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#11 大阪ホスト編(1)

彩世と夢幻は、難波駅に降りた。
「彩世さん、視察とはいえ、ホストクラブには入れないですよ」
「ああ、分かってる。まずは、街を見に行こう。どんな女性が居て、どんな男が居るのか」
夢幻は、彩世と一緒に歩き出した。
「あ、彩世さん、そっちじゃないです。こっちですよ」
「夢幻…早く言えよ」
「まだ時間早いですし、観光していきません?」
夢幻が彩世の方を向くと、彩世は二人の女性に囲まれていた。
「お兄さん、かっこええね。よう言われん?」と髪の長い女が言った。
「うん。よく言われる」と彩世が笑顔で答えた。
「東京の人なん?」
「そうだよ」
「ほな、案内したんで」
「だってさ。夢幻、どうする?」
夢幻は、女性の肩に手をかけて「ほな、いこか」と言った。
「似非関西弁はキモイで」
「俺は、彩世。こっちは、夢幻。君たちは?」
「うちは、エレナ」と髪の長い女が答えた。
「純。よろしゅう」とボブの女が手を差し出した。彩世と夢幻は、それぞれ握手をした。
「俺、あそこに行ってみたいんだけど」
「何処でも連れてったんで」
「ユニバーサル・スタジオ・ジャパン」
「あそこな~うちらも行ったことないねん」
「お兄さんたち、USJに行くなら、また電車に乗らんと」と純が言った。
「夢幻。そこまでの時間はないぞ」
「大丈夫ですよ。八時くらいにこっちに戻ってくれば良いんだから」
彩世は、ポケットにかけていたサングラスをかけた。
「じゃあ、行こうか」
彩世は、エレナの腰に手を回して、難波駅の券売機に向かった。
「彩世さん。そっち、ちゃうで。こっちや」と純が言った。
「あんた、ええ匂いするなぁ~やっぱ、東京の男は、ちゃうわ」と言いながら、エレナは、彩世の左腕に腕を絡ませた。彩世は腕にエレナの柔らかな胸があたる感触を感じながら、JR難波駅に向かった。JR難波駅で切符を買い、電車に乗り込んだ。
「自分ら、何の仕事をしとるん?」とエレナが聞いた。
「何をしてるように見える?」
エレナは、彩世を頭の先から足元まで目線を移動させる。
「そやね…モデル?」
彩世と夢幻は、笑い出した。
「え?ちゃうの?」とエレナが言った。
「普通の仕事をしとるようには見えへんけど」と純は言い、彩世と夢幻を交互に見る。
「…もしかしぃ、ホスト?」
「そう。冬に大阪にお店を出す予定で見に来たんだ。ホストクラブに行ったことある?」と彩世が聞いた。
エレナと純は顔を見合わせて笑った。
「どうしたんだ?」
「同業者やなんて」とエレナが言う。
「うちら、難波のキャバクラにつとめとんねん」
「そうなんだ。今日も出勤?俺らと一緒に居て良いの?」
「同伴はあるけど、夜やから大丈夫」
「なぁ、せっかくやし、二人ずつに分かれへん?」
「俺は、いいよ。夢幻は?」
「俺も良いですよ」
「ほな、決まりな」とエレナが言い、彩世の腕を引いて、別車両に移っていく。
「君は、俺で良いの?」と夢幻は純に聞いた。
「うちは、あんたの方が好みやねん。それにしても彩世さん、大丈夫かね?」
「…お友達の方が心配じゃないの?」
「エレナは大丈夫」
「あの二人、UFJやのうて別の場所に行くと思うで」
「良い大人だし、大丈夫でしょ?俺たちも楽しもうよ。俺、スパイダーマンに乗りたい」
「うちも始めていくから、しゃんと案内でけへんよ」
「大丈夫」と夢幻は自分の頭を指で指して、「すでにリサーチ済みだから」と言った。
純は、くすっと笑い、夢幻のシャツの袖を引っ張って空いている席に一緒に座った。
「やったら、楽しみやわ」


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