さあ、もう第五弾。旅もいよいよ後半戦にさしかかってきました。
空三ももう両想いだしね?気持ちは通じ合っているのにちょっとしたことからすれ違うBLあるあるを楽しんでいきましょう。
この試みは、三蔵一行の旅をさまざまな訳ver.で味わいながら悟空×三蔵、すなわち空三関係の進展を見守っていくことです。
今回はあの有名な西梁国の三蔵女難エピソードがあるから大興奮だね。読み解くのが楽しみ楽しみ。
さて、今回も前回同様、この三冊から引用します。
①岩波文庫版 中野美代子訳「西遊記」
6巻(1990年)
②平凡社版 太田辰夫・鳥居久靖訳
「西遊記下」 (1972年)
③福音館文庫版 君島久子訳
「西遊記中」「西遊記下」(2004年)
(①は明の時代の本「世徳堂本西遊記」、
「李卓悟先生批評西遊記」の完訳本、
②は明の時代の本をダイジェストにした
清の時代の本「西遊真詮」の完訳本、
③は一部のエピソードが未収録の部分訳本です。)
金とう(山篇に兜)山の独角兕の○に苦しめられる回
今回は金とう(山篇に兜)山の独角兕のエピソードからですね。(悟空が地面に大きな○の結界を描き、「この丸の外に出ちゃいけませんよ」と言ったのに、三蔵たちが勝手に外に出てしまい妖怪にさらわれる、あのエピソードです)
独角兕エピは③でまるっと省略されているので、①②の比較でいきます。
独角兕は金剛琢という不思議な輪を持っていて、相手のすべての武器を吸い込んでしまいます。三蔵とおとうと弟子たちを救い出そうと奮闘した悟空も頼みの綱を如意金箍棒を奪われてしまい、一人で意気消沈するシーンです。
まずは②
素敵な漢文の匂いにくらくらしますね。
「同住同修」ですよ。いっしょに住んで一緒に修行してるんですよ。
「同縁同相」ですよ。運命共同体ってことですよ。やだもう、好き。
師匠のことを「主杖(よるべ)」と呼ぶんですよ。おれの人生を支える杖なんですよ。あのなんでもできるつよつよの猿のくせに。
そして如意棒を奪われてしまった徒手空拳ではどうやって助けたらいいんだ、と嘆いているわけですね。
次は①。こっちは書き下し文なので、こっちの方がとっつきやすいかな。
最初の「お師匠さまァ!」と気持ちを抑えられず呼びかけてるのがたまんないですね。
「慈わり慕いつ」ですよ。いたわり、したっているんですよ。あのなんでもできる神猿は、師匠のことをいたわって、したっているからこそ「神通を顕」せるんですよ。
「心は一つ」の師匠と弟子がいるからこそ、天竺への「道また通ず」。つまり師弟が揃っていなければ天竺にたどり着けないんですよ。師匠がいなければどうしたらいいんだーっていう悲痛の詩ですね。ああ、味わい深い。
さて、独角兕を倒すために援軍を呼んでくる悟空ですが、「だれにしようかな」のシーンを①から。
「小聖二郎」というのは二郎真君のことです。
悟空がとりあえず天界で頼りになる将として、托塔李天王と哪吒太子と選ぶの、熱いなーと思います。可愛い親子。
真君を選ばなかった理由は述べられないのですが、霊霄殿にはいなくて灌口にいる設定なので駆けつけるには遠かったから、なんですかね。
さて、再び独角兕と戦うシーンですが、その場面で悟空が語る長い詩があるので、紹介させてください。(私は読み飛ばしててフォロイーさんに教えて頂いたやつです)
①です。
「おれをじゆうにしてくれたっ」
「おれいませいなるたびしてるっ」
ライム刻んでんのか、ぐらいにリズムが良い。
口に出して読みたい日本語No.1じゃないですか?
「おれいま聖なる旅してる」って悟空の口から語られるの何という尊さ。妖怪風情が汚い手で邪魔しちゃならねえほどの聖なる旅してんだよ、という自負。
そして最後の「尊い師匠をば返しやがれ!」の迫力。
悟空にとって師匠は尊いんですよ。ほんとうに。強い妖怪だかなんだかしらねーけど、お前に邪魔されていいようなテキトーな旅じゃねえんだよというまじり気のない怒りが感じられて、ほんとうに素晴らしい。(と読み飛ばしてしまった私が語る)
一方の独角兕も返せと言われて返すはずもありません。悟空を煽ります。
まずは②
きれいに洗っちゃったんですかあ。それ誰にやらせたんですかあ。三蔵洗い担当の妖怪を突き出していただければ問答無用で悟空が殺しますね。
①はもうちょっと展開が熱いので、見てみましょう。
さっきも腹を立ててましたけど、今回の訳だと「さばく」という言葉に血が上ったことがはっきりわかりますよね。師匠を餌のように言及されてキレる悟空、最高じゃないですか。師匠のことでキレる猿、ほんとうにありがたい。
そして独角兕を退治した後、三蔵が感謝をする場面
悟空の描いた結界から出よう出ようとごねて三蔵をそそのかしたのは八戒なので、悟空は八戒にものすごく文句言ってます。
三蔵の「そなた、ほんとうに賢い弟子だ。こんな目に遇った以上、以後はきっとそなたの言うことをきこう」というお礼の言葉、ありがたいですよねえ。でも、お前その言葉、よく覚えておけよなwどうせまた悟空の言うこときかねえくせにな。
小ネタなんですけど、私この場面で斎をあっためて持ってくる土地神がわりと好きなんですよ。数日前の斎ですよ?詳しくは言わないけど、おそらく悪くならないようにおそらく冷蔵庫で保管しておいて、レンジでチンして持ってきてくれたんですよ。ほんと気の利くレンジ土地神だな。
②では、
細かい点ですが、結界を「まる」というか、「輪」というかでだいぶんと響きが違うなあと思います。
平凡社版の方が、この場面は丁寧な口調ですね。レンジ土地神もさっきは村のおじさん感あったけど、こっちはこじゃれたレストランのソムリエ感ある。
女難が群れを成して襲いかかってくる西梁国
さてさて!おまたせ!次は西梁国だよ!
