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本厄に白血病になった話② 首のしこり

2020年3月30日、私にとって初めての入院生活が始まった。

世間はコロナ禍、面会は面談時以外禁止。入院した次の日、初めての骨髄検査が行われた。私以外60歳以上の方が入院している6人床のベッドサイドで、うつ伏せに寝かせられ、シートが被せられる。主治医から歯を抜くくらいの痛みだと言われ、その覚悟で挑んだけれど、自分の想像を超える衝撃が腰に走った。その瞬間、初めて大変な病気になったのだと自覚して涙が溢れた。

4月2日、抗がん剤を点滴するため、カテーテルを腕から入れる。本来は首から入れるものらしいが、あいにく首のリンパが腫れている。麻酔はせずに管を腕から入れる痛みも、なかなかのものだった。

診断は急性骨髄生白血病で間違いないようだが、その診断名では普通リンパは腫れないという。しかし、私の場合はリンパの腫れがゴルフボールくらいのしこりとなっており、さらには硬く熱を帯びていた。

腫れている理由がわからないため、4月3日、首の細胞を採取する手術が行われた。

手術室をこんなにマジマジと見る機会は医療ドラマで以外、そうないだろう。手術着に着替えた私は手術台に寝かされ、眩しいライトを見ていた。少し左向きに体制を整え、首のしこり以外を覆うシートがかけられる。首に局所麻酔が打たれると、痺れるような痛みが走った。神経が多いため、全身麻酔ではなく話しながら切るらしい。首を切ると聞いただけでも恐ろしくて泣きそうになった。

手術をしてくれた耳鼻科の先生は気さくで穏やかな人だった。看護師さんも家族の話をしてくれたり手を握ってくれたり、安心できる声かけをしてくれた。手術は順調に進み、最初の麻酔以外は特に痛みもなく終わった。リンパの腫れは筋肉と癒着していると説明はあったが、細胞採取は無事に行えたらしい。

首は溶ける糸で縫われており、分厚いガーゼで保護されていた。少し細胞を採取しただけなので、鏡で見る限りしこりの大きさは変わっていない。ガチガチに緊張していた私も、手術が終わってしまえばあっけなかったと思う程度に余裕が出てきた。

1週間程してから、朝の回診時に首のリンパにも癌細胞がいたことが告げられる。骨髄検査の結果も予後不良遺伝子が見つかり、抗がん剤にプラスして移植も行う方向になりそうだ。




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