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やりたいことは忘れる

「私ね、やりたいことリスト作ってるよ」

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時の流れはかなり早い。二年前君とテキーラを呑んだ安くて大学生しかいないあの居酒屋はもうなくなっていた。
あんなにうるさくて黄色いネオンが印象的だったあの居酒屋は暗くひっそりと佇んでいた。

もう二度と会わなくなっても、もう二度と君の名前を呼ばなくても、もう二度と触れることも。

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ここ一緒に行こうよ、と彼女はスマホを渡す。

「行きたいところメモしてるの?」
と言うと彼女は少し微笑んでそうだよ、と言った。

行きたいところ、死ぬまでやりたいこと、と見出しがつけられリストにはびっしりとメモがあった。

なんか余命数ヶ月の人の題材の映画みたい、と伝えるとそんなこと言わない、と言いながら彼女は続けて
「君とやりたいことリストもちゃんとあるからね」
と言って僕にリストを見せた。

一緒にバルに行きたい
一緒に金沢に行きたい
一緒に川越に行きたい

「これ一括りにして旅行に行きたいでいいのに」
「違うんだよ、一緒にちゃんとここに行きたいってことなんだよ」

彼女はそう言ってカシスオレンジを飲み干し、タブレットで次のお酒を選び始めた。

「そういうリストとか作ったことないの?」
と顔を少し赤くしている彼女が言った。
アルコールで赤くなっているのか、恥ずかしくて赤くなっているのかわからなかった。

作ったことないな、と言うと
「じゃあ一緒に作っちゃおうか」
と言って運ばれてきたハイボールを口につけた。



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