三蔵の妊娠エピソード
②③では記述なかったんですけど、①で舟に乗り込むときの空三エピをめざとく拾ってきたのでどうぞ。
師匠の世話はさあ、もう他の人には絶対任せないの。悟空は絶対自分でやんの。いちいち師の身体にふれたがる弟子が尊い。理由がないとさわれないんだもの。
「師匠をたすけながらとび乗り」ってどんな感じなんだろうか。師匠の手を引きながら、自分は軽くジャンプして船に乗ったってことなのかなあ。それとも師匠を抱えたまま船に跳び乗ったってことなんでしょうか。教えてください。
次は、三蔵と八戒が腹痛を訴え、近所の家の婆さんに湯を頼むところ。
まずは①
最初は下手に出て湯を沸かすように頼んでいる悟空が、三蔵が苦しんでいるのを笑う老婆に対して「歯をむいて一喝」するのが最高ではありませんこと?仕草の猿っぽさと、師匠のことを大事にしてる感と、おれの大事な師匠をお前らないがしろにするな感が寄ってたかって「あぁ、三蔵はこの猿にすげえ愛されてんだねえ」という雰囲気をかもしだしています。
それに最初は一応下手にはでているんですが、「わが師匠は、唐の皇帝のおとうとなんです。」と師匠の権威をひけらかして、だから助けろよと言外に圧かけてる感じも中国古典らしさを感じます。
「悟空は三蔵をたすけ、悟浄は八戒に手を貸すなりしてその家に入りました」という自然な役割分担も愛おしい。悟空は八戒に対してはほとんど心配もいたわりもしてない点が、三蔵に対する思いやりと対比してまた美味しいところです。
次は②
こちらの悟空は①よりも丁寧な口調なだけに最後にキレた時の「はやく湯を沸かせば許してやる」という変化が効いていますね。
ちなみに私の個人的な好みを言えば、悟空も三蔵も口が悪い訳の方が好きです。
「どうか湯を沸かして師匠に飲ませてください。お礼はきっとしますから」という師匠思いの台詞が泣かせるじゃないですか。八戒も同じく腹痛に倒れてますけど、八戒のことは一言も口にしてないですからねw
③はこんな感じです。
①でも②でも入ってなかった「悟空はあせって」という文がかわいくないですか。三蔵が腹痛にうなっていると悟空はあせっちゃうんですよ。早くなんとかしてあげたいんですよ。
私、これ知ってる。出産エッセイとかで読んだことあるもん。出産で苦しむ妻を見て、自分が耐えられないから「早くなんとかしろ、オイ」ってすごんじゃうヤンキーの夫そのものじゃないですか。夫婦じゃないか。
三蔵と八戒は実は河の水を飲んで妊娠(!)してしまったのだと老婆に教えてもらった悟空は、子をおろす作用のある落胎泉の水を汲みに行きます。
②③には記述がないんですが、留守番する悟浄にいちいち細かく言づけていく悟空が可愛いシーン。
「お師匠さま、もうだいじょうぶ。孫さまがその水を取ってきて飲ませてあげますからね」の破壊力!!
これ絶対、猫なで声で言ってる!絶対、いちゃいちゃする時の声で言ってる!みんな聞いてますけど、とか全然気にしてないよね。はい、バカップル万歳。
身重の三蔵に無礼な態度をとった老婆のことを許してないのも言葉のはしばしから伝わってきて、おかしいかわいい台詞です。
さて、落胎泉の水は如意真仙という妖怪が守っていて、なかなか水がくめなません。悟空は悟浄を助っ人に連れて行くことしますが、三蔵が「病気の二人だけ取り残されるのか」と不安がるシーン。
まずは①
ちょっとね、ツッコミをいれたいところがたくさんありすぎるんですけど、絞っていきますよ。
若い女の人がいっぱいいるもう一軒の方に行ってしまって、もみくちゃにされる妊娠三蔵と、三蔵のことで頭がいっぱいで全然女に見向きもしない悟空も見てみたかったですけどねー。パラレルワールド形式でR-18版で書いてもらえないでしょうか。
しかも「におい袋」て。人肉を使ったアイテムとして妙にリアルじゃないですか。思いつかないよ、普通そんなの。乾燥させてポプリみたいにするんですか?それとも、肉肉しい生生しいにおいのやつかな。……すぐ腐りそうだけど。てか普通に考えてさ、肉よりも脱いだ服とかの方が匂い嗅ぐには適しているのではない……。
それとさー、「ほかの連中はいいにおいをプンプンさせてるから、におい袋をつくるにはうってつけだろうけど」とか聞き捨てならないんですけど!
八戒以外は「いいにおい」⁉「いいにおいをプンプン」⁉「におい袋をつくるにはうってつけ」⁉
ちょっとマジですか。三蔵がいいにおいしてるっていうのは信じてましたけどね、え、悟空のにおいはあきらめてたんですけど。妖怪だし、猿だし、風呂なんかめったに入ってないだろうし。
え~?いい匂いさせちゃっていいんですか?やだあ、そうなの?これが原作だもんね。これで二次創作でもこころおきなくいい匂いさせられんじゃん!!
