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想定外という黙殺制度について

マダムです。
台風19号が過ぎたばかりのタイミングで書いています。
小布施、飯田、長野、富岡、川越・・・
今まだ避難所にいる方々にとって、
もう未来の話を始めることが心に引っかかるようだったらごめんなさい。

ツイッターでは自分に出来ることを考える言葉が多く見られました。
地震よりも計画的に動けるはずだから、やれることはやっておこう
という考えはとても健全だと思います。

でも、個人個人が完璧に行動しようとする日本人の真面目さを、あてにし過ぎていませんか?

東京の朝の通勤電車。
2〜3分間隔の時刻表。
駅に停車してから発車するまでの時間って気にしたことがありますか?
駅に秒数を表示するカウンターがあったら見てみてください。
1分半から2分弱かかります。

ということは、2〜3分間隔で発車させるためには「乗客も」予測どおりの行動を、予測どおりの時間で行動する必要があるということです。

須藤元気さんが率いるWORLD ORDERのごとく、乗客「全員の完璧なパフォーマンス」が前提の時刻表です。

これを当たり前と思いこんでいる通勤電車の乗客が、防災制作に携わり、あるいは避難計画を作っている。

歩行者信号のカウントダウン、お年寄りには間に合わない人もいるし、点滅してからダッシュで渡る人もいる。

想定の枠内で動く人だけを前提に、東京はデザインされています。

想定外、というより、
想定に入れるとこの過密スケジュールが機能しないから想定から切り落とすしか無い、
このデザインでは、年齢の多様性も価値観の多様性も反映する余裕が無いのです。

そこで、想定外部分は個人で対応してね、と。

想定外部分がごく少数の時代はそれが政治的に正しかったと思います。
でも、もはや想定外の割合が大き過ぎやしませんか?
対応しようとする真面目な人がどんどん疲弊して脱落していっていませんか?

ここで私の脳みそは自分の仕事分野にぶっ飛んで、年功序列について思いを馳せてしまいました。

年功序列の不条理さは人事で働く人間への評価の仕方に端的に表れています。

例えば、人事労務分野では法律が毎年のように大きく改正され、新制度ができ、働き方改革と、法律に対応するための業務が次々と押し寄せてきています。担当者たちは連日残業しながら、でもすべきことの量とゴールがはっきりしている印象です。

それに引き換え人事評価制度や人材育成は、法律や制度の縛りはないけれど、
数字で効果を測定しづらく、長期的に取り組まないと結果が見えません。
何をやれば正解かもわからないどころか、何もしなくてもすぐに問題は起きないし、起きても直接の原因は特定しづらい。
つまり、関わる人の熱意と実行力によって業務量もゴールも変わってくるのです。

平たくいうと、サボってもわからないし、誰もすぐには困らない。
担当者のモチベーションを担保するものは、個人の倫理観だけです。

なのに頑張る人を評価する人事制度設計、もっと言うとサボる人は評価が下がる制度設計は、古い組織にはむずかしい。
年功序列だからです。
サボっても頑張っても同じ年齢なら給料はほとんど同じ、つまり評価が機能していないのに、個人は与えられた仕事に全力を尽くす想定になっています。

個人の高い志に支えられた仕事は、当然、属人的にならざるを得ないのに、人事異動で担当者は機械的に入れ替得られます。
有能でも自分のためだけに働く人が後任だったら、前任者の積み上げは一瞬にして崩壊します。

つまり、関わる人が誰であっても倫理観が高いという前提の制度設計です。

真面目で誠実な人ほどやるべきことは増える一方で疲弊し体を壊し、「元を取ろう」とする人ばかりが目立つようになりました。
誰もに均しくに分け合うことの不条理さは、もう目をつぶれない状態に達しています。

生産性の高い人、質の高い仕事をする人にちゃんと報いる制度を。

すでに取り組んでいる組織も多いでしょう。
では、生産性の低い人、質の低い仕事をする人を退職させることはどうでしょう?

前述のような取り組みを申している組織では、こういう人を採用しないことでリスクを避けているのではないでしょうか。
すでに意識低い系が大量に入り込んでいる大組織では追い出すのは至難の技です。
物事に真面目に取り組む人がきちんと評価され優遇される、言い換えると能力に応じて待遇を「差別する」仕組みに舵を切らないと、働かずに取れるものを取りたい人ばかりが残ることになるのがわかっているのに。

では、給料泥棒たちの首を切らずに退職するまで待つ間の調整弁として、副業を取り入れることはウィンウィンの解決策になるでしょうか?
おそらくそうではない。パンドラの箱が開くことにつながるだけでしょう。

倫理観の高い人は薄給の馬鹿らしさに耐えられても、やりがいのある仕事を与えられてそれをきちんと評価される喜びを知れば、転職する人が増えるでしょう。
残る選択をせざるを得ない人は、より仕事の質を落として、いちばんお金が稼げる時間と労力配分に突き進むでしょう。

当たり前の欲求にみんなが目覚めてしまう時代がもうそこまで来ています。

その時、その組織が
誰に、どんな「働く喜び」を提供できるのか、が問われることになるのだと思います。

ここまで読んで下さってありがとう! 働きたい主婦が能力を活かせる仕事に就ける世の中に変わっていくよう、あなたの声を聞かせてください。