マイブロークンマリコ・死にたい夜にかぎって

遺骨を海に撒く、というか事故的にぶちまけてしまうシーンがあるのだけど、そのシーンが良すぎて忘れられない。
メインキャラクターふたりのどちらともかけ離れた性格だしおそらく交わることはないであろう人生を送っているのに、なんでこんなにもふたりの気持ちがわかってしまうんだろう。
女友達への複雑な感情。苦しんでいる友達を助けたいのにドアを閉ざされてしまった時のやるせなさ。自分も救えないのに、自分以外の誰かを救いたいなんておこがましいと思う。人間ってきれいな面だけじゃない。友達にイラついたり、もう嫌だと思ってしまうこともあるけどそれも含めてこの子なんだと、友達でいようと決意したことが私にもあった。 ある大事な人が死んでも、その人との思い出を反芻することで新たに知ることもあるし関係性が変わることもあると思う。

文庫本も日刊SPAの連載も両方読んだけど、日刊SPAのほうが出てくるキャラクターがしたたかでキャッチーな印象を受けた。文庫本の方は、もちろん面白いのだけれどなんとも切ない。
物事は切り取る角度によってまったく別のものにみえる。悲しい出来事を面白おかしい物語に昇華できる人になりたい。

思い返してみると、私はその人の自分以外の何かに対する眼差しをいつも見ていてそれを好きになっていた。例えば仕事とか好きなものなんか。私を見ていない人のことがいつも好きだった。昔好きだった人のことを思い出す時、いつも何かについて話している時の横顔とか仕事をしている姿のことを思い出す。舞台に立っているその人を、暗い観客席から見ているのが好きだった。

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