こんなシーンは当然いろんな訳で読みたいよね。
次は②
「だが二軒目へでも行ってごろうじろ」という時代を感じる台詞がたまんねえなあ。人生でおそらく一回も言うことないだろうなあ。
八戒の言い草に「思わず笑って」しまう悟空が良い感じです。八戒がくさいの知ってるんだなw
三蔵には早く助けてあげますからってなだめるくせに、八戒には「もうすぐお産だ」と冗談まじりにからかう弟子同士の気安さも好きです。
③です。
ちぇっと舌打ちする子どもっぽい仕草に、小猿感を感じます。
児童向けだからか、老婆の台詞も曖昧な感じになっています。
さて、落胎泉の水を飲んで堕胎した八戒と三蔵のシーンです。
①です。
過保護かよ。風にあたったら病気にかかるのかについて、御大の解釈では、水を飲んだだけ、井戸をのぞいただけ、南風にあたっただけで妊娠するインドの伝承が影響しているのかもしれないと記載してありましたけど、それの線でいくなら再びの妊娠を心配してるってことなんでしょうね。これ以上三蔵を妊娠させたくないんだろうね、悟空としてはね。
まあ、空三クラスタにとって重要なのは、とにかく悟空が堕胎後の三蔵にめちゃくちゃ過保護に接するってことですよね。ま、そういうことになるだろうとはわかってたけどね。知ってた知ってた。
あんまり変わんないですけど②でもどうぞ。
こっちは「風(原文ママ)をひくと産後の病を起こしますよ」と書いてあるので、風にあたって風邪をひいてはいけないという素直な解釈のようです。
西梁国で女王に求婚されるエピソード
そして三蔵一行はとうとう女しかいない西梁国に入ります。
女たちの反応がすさまじいので、みていきましょう。
まずは③です。
ひとだね、という言葉の強さw
さすが女しかいない国では言葉選びのセンスがつよつよですね。
女しかいない国ってことは今までに男を見たことのある人がほとんどいないはずですが、三蔵一行をみてすぐに男がきたということはわかるのが不思議ですね。一行は男性ホルモンをムンムンに匂わせていたのでしょうか。
次は②です。
「いっせいに手をたたいてキャッキャッと笑い」ながら「ひとだねが来た」と叫ぶという無邪気なサイコパス感がすごい怖いw
①はもっと強烈です。
「来たわよォ!」の無敵のおばちゃん感わかります?すごいエネルギーを感じさせますよねえ。絶対敵わないや。わたし、端っこの方で見てますね。
そんな女たちを追い払おうとする弟子たちの様子を①から
「三蔵をながめております」というからやっぱり全員のお目当ては三蔵なんですね。ひとだねが欲しいだけなら、最悪八戒でもいいだろと思いますけど、豚面の子が生まれたら困るからでしょうか、それとも、せっかくのひとだねならなるべくイケメンがいいからでしょうか、みな三蔵にしか興味がないの笑えます。
それを追い払おうとする弟子たちの変顔の様子がかわいいですよねえ。
国の役人が三蔵の顔を見て、それを表現するシーンをみてみましょう。三蔵一行の外見を詳しく描写してあるシーンはなるべく取り上げていきたいですね。脳内イメージを盤石とするために。
まずは①
「御弟」というのは唐の皇帝の義兄弟となった三蔵のことを指します。
すぐに泣き言を言うからつい忘れてしまうけど、三蔵は「堂々たるお姿」なんですよねえ。見かけ(だけ)は本当にどこに出してもおかしくない美しくて立派なお姿です。すぐ忘れそうになる。
②では
この辺の褒め言葉も中華思想が窺えるというか、書いたの中国人なんだろうなとメタ視点で楽しい。
次は女王からの縁談がもちあがる場面。
まずは①
「ご招待なものか。縁談だぞ」のすべてお見通し猿が、カッコよくないですか。そして、「どうしよう」と悟空に頼る三蔵が可愛い。三蔵に頼られて、いい気分になっている悟空の顔が浮かぶ気がしませんか。絶対得意気に自分で「孫さま」呼びしてるでしょ感ある。
②
「承諾なさいまし」って言い方がね、時代を感じてまたイイ感じよね。
さて、縁談を勧められた三蔵は困ってしまいます。
まず①
まず注目すべきは「まったく使い物にならない三蔵の初心さ」ですね。断れもしないし、赤くなってぼーっとしているだけで、さきほど「天朝の大国、南贍部中華の人物」と褒めたたえられた人と同じ人物だとは思えません。しかも、結局三蔵が口をきいたのは、「悟空や、なんと答えたらよいものかな」という悟空への問いかけのみ。こんなん、悟空でなくとも放っておけなくなっちゃうよね。頼りなさすぎる。
②ではこんな様子です。
こちらの八戒は、自分を婿にしろと言っているずうずうしさは変わらないのですが、言葉遣いがやや丁寧なのでチャーミングさが増していますね。①②の八戒の自称が揃って「おいら」なのも素朴さが感じられていい感じです。
③の八戒の自称は「俺」になってます。
前二人の悟空は、「この地に留まるのも、またよかろうかと思います」、「とどまるのもいいかと思います」に比べて、こちらの悟空の答えは「おとどまりなさるがよいと思います」というシンプルな分、婚姻を積極的に勧める様子が出てますね。
ほんとは結婚すればいいなんて、そんなこと思ってないのにね。
さて、役人がいなくなった後、三蔵は地を出して悟空を叱ります。役人がいる間は我慢してたんだろうなという三蔵の外面の良さが窺えるシーンです。
まずは③
「なぶる」という言葉のチョイス良くないですか?
