人間の同一性

人間は変化し続けるものだと思う。考えも反応も性的指向も姿形だって一秒ごとに変わる可能性をはらんでいる。
ではその人をその人たらしめるものとは一体何なんだろう。約束、一緒に過ごした時間の記憶、こちらを見る眼差し、面差し、触れたときの感じ。
そういったかすかでゆらぎやすいものが混ざり合って私たちはその人をその人であると認識している。それはとても不確かである。
アナは父の声をよく覚えていると言っていた。瞳を閉じて「私はアナよ」と言ったのは父の眼差しではなく、声によって再会したかったからなのかもしれない。 ミゲルは「フリオが時々覚えているいるような様子を見せる」と言っていた。きっと彼の眼差しがそう思わせたに違いない。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?