこのコードに集計する方法が有効です。
 
③共通費の配賦
非常に大きな論点になっていませんか?
共通費は案件を実施している側で改善できるわけでも管理できるわけでもないので配賦しない方法をおすすめします。しかし、期間損益管理と計算方法を合わせたいなどの要望があれば配賦しても良いと考えられます。ただし、共通費は年度ごとに配賦率が変わることが多く、費用の歪みが発生しやすくなりるため、配賦した共通費は、後で分離できるようにしておくことが重要です。
 
共通費を案件別損益管理に含める場合は、共通費の責任部署が適切に管理し、配賦率の設定などにおいて必要に応じて調整する仕組みを整えることが求められます​。

■まとめ

案件別損益管理は、プロジェクト型や受注製造型などの企業の収益性を高めるために欠かせない手法です。初期予算との比較やキャッシュフロー管理、直接費の正確な紐づけ、そして共通費の適切な配賦など、いくつかのポイントに注意を払うことで、より精度の高い管理が可能となります。これにより、経営の質を向上させ、競争力を強化することができるでしょう​​。
 
ところで、前回のコラムでは、「固定費」と「変動費」でしたが、今回は「直接費」と「共通費」でした。
同じ費用でも目的によってやっぱり分類が変わるんですね。
 

#管理会計 #採算管理 #プロジェクト損益管理 #プロジェクト採算管理 #案件別損益管理 #案件別採算管理 #直接費 #共通費


関連書籍:


企画:
アットストリームコンサルティング株式会社
プリンシパル/公認会計士 内山 正悟

EY新日本有限責任監査法人を経て、現在に至る


執筆:
アットストリームコンサルティング株式会社
取締役・シニアマネージングディレクター 松永 博樹

アーサーアンダーセンビジネスコンサルティング(現 プライスウォーターハウスクーパース)を経て、現在に至る。


編集:
アットストリームコンサルティング株式会社
執行役員・マネージングディレクター 伊藤 学

プライスウォーターハウスコンサルタント株式会社(現 日本IBM)、
ベリングポイント株式会社(現 PwCコンサルティング)を経て、現在に至る。