デジタル大辞泉https://www.weblio.jp/content/%E3%81%AA%E3%81%B6%E3%82%8B
によれば、
「なぶる 嬲る
1弱い立場の者などを、おもしろ半分に苦しめたり、もてあそんだりする。
2からかってばかにする。愚弄する。
3手でもてあそぶ。いじりまわす。」 らしいですよ。
この場合の意味は1かな、2かな。
1だとすると、三蔵が自分の方が弱い立場だと自覚してるようでおいしいし、2だとばかにされたという三蔵のプライドの高さを感じられてそれもまたおいしいなと思います。
三蔵は女王との結婚は「死んでもいやだ」だそうですよ、よかったね、悟空。
つぎは②
「なぶりものにする気か」の強気さ加減がたまんねえな、おい。凄みをもって睨みながら三蔵に言ってほしい。絶対映える。
さて①です。
「わたしをなぶりものにしおって!」とぐいと引っ張って叱りつけたそうですよ!怒ってるw可愛い!もうやだ、好き。
そして、激昂する三蔵と対照的に、落ち着いて「まあまあ」となだめる悟空の様子がスパダリそのものじゃないですか。
「この孫さまとて、あなたの性質を知らないはずはないでしょうに」
そうなんですよ、師匠が結婚に納得するはずないってことを誰よりも知っているのが悟空なんですよ。もう……。
そして、こう言い聞かせられた三蔵は、めちゃくちゃ納得したと思うんです。だって、それからの三蔵は悟空の指示をよく聞くんですよ。信頼で結ばれた絆は強いんだもん。
さて、三蔵に結婚を迫ってくる女王なんですが、実はものすごい美人です。富もあるし、権力もあるだけではなくて、ものすごい美人です。その美しさがわかるシーンを。
私の好みで、女王の容姿を細かく描写している文章ではなく、女王の姿を見た八戒を描写している文章を抜粋してきましたwが、女王の美しさはよくわかるのではないかと思います。
②と③の女王はかなり積極的な台詞をささやいてきます。
八戒かわいいでしょ?
美しい人をみてぐにゃぐにゃにとろけそうになる表現というのは、中国でも同じなんですね。
③はこんな感じ。細かいですけど、③では雪だるまではなく「雪で作った狛犬」という表現になってます。
そんな美しい女王と三蔵は一緒に車に乗ることになります。
まずは③
悟空が励ましてやって(その胸で←そこまでは書いてない)涙を流してから、やっと作り笑顔で女王と手をとりあって車に乗る三蔵、尊いよ……
三蔵の精神を支えているのは確実に悟空なんですよ、自分の精神的支柱となっている相手にKUSODEKA感情抱いてないわけないでしょ。こういうところは、三蔵のデレですからね、わかりにくくても確実にデレてますから、抜けなく拾っていきたいところではありますね。
次は②
女王との結婚が迫っている三蔵は「生きた心地もなく茫然としている」そうですよ。やっぱり、ちょっとアレだよね、三蔵ってやっぱり女性恐怖症な感じもあります。僧院育ちだし、女性との交流そのものに慣れてないというだけでなく、恐怖とおののきさえ伝わってきます。
悟空の台詞もニクいですよね。表面的には、「早く車に乗って、早くわれわれを出発させてくれ」って言ってるだけなんだけど、その「われわれ」の中に三蔵も含まれていることが、お互いにだけはわかっていて、「一緒にここを早く出て行くために、早く車に乗ってくださいよ」という促しであるわけです。
そして①です。
よく読んだ?
「三蔵は悟空のからだを二度ほどなでまわし、はらはらと涙をこぼすのでした。」
なんで悟空の体をなでまわした??二回も??
離れたくなかったんでしょ?ね??違う??
女王が待ってるし、人目もあるからね、悟空もぐっと抱きしめたい気持ちをこらえて
「お師匠さまったら、くよくよしないでくださいよ。これほどの富と名誉をたのしまないでどうします?」と気持ちと裏腹の言葉をかけるんですよね。
くぅ。
ああ、こんなすれ違い、BLあるあるじゃん。
「本気で私が結婚すればいいと思ってたんじゃないのか」「おれがそんなこと思うわけないじゃないですか」って後で蒸し返して喧嘩するやつじゃん。ああ、てぇてぇなあ。
一緒に車に乗った女王は結構ぐいぐいきます。詳細な記述のある①をみてください。
なんとしても三蔵を落としたい女王のぐいぐいぶりが可愛いですけど、「あの下品な豚は、あなたの下僕ですの?」って聞かないところに育ちの良さを感じますね。
さて、結婚式のときに着席する様子なんですが、ここの動きがよくわからないので一緒に考えてみてください。
まずは③です。
杯を与えてから着席をすすめるのが、中国式の礼法なんですかね?私は詳しくないので、ご存じの方いたら教えてください。
三蔵は一旦座っていたんですが、悟空に目くばせをされて女王に礼を尽くしに行くのも愛嬌があるなあと思っています。
②はこうです。
「杯を返すように合図」したとあるんですが、これはいわゆる「返杯」なんですよね?
