TOKI RIVER 第6話
のんの場合
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
Whichever Way You Are Going,You Are Going Wrong.
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
4月某日
休日。とりあえずNetflixを開く。開いたはいいものの、あーでもない、こーでもないと時間だけが過ぎ、しばらくして朝の支度を始める。もう、数えきれないほどの選択肢に、かつてのような興奮を覚えなくなってしまった。つらい。こんなん、苦しみにお金を払ってるのと一緒では、という考えが浮かんでは消える。
映画を選び損ね、だらだらすることにも疲れてしまったわたしは、近所に千手観音像があると母から聞いたことを思い出した。川沿いの道端に佇んでいるのだと熱弁していた。行こう。退屈しのぎでも、一歩外に出てしまえば気持ちははずむ。橋を渡り、その勢いで山の麓の神社まで足を伸ばし、すっかり満開の花々を写真におさめながら、川辺に戻って千手観音を探した。
あった。たしかに、ちいさな祠の中にちいさな千手観音。祠の中の板にカタカナで真言が書かれていて、「唱えよ」とあったので、唱えた。
観音様の視界にあるベンチに座った。河川敷の桜の下で、数名の老若男女が赤ちゃんを囲んで写真を撮っている。おじさんがやってきて、お参りし、帰っていった。ランニング中の男性がわたしの前を通り過ぎるのを数えているうちに、日は傾いて、西陽に照らされた川はぬらぬらと光っている。
なんか、いい気分。あはは。
本でも読もうとかばんを開くと、そこにあったのは、狂信的なクリスチャンの母をもつ、同性愛者の娘による自伝的小説だった。読んでいると、体じゅうの穴という穴から血が吹き出そうになる話だ。なんとなく観音様のほうを見てから少しだけ続きを読んで、すぐに帰った。
(About Story)
土岐川沿いに引っ越して早3年。最近はもっぱら眺めたり、歩いたり、座ったりですが、橋の下で友達に髪を切ってもらったこともありました。（その友達は、土岐川河川敷にてシュークリームを食べようとした瞬間、鳶だかなんだかにまるごと持って行かれたことがあるらしいです。見たかったなあ。）
(Author & Selector)
のん
のんです。
乙女座Ａ型。多治見にいます。ノイで長々と立ち話をしている客がいたらわたしかもしれません。
川川川川川土川川川川川岐川川川川/||川川川川川魚川川川川川
プレイリストTOKIRIVERは土岐川にまつわるストーリーのサントラです。土岐川の普段の流れのごとく、ゆるっと更新しております。ストーリーと一緒にプレイリストをお楽しみください。プレイリストは、下記のリンクから入るとSpotifyで聴けます。読みながら聴きながら読んで聴いてヨンデキイテ…してみてください！
（オノダアツシ）
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか？