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TOKI RIVER 第10話

タナカの場合

🪑橋の灯りがあたる場所に集まって輪になっていた🪑

「最近、巷で流行っているというチェアリングを土岐川でやってみたい!!」という掛け声のもと、それぞれ自慢の椅子を用意して友人たちと集まった。
持ち寄った椅子を互いに褒め合う。
ひとしきり褒めあって満足した。
せっかく流行りのチェアリングをするならばと、近所のちょっといいスーパーで買い出しをすることに。
それぞれ好きなお酒や食べ物を買い込んで、いざチェアリング会場の土岐川へ。
日差しがまだ眩しかったので、ひとまず橋の下の日陰に集まり輪になって用意してきた椅子に腰掛けた。
買ってきた物を広げて乾杯。
チェアリングがどんなものかはよく分かっていないけれど、なんだかいつもと違うことをしているような気がしてワクワクした。
しばらくおしゃべりしながら過ごしたが、はて?これはただ川原にピクニックしにきただけなのでは?ということに気がついた。
「せっかくチェアリングしにきたのだから、ただ輪になるだけではなく、思い思いの場所で土岐川を楽しもうじゃないか。」と仲間の1人が声をあげる。
「よし、チェアリングするぞ〜!」
「「おお〜!」」
こうして皆、思い思いの場所へ散らばることになった。
川の水が気持ちよさそうだったので、対岸を眺めながら少し足が水に浸かるくらいの場所を選んだ。
さっそく裸足になって椅子に腰掛け、川の流れを眺めて過ごす。
川の水はひんやりとして気持ちがいい。
ちょうど向かい側の岸で、外国の人が釣りを始めた。
気になってしばらく見ていたら、大きなナマズを釣り上げた。
思わず拍手をしたら照れくさそうに喜んでいた。
乗ってきた自転車のカゴにナマズを積んで颯爽と帰っていく彼を見送る。
きっとナマズは今日の晩御飯だろう。
そうこうしているうちに日も暮れて、散り散りになっていた友人たちも、自然と橋の灯りがあたる場所に集まって輪になっていた。
皆でチェアリングの報告会をしながら、またワイワイした。
思う存分ワイワイ楽しんで、そろそろ帰ろうかと後片付け。
すると、どこからともなく「お〜、いい月が出てるぞ。」と誰かの声が聞こえてきた。
どれどれ?どんな月が出ているんだい?と顔を上げると、いくつもの満月が橋の上で浮かんでいて、ギョッとした。
けれど、それはよく見れば空に浮かぶ、本物の満月とちょうど同じ大きさくらいの橋の灯りだった。

(About Story)

むかし友人に「土岐川の橋の灯りが満月に見えて驚いた。」という話をされたことがある。
その時は「いや、そんなわけあるかい。」と馬鹿にしたが、ある日ふとした拍子に見上げた橋の灯りは、黄色くてまん丸で確かに満月に見えた。
土岐川が最近整備されるようになって、どんどん景色が変わっている。
むかし友人と座って話した道路沿いの土手には塀が建って、草だらけだった川原は重機でならされてそこだけハゲ頭みたいになっている。
満月のように見えた橋の灯りも、LEDになったのかとてもピカピカ光っている。
なんだか寂しい気もするけれど、新しい景色もこれはこれで良いような気もする。

(Author & Selector)

田中太郎

田中太郎

土器を焼いて畑を耕しカレーを作る人

川川川川川土川川川川川岐川川川川/||川川川川川魚川川川川川

プレイリストTOKIRIVER タナカセレクト64曲目~71曲目

プレイリストTOKIRIVERは土岐川にまつわるストーリーのサントラです。土岐川の普段の流れのごとく、ゆるっと更新しております。ストーリーと一緒にプレイリストをお楽しみください。プレイリストは、下記のリンクから入るとSpotifyで聴けます。読みながら聴きながら読んで聴いてヨンデキイテ…してみてください!
(オノダアツシ)


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