調べたところ、よくわからないんですけど、返杯というのは同じ杯を使って親交を深める意があるそうですね。
ってことは、「女王はいちいち杯を授けて弟子三人の着席を促す」というのは、つまり女王が弟子たちに酒をついでやったということですよね。
で、三蔵は「玉杯をささげ」というのはどういうこと?自分の飲んでいた杯を渡したってことかな。いや、しかし「玉杯」というのは王だけが使う杯なのかな?わからん。
でさ、①ではこうなんですよ。
「ひとりひとりと杯を交わした」というのは、同じ杯で飲み合ったということでしょうか?それともただ、酒を注ぎ合ったってことなのかな。
いや、だって、間接キッス……。
だって、だってさ!この西遊記ってさ、空三のキスシーンないんだよ、この長い本編中で一度もさ!そんな中で通りすがりの女王と間接キッスはしてたってことなんか、許せないじゃん!!(空三強火)
さあ、女王から三蔵が逃げるシーン。八戒の毒舌がたまらねえので見ていきましょう。
①です。
私はこの狂ったような八戒の描写がものすごく好きですね。
あんだけめろめろになっていた女王に捨て台詞を吐くの、すごい人間くさくて八戒のキャラ立ちがすげえよ。「八戒のやつ、いきなりおかしくなりました」の地の文の狂気さも笑える。
「白粉を塗ったくれたされこうべ」の言い草がやべえわ。
②です。
八戒の台詞、どの訳で読んでもおかしいよなあ。
オメーは女王が望みさえすれば夫婦になる気まんまんだったじゃんw叶わなかった分の腹いせ悪口がひどすぎる。
③では、
おまけに女怪にさらわれる
そうして女王からは逃げ出した三蔵でしたが、その瞬間女怪にさらわれてしまいます。あわてて追っていった悟空が三蔵を見つける場面です。
まずは①
さらわれてしまった三蔵の「顔は青ざめ、唇はまっ白、赤く泣きはらした目から涙がこぼれています。」という恐怖の描写、新鮮ですよね。もう命を狙われるのは慣れっこだけど、元陽を狙われるのはやっぱり恐怖でしかないんだねえ。
この悟空の「師匠は毒に中(あた)っちまった」の意味を掴みかねているんですが、君はどう思う?
悟空としては、弱っている三蔵の様子を見て、毒に命を削られているようだ、つまり、女怪にさらわれた悪運を毒に例えたのかなと思ったりもするし、助けに行った時点ですでに弱っている三蔵の様子からしてすでに女難という毒を食らわされてしまったと悔やんでいるのかなと思ったり、うーん、正確な意味がよくわからない。
一応、他の訳もみてみましょうか。
②
「ひそかに嘆息」しているわけなので、悟空としては三蔵をさらった女怪への怒りよりも、三蔵の身を心配している気持ちの方が先に立っているという解釈でよいのかな。
わかりやすい訳として名高い③でも「毒にあてられた」という表現は同じです。
さあ、女怪と戦った悟空ですが、女怪に不思議な針で頭を刺されてしまい逃げ帰ります。
おりしも日が暮れ、どうしたらよいだろうかと弟子三人で話し合う場面です。
結構解説が必要な箇所がたくさんある部分かなと思うんですが、一つずつみていきましょう。
まず「すべた」というのは、不美人の意味です。悟空が三蔵をさらった妖怪の悪口いってる可愛さを感じてください。
次は、「子母河で水高をめしあがったくせに」なぜ人肉饅頭は食べないのかと女怪が三蔵にせっつく理由は、御大は子母河の水が「なまぐさもの」、つまり精液のたとえだと述べておられます。
でもそういう色っぽい解釈は三蔵には無理だったようで、「水高く船去ること急に 沙陥(おとしあな)に馬行くこと遅し」と答えています。これは、「流れが急になれば船も早く進むし、落とし穴があれば馬の歩みも遅くなるように、のどが渇いたから子母河の水を飲んだけれど、食べる必要も理由もないから人肉饅頭は食べません」という意味だと思います。
三蔵に手を出させないようにするために、洞の外で騒いでやろうぜという
提案する八戒はバカっぽくてかわいいし、珍しく負傷して「行けんよ」と気弱になってる悟空はかわいそかわいいし、冷静な判断する悟浄は珍しく台詞あって良かったね、という感じ。
②も見てみましょう。こちらは頭の痛い悟空が「うんうん言いながら」冷静な判断してくれます。
③では、
こっちはやっぱり冷静な判断するのは悟浄になっています。
さて、弟子たちは今夜一晩はとりあえずゆっくり休むことにしたので、妖怪は弟子たちに邪魔されず三蔵と二人きりの夜を楽しみます。うふふ。
まずは③ 児童書だからか、あまりあからさまな書き方はせず上品な感じです。
「夫婦ごっこ」って何ですかー?教えてくださーい!
「夫婦」じゃなくて「ごっこ」が入ることで確実にえっち成分高まる気がしますがいかがですか。
次は②
女怪にぴったりとよりそわれて「歯をくいしばって」いる三蔵、頑張ってますねえ。絶対泣いてると思ったけど、わりと頑張って耐えている。
①だと
西遊記ってあまり色っぽい描写少ないんですよね。「おねんねしてたのしみましょうよ」程度の台詞でこちらが予想しなきゃいけない。
てか、三蔵って行為の内容は知っているんだろうか?「ねんねしてたのしむ」くらいのぼやっとした知識しかなかったりする可能性はあります?「ぶるぶるふるえて」いますが、それはもしかして殺されるとか元陽を奪われれるとかの恐怖に加えて、「そもそも寝室で具体的にナニをされるのかわからない」恐怖もあったりします?知識がない分展開が読めないからそれは怖いよね。そんな疑惑さえわいてくる、三蔵のビビりようです。
さて、一夜明けて弟子たちが会話するシーン。
まずは①です。
悟空は頭をさされたことにに対して、もう二度とさされたくないからかんべん、と言っています。
で、八戒は得意のことばあそびで返答しているのですが、御大によれば浪(ロウ)は放(ホウ)と同韻で同義、かつ「みだらな」という意味があるそうです。
②もほぼ同じ記述があるんですが、解釈は少し違うようです。
もちろん韻を踏んで駄洒落であるけど、「放浪(気ままでこだわらぬ)という熟語」としてここで使ったようだ、と記載されていました。
さあて、八戒は師匠はイイコトしたんだろうと言ってましたが、どうだったんでしょうか!
