夜とウォークマン

はじめてウォークマンを買ったのはたしか中2の時だった。いま思い返しても、あの時期がいちばん人生が辛かった。
甘い予感がしたものだ。もしかしたら私はこの小さな鉄の板によって救われるかもしれない。
夜布団の中でイヤホンを耳に刺して音楽を聴いた。
そこにはひとりの世界があった。
そうか、私はこれから先どんなことがあってもいつだってこの場所に帰ってくることができるのだと思った。この場所だけはなくならない。
たぶんあれが、初めて「夜」を手に入れた瞬間だったように思う。

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