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日々是好日・心理学ノート

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2020年11月の記事一覧

2020年11月のまとめ

先月とうって変わって,今月は天気の良い日が続きました。秋らしくなって,紅葉