一晩寝て元気になった悟空が虫に化けて、様子を探りにいきます。三蔵はなんと縄に縛られていました。
声ですぐに悟空ってわかるのっていいよね。
〽︎なっまえをきかなくても〜 こえで
すっぐ〜 わかぁってく〜れるっ
恋人かよ。恋人なんだな。
悟空が「ゆうべのなにはどうでした?よかったでしょ?」と聞くの、なんか言葉にならない思いがイロイロ込められてそうで味わい深いですよね。
師匠がこんなところで元陽を漏らすはずないって悟空は知ってるし、三蔵が縄で縛られているってことは楽しい夜を過ごしたはずはないんだけど、でももしかしたら万が一、少しだけ色っぽいこともあったかもしれないと一抹の不安だけはあって、「よかったでしょ?」と聞くことで悟空自身の心の傷もえぐろうとしているというか、何気なく尋ねている風を装いながら、実のところはお願いだから否定しておれを安心させてほしいと悲痛の念をこらえている、というか。(安定の深読み)
ちょっと気になったんですけど、三蔵の「帯もとかなかった」という言い分なんですが、それって受の台詞じゃないかなと思うんだけど、どう?攻って帯といたかどうかはあんまり重要じゃなくて、指一本ふれてない、とか、脱がしてもない、とか普通そういう風に言うよね。そうじゃない?女怪が相手だというのに、三蔵は心根までも受体質なのだなあと、ニヤニヤします。
はい、②です。
「わたしはたとい死んだって、そんなことはしないよ。」「からだは今も潔白じゃ。」の演歌感www響きが強いよ。
さて、③だよ。
「師匠」とそっと呼んだだけで、「悟空」と名を呼び返してもらえるの、悟空はすごく嬉しいと思うんですよ。これこそツーカーの仲じゃないですか。Tu-Kaはなくなりましたけれども。
この女怪はなんと蠍の精だったので、天界から昴日星官(本性は雄鶏)を呼んできて退治してもらいました。
その辺のエピソードを二次創作したやつがこれ。
そして二度目の破門に繫がる
やっと女難を乗り越えた一行でしたが、八戒が早く人家にたどり着きたいと言い出し、珍しくそれに反対しない悟空は三蔵の乗る玉竜を走らせます。
悟空は以前天界で弼馬温(馬飼い)の役についていたので、馬の扱いがうまいからという説明がついています。なぜわざわざ三蔵に危険なことをしたのかなと思うけど、まあ、話の展開上、三蔵がさきに行くというのが必要だったにしてもねえ、なんで?
馬といっても玉竜だからね。いざとなったら守ってくれる安心感があるのかもしれないけど、ねえ?
ここでは書いてないけど、三蔵たぶんちょっとこの辺でイラッとしてると思うんですよね。うん、これが後で効いてくる。
まずは賊に捕まる
一人で先に行ってしまった三蔵は案の定、賊に捕まって樹につるされてしまいます。三蔵のイライラレベルもだいぶ上がって来てますよねえ。
三蔵が吊るされているのを遠くから見た悟空はすぐに自分が見てくると言います。
①では
足手まといになる、おとうと弟子たちには後から来いと言って、自分で三蔵の様子見に行くんですよね。なんでも自分でやっちゃう親分肌の兄貴を持つと、おとうと弟子たちは楽できていいねー。
②では
「ばかも休み休み言え」の古風な響き、好きなんですよねえ。
③では
フットワークの軽い猿、かわいいねえ。
そして、助けに来た悟空が賊を引き付けている間に、三蔵は逃げます。三蔵の人でなし感がかわいいので、見てみましょう。
①です。
まずさあ、馬にとび乗れるほどの運動神経が三蔵にあったことに驚きませんかw
まあ、悟空は大丈夫だと知っているからだとは思うんですけど、「悟空のことなんぞ見向きもせず」という地の文でさえ三蔵の非情ぶりを強調している感じが面白い。
②と③も似ているので一気にどうぞ。
三蔵も馬に鞭あてたりするんだねー。
悟空は自分を置き去りにした三蔵にどう思ったのかまったく書いてないけど、ちょっとムッとしたりしたんじゃないのかなあ。
さっきから三蔵のイライラレベルは高まっているし、悟空もムッとしているし、不穏の匂いがし始めましたよねー。
悟空が賊を殺し、一行の不穏度が高まっていく
悟空が賊を殺してしまったと聞いた三蔵が立腹するシーン。
①です。
三蔵のイライラレベル、だいぶ限界まで近づいてきました。
悟空が賊とは言え人間を殺してしまったことに三蔵は怒っています。
②です。
しょせん猿は猿、人間とは違うみたいなこと言ってるのかなと思います。
そこで、三蔵は賊の墓を作らせ、そこで経をあげます。その経が面白すぎるのでみていきましょう。
まずは③から
悟空は三蔵を守るために殺したんだけどね、そういうことガン無視で悟空のせいにしているのひどいですよねえw
②は漢文臭がすごいです。
殺したのは孫で、私は陳という名字で姓が違うから無関係だから、恨むなら孫を恨めよ、私は関係ないぞということを強調しています。……そういうさ、人のせいにするところ、師匠さ、良くないよと思うよ。
①も見てみましょう。
死んじゃった人のことを悪く言うのはあれだけどさ、「好漢よ」と呼びかけるの違和感あるけどねー。
「爾の仇の名は孫悟空なるぞ」とかさ、言われた悟空の気持ちなってみてごらんよ。別に悟空にとっては殺さなくてもいい小物だったわけじゃん。でも、三蔵に害なす者だったから始末したわけじゃん?三蔵のためにしたことなのにさ、そんなこと言われてもさあ……って気になるよね。(悟空モンペ)
そして悟空はどうしたのかというと、なんとここで笑うんですよね。
