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財務モデリング FAQs

FAQs

今回は財務モデルを作成する人が細かい論点で気になった際に、どうすればいいのかをFAQ形式で書いてみた。あくまで参考に見てみてほしい。
基本的に会計処理に忠実にやればモデルはバランスするのだが、会計上の処理を精緻に突き詰めたモデルが、良い財務モデルというわけでもないので、モデル作成の目的とアウトプットの内容を考えながら作成することが肝要である。

全般

1. モデルがバランスしない。

要因は色々ある。
運転資本の変化の符号が逆、新たに追加した勘定科目を反映し忘れている、BS上ある科目を過去の平均値や総資産%で計算しているのに増減をCF計算書に一切反映させていない、どこかの勘定科目の期首残高の参照ミスがある、行の足し忘れ、revolving creditの計算が誤っている等が考えられる。

PLのモデリングよりもBSのモデリングで間違いが起きやすいのでCF計算書との整合を意識すべきである。

2.Cash残高がマイナスになる

Revolving credit lineのスケジュール・計算式が間違っている。FCF available for debt paydownにexcess cashを加算し借入金約定弁済額を差し引いて、ミニマムキャッシュに足らない場合、revolving credit lineを引き不足分を借入るようにスケジュールを組む必要がある。

PL編

持分法投資損益はPLのプロジェクション上精緻に行うべきか

バックデータがあればそれに越したことはない、課税所得の計算に影響(持分法投資利益であれば益金不算入、損失であれば損金不算入)するので、可能な限り織り込むのが望ましい。
連結上は、関係会社株式の簿価も修正するので忘れずに行うこと(下記仕訳参照)

持分法適用会社が100の利益を計上した場合(持分20%)

関係会社株式 20/持分法投資利益 20

法人税等調整額は織り込むべきか

税効果会計がプロジェクション上必須な場合(対象会社に繰越欠損金=NOLがある、もしくはM&A model等で追加的にDTLが認識される)は、反映させること。
プラスとマイナスを間違えないように。DTA増加であれば法人税等調整額は貸方なので税金支払い額を減らす方に働く。

非支配株主に帰属する当期純利益の織り込み方

非支配株主に帰属する当期純利益は、親会社株主から見れば費用項目と実質的に同じである。従って、PL modelingが終わりボトムの当期純利益が計算出来たら、そこから非支配株主に帰属する当期純利益を減算する。逆に非支配株主に帰属する当期純損失であれば加算する。
この項目をモデリング上精緻に予測することはあまりないと思われるが、数字を前期の横置きにする場合でもBSの非支配株主持分の計算やCF計算書上での調整を忘れないようにしよう。
BS非支配株主持ち分=期首残高+非支配株主に係る純利益(PL計上、CF計算書で調整) - 非支配株主に係る配当支払い (財務活動にかかるCF)

減損損失が明らかに発生する期があるがどうしたらいいか

当該期にPLで特損処理する。その上で当該年度の課税所得の計算において、損金不算入項目として加算調整して法人税額を試算する。
固定資産の簿価も同額減らすことを忘れずに。

BS編

未払法人税等があるが、運転資本にして問題ないか。

未払法人税は個別にtax scheduleの中で計算することが望ましい。
情報の粒度の問題で未払法人税等がその他流動資産に含まれてしまっているときは、運転資本の計算テーブルで行うのもやむなしではあるが、当期の法人税・住民税事業税等(PL)と、前期末未払法人税等の残高を参照し、中間納付があればそれも反映して計算すべきである。

資産除去債務(ARO)の処理はどうすればいいか

面倒であれば横置きでも良いが、詳細なバックデータがある場合には以下のようにする。

時の経過より発生する利息相当額は取得額に加算。支払利息はPLの営業外費用の項目に含めて計上すること。
期末ARO=期首ARO + 支払利息相当分(=期首ARO×利率)

その他の包括利益累計額等は予測を立てるべきか

費用対効果を考えると、その意義は乏しい。前期と同じ数値をFlatにしているケースが多いと思われる。