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2014.4.1 タヌキ・キツネ事件、今日上告審判決

エイプリル・フール・ニュース02
この年のエイプリル・フール・ニュースは、刑法のたぬき・むじな事件ともま・むささび事件をヒントにしています。あと、「ごんぎつね」も影響しています。子どもが小さかった頃の「おかあさんといっしょ」で流れていた「こぶたぬきつねこ」を思い出して、それも反映しています。そのため、登場人物の名前が回文になっています。実際にいそうな名前になってしまったのですが、これも実際の人物や組織には一切関係がないことをお断りします。

タヌキ・キツネ事件、今日上告審判決

                           2014年4月1日

 大慈県沖内市で2012年に起きたタヌキ・キツネ事件の上告審判決が、今日、最高裁で言いわたされる。事件当時同市では農作物被害防止のためタヌキの狩猟が認められていたが、丹下源太被告が女に化けたキツネを女に化けたタヌキと誤って猟銃で撃ち殺し、鳥獣保護法違反で起訴された事件だ。1審では無罪、控訴審では有罪とされ、丹下被告が上告していた。この種の事件では、タヌキ・ムジナ事件やモマ・ムササビ事件が名高いが、これらの事件ではタヌキをムジナだと思った、ムササビをモマと思ったというものだが、この事件は女に化けていたが尻尾があったため、タヌキに違いないと思ったが、実はキツネだったというもので、事情が異なる。そのため、この事件は新たな判例となるものとされ、最高裁の判断が注目されている。

 東京都ひがしきょうと大学の小津香突夫教授(刑法学)によれば、「この事件ではタヌキが狩猟対象であり、キツネは狩猟対象ではないことは認識しているが、女に化けたキツネを女に化けたタヌキと間違えたのであって、事実の錯誤が違法性の認識に影響するという刑法学上の難問を扱うもの」ということらしい。この点について、小津教授は、単純化していえばキツネをタヌキと思って撃ったということなのだから、キツネを撃つ故意はなく、過失を処罰しない以上、無罪と考えるべきだという。「これは、馬を鹿だと思って撃ったが、そのこと自体は刑罰の対象とならなかった馬鹿うましか事件でも明らかだ」とする。現に1審は、このような理由で無罪とした。しかし国立くにたち大学の小松真子教授(刑法学)は、それでは「女に化けた」という点を無視することになるとして批判する。「女に化けたという点が共通だということから、故意がブリッジされ、タヌキでもキツネでもかまわないという状況だったのであって、違法な行為をしているという認識がありえた以上、故意はある」という2審の判断を肯定する立場だ。
 この事件について最高裁がどのような判断を下すのか。この行方は、今後判決が予定されているキツネ・ネコ事件、ネコ・コブタ事件、コブタ・タヌキ事件にも影響があるとされ、注目されている。

 ■風土の問題
 沖内市は、民話や伝説が豊富であり、この事件には、こうした風土が影響しているという指摘がされている。たとえば、同市にある酢多布すたっぷ観音は、次のような伝説で名高い。この地を治めていた殿様が戦で傷を負ったとき、観音の指先から出てきた酢をたっぷり染み込ませた布を傷に当てたところ、傷が治ったということから、この観音を酢多布観音と呼ぶようになったというものだ。また、この観音は、折々に近所の人が割烹着を着せるという風習でも知られている。そして、タヌキやキツネに化かされたという話は、最近でも枚挙にいとまがない。現に、この事件の当時タヌキの狩猟が許されていたことについて、県は農作物被害の防止のためとしていたが、住民の間では、タヌキが人を化かしてイタズラをするのを防ぐためだという話になっていた。丹下被告の近所に住む四方崇さんは、「最近もタヌキに化かされて、いい気になって肥溜めに入ってしまった若い男がいたんだ。丹下さんは正義感の強い人だからタヌキを許せなかったんだな。」と証言する。

 ■悲劇の面も
 この事件には、悲劇の側面もある。実は、丹下被告は、撃ち殺したキツネと交流があったという。四方さんは、キツネは丹下被告を楽しませようと女に化けていたのではないかという。四方さんは、撃ち殺したのがあのキツネだと分かった丹下被告が泣き崩れる姿を見ている。「何ともやりきれん姿だった。」悲劇というべきであろう。
                            (小日向多奈比古)

 ◆キーワード
 <タヌキ・ムジナ事件>、<モマ・ムササビ事件> いずれも戦前の事件である。狩猟法はタヌキとムササビの捕獲を禁止していたが、タヌキをムジナだと思って捕獲した者は無罪となり、ムササビをモマだと思って捕獲した者は有罪となったという2つの判決が相次いで出たのである。この点についてどのように理解するか、刑法学界では現在も議論が続いている。

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