まずは③
シンプルな文章が胸をうちますね。
「師匠、あなたもわからぬ方だ」の静かなあきらめの表現に苦しくなります。
②です。
こっちの悟空はまだ師匠に理解してもらうことをまだあきらめていない感じ。あわよくば説得したいという欲を感じます。
①も②と近いですね。
三蔵がそもそも取経の旅に出ていなければ、われわれは出会ってすらいないんだから、こんなところで人殺しをすることもなかった、つまりは、取経の旅をすると決めたのだからこの人殺しはあなたが責めを負うべきその代償です、ということを言ってるんですよね。
まあ、殺人の責任放棄とも読めるし、たしかに三蔵が天竺に到達するには必要な殺人だったでしょと言われると、まあそうかもと言えなくもない。悟空が殺さなくても道は通れたかもしれないですけど、短気で手の早い悟空にはこの殺人が我慢できなかったと言えばそうだし、そもそもそういう性質を持つ悟空を供にしなければ天竺なんかに到達できない、というのもまた事実なんですよねえ。
そして、悟空は盗賊たちの墓に向かって、「文句があるなら勝手に訴えでればいいが、おれは閻魔大王とも友達だからな」というヤクザみたいな内容の詩を言います。
その詩を聞いた三蔵の反応です。まずは①
不穏だねえw
てか、八戒と悟浄が悟空への敵意が生まれる理由がよくわからねえのだが。悟空が八戒と悟浄にイライラするならわかるんだけど。
とりあえずお互いの不満を言うだけ言って聞き流しておく喧嘩のパターンですね。この喧嘩があとで効いてきます。
②ではこんな感じです。
「お師匠さん、言ってみただけですよ」
絶対そんなことないじゃん。怒ってんじゃん。
カップルが喧嘩してるぅ~。
③です。
「師匠、これは笑いごとではありません。」
これは静かにキレてるw
ちぐはぐな気持ちで旅を続け、ある民家に宿をお願いするシーン。このシーンは①しかないので①でどうぞ。
なんかちょっと空気を和ませたくて、八戒が冗談言ったんだよね、わかる。お前はそういう気の遣える男。
悟空もただ否定するんじゃなくて、ちゃんと八戒のボケに乗ってあげるのが優しい。
「口が長くなく、耳がばかでかくなく、面がみっともなくなければ、おぬしだって、いい男だよ」
そう、八戒は面がみっともなくなければいい男なんだよ。ちょっと、怠け者ではあるけど、イケメンなら許されんだろ?
宿の息子が賊の一味だった
さてその宿を借りた家の息子がなんと先程の盗賊団の一味でした。信心深い老人の息子が賊だと聞いた悟空は「ぶっ殺してあげましょうか」と言いますが、老人は「あんな息子でも将来は墓守をしてもらわねばならないから」と断ります。
その息子を含む賊が三蔵一行に襲いかかってきて、悟空がドラ息子を殺すシーン。
まずは③
何度読んでも、この三蔵は悟空がドラ息子を殺したことを怒っているというよりも、自分の目の前に血の滴る生首を差し出されたことに怒っているような気がするんですが、どうでしょう。
②です。
②が一番首を切る描写と禁錮呪の痛がる描写が生々しい気がするwまあ比較すれば、という程度ですけどね。グロや痛み描写が得意な平凡社版と記憶していいですかw
①です。
「やめてくださいよう!」の小猿感がたまらないですね。それでもやめない三蔵はS気あるのではと疑いたくなります。
二度目の破門になる
そして、二度目の破門になります。それぞれ長いんですが、ぜひとも読んでほしいので抜粋します。
まずは③
「もうおまえはいらぬ。はやく行け。」
三蔵の冷たい言葉が刺さるよぉ。そんなこと言われたら悟空泣いちゃうよぉ。前回の破門の時もめちゃくちゃ泣いたんだぞ、あの猿は。
前回の破門の時、三蔵は破門状を書きましたが今回は書きません。カジュアル破門です。
すんなり去ったかと思いきや、悟空は一度戻ってくるんですよね。花果山にも経を取ったらもどって来ると言った手前、カッコ悪くて戻れない悟空は本当に行く場所がないんです。
「今まで妖怪は山ほど殺して来てるんだし、それに恩義を感じてるんじゃないですか?今更、人を一人殺しただけで(しかもドラ息子)、そんなに怒らなくても……」という悟空の気持ちはわからなくもないですよね。
次は②です。
「とっととうせろ。ぐずぐずしていると、また真言を唱え、今度は決してやめないぞ」の三蔵の脅し文句やべえなあ。
「師匠には、おれの好意がわからないんだ。」の切ない悟空の台詞を読んでくださいよ、もう。
どっちが暴力的な攻かわからないな、もう。
①は結構長いけど、エモいからぜひ読んでね。
「わたしはやっぱり、なんとしても、お師匠さまをお守りして西天に行きたいのです」
そうなんですよねえ。そうなの、悟空は師匠と一緒に天竺に行きたいの。
でも、この師匠は怖いよ。「金箍は、もう一寸ほども肉に食いこんでしまいました。」一寸ってほぼ3㎝だぞ。3㎝も肉に食いこませちゃう師匠怖いよ。
観音菩薩に泣きつく
観音菩薩のところにいった悟空はわんわん泣いてしまいます。(かわいい)
①です。
木叉と善財のきょうだいに助け起こされる悟空かわいくないですか。
悟空が「この身を投げうって」三蔵を助けて来たのはそれは事実のことなんですよねえ。このあと、菩薩から「公平に見てお前が悪い」と言われるんですけど、実家に帰ってきてパートナーの愚痴を言う新夫感ありますね。
②です。
本の癖が分かってきたんだけどさ、②は台詞がちょっと丁寧なんだよね。
