それぞれのカタチ
12月未明。
雪の降る道を歩きながら、寒々しい空を見上げていた。
日雇いのバイトを転々としながら、ネットカフェを泊まり歩く生活。
心も体もすり減っていくわりに、お金はたまらず、この生活を抜け出せる見込みもない。
「あぁ、寒いなぁ…」
声に出してみても、寒さが変わるわけではなく、夏場のように公園に止まるわけにもいかない。
少ない所持金で、ネットカフェのパックタイムが始まるのを待つ。
「まだちょっと早いなぁ…」
持て余した時間をどうにか潰そうと、近くの公園へと歩く。
吐く息は白く、手は震える。
しばらく歩き、ふと気づくと、ビルの隙間に小さな段ボール箱が目についた。
いつもなら気にしないようなそんな箱に意識が向いたのは、なぜだったか、よくわからないが、何となく近づいて、箱の中をのぞきこんだ。
「ニャー」
そこには小さな猫が一匹捨てられていた。
「なんだお前も一人なのか?」
通じるわけもないが、何となく声をかけ、抱き上げる。
凍える空の下、箱に入れられたその猫は今にも消えそうな声で、小さく泣いていた。
何だか放っておけない気分になり、抱き上げたものの、連れ帰る家もない、自分も野良猫のような生活なのだ。
「ごめんな、助けてやれないよ」
そう言って箱に戻し、また公園への道を歩き始める。
少し歩くと目的の公園に辿り着き、ベンチに座りそらを見上げる。
寒々しい空に、星は見えない。
どのくらいそうしていただろうか、辺りはすっかり暗くなり、街灯が輝き始めた。
そろそろネットカフェに入ろうと、元来た道を引き返していたら、さっきのビルの前に差し掛かった。
あの猫はまだあそこにいるのだろうか。
まだ生きているのだろうか。
そんな思いを胸に下を向いて通り過ぎ、少し進む。
すると小さな鳴き声が聞こえてきた。
「ニャー」
そこまでだった。
迷わず振り返り、子猫の元へと歩く。
目の前までたどり着くと、段ボールから顔を出してこちらを眺めている子猫と目があった。
「お前も独りなんだな」
そう言葉に出すともう心は決まった。
この猫と暮らせる家を持とう。
子猫を抱き上げ、その場所を後にした。
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