「わたくしを放逐したのでございます」
すごいよ、難しい言葉よく使えるね。
③です。
「ところが師匠は、ただ一片の善縁に迷い、ことの是非をも察してくれないのでございます」という愚痴がヤバいw
「ぽっと出のおっさんに気を遣って、今まで尽くしてきたおれのこと責めてくるんだけど」って言ってるじゃん。
そして、悟空が抜けた一行で三蔵の台詞。
私調べですけど、三蔵が悟空のことを「弼馬温」って呼んだの初めてだと思います。悟空が嫌がる呼び方で絶対呼ばなかったのに、それだけ三蔵も怒り心頭ってことなんでしょうねえ。
②でも弼馬温呼びしてます。
「ひもじゅうて」という言い方がわりと好き。
悟空の偽物が現れる
八戒と悟浄が斎を取りに行っている間、悟空(実は偽物)が三蔵を襲いました。八戒と悟浄が戻ってくるシーン。
まずは③
八戒のあきらめと切り替えの早さがハンパなすぎて笑える。しかも、悟浄ともここで別れて別々の道を行く予定なんですね。
悟浄が優しいやつみたいになってるけど、普通だからね。普通、師匠が倒れてたら、死んでるかもと思ってもとりあえず傍に行って様子を見るよね。
次は②です。
こっちの八戒は旅を諦める様子はないですねw
八戒の薄情レベルをどこに設定するかの線引きが違う印象です。
①です。
冒頭に八戒と悟浄が「うきうきと道までもどってきました」というのは、さんざん時間がかかったけれど斎と水を手に入れらからなんですね。
馬を売ってくるからその金で師匠の棺桶を買おうという八戒の珍しくてきぱきとした指示をご堪能くださいよ。全然名残惜しさとかないんだ。旅路ももう後半戦なんですけど、この期に及んでもまだあわよくば怠けたいと思ってるあたりが人間味を感じますね。
結局、六耳獼猴という生き物が悟空に化けていたこともわかり、三蔵は菩薩に諭されて、悟空をまた弟子として受け入れます。
待ちに待った火焔山だよ
さてあの牛魔王のいる火焔山です。
火焔山は文字通り燃えている山で、鉄の体を持っていてもどろどろに溶けてしまうと聞いた三蔵が不安がるシーン。悟空は三蔵に餅を買い与えます。
①です。
師匠が元気なくしちゃったから、餅を買い与えたんですよね、ぷくぷくのほっぺの師匠がやわらかいお餅を食べるところかわいいもんね。
それなのに、買ってもらった餅を老人に渡そうとする三蔵……w 悟空ファイトです。
「なんのおかまいなさるな」という台詞からは悟空の不満は読み取れないので、あれかな、スパダリの余裕なのかな。
②です。
こっちは老人にあげることはないけど、食べたとも書いてないんですよね。うーむ。三蔵が餅を食う描写、絶対かわいいんだから書いてもよいと思うんだけど。
③です。
「まあ気をもまずに、この餅をおあがりなさい」の安心感ヤバないですか。
「おれがなんとかしてあげますから、この餅で元気だしてくださいよ。可愛い顔が台無しですよ」(意訳)ってことでしょ?
芭蕉扇をだまし取るため、羅刹女といちゃつく悟空
芭蕉扇があれば火焔山の火が消せることを耳にしましたが、芭蕉扇をもっているのは牛魔王の妻の羅刹女でした。牛魔王は新しい女のところにいってしばらく留守のようです。悟空と牛魔王は五百年前に義兄弟の契りを結んだ仲なので、そのよしみで貸してもらえないかと悟空は頼み込みます。しかし、以前に羅刹女の子である紅孩児を倒し、観音菩薩の弟子にした経緯があるので、羅刹女は悟空を仇と見なし襲いかかってきます。
悟空と羅刹女のたたかいは①では詩で表現されているんですが、気になる一節があるので見ていきましょう。
短気な悟空ですから、剣で切りかかえてこられて腹は立ってるんですが、師匠のために穏やかに話し合いで芭蕉扇を貸してもらう方が話が早いので、「師匠のため」に我慢して頼んでいる、ようです。
てか、前から、この悟空はやけに「義兄弟のよしみ」を強調して、なんとか穏やかに話し合いで解決できないものか探る理由が気になっていたんですが、もしかして前回人殺しで破門された経緯があるからですかね。なるべく暴力以外で解決して三蔵の機嫌をとりたい可能性はありますか??かわいい、けなげ……。
「修行の果てに女怪となりて」ってことは、羅刹女は元は人間だった可能性あるな。
悟空は牛魔王の姿に化けて、羅刹女から芭蕉扇を奪い取ろうとします。
羅刹女は久しぶりに夫が帰ってきたと思っているので、いちゃつき始めます。(こっちもけなげ……)
まずは③
③は児童書だからね、まあこの程度のぼやかした表現だよね。
次は②
ちょっと色っぽくなってきましたねーw
さざめごととは、「男女間の恋のかたらい」だそうですよ。
「果物を口うつしに食べさせる」とかそれもうディープキスしてんじゃん、てか、悟空も顔色を変えずに女の人とそんなことできるんだね。悟空の童貞疑惑については前も書いた気がするけど、どうなんだろ。童貞だったら人妻とこんなことしたら、わりとテンパりそうな気がする。この辺澄ました顔でやってるってことは、行為だけはやったことがあるのかもしれない。
そして①
あらあら、結構いちゃついていますよ。三蔵が見ていないからってそんなことして良いんですか?
この猿は芭蕉扇をだましとった帰り道、こんな歌を歌っています。
まあ、必要なハニートラップだったと言えばそれまでなんですが、喜んじゃってるじゃんw
三蔵に言いつけちゃおう。
というわけで、今回はここまで。次回はやっと牛魔王が出てきますからね。お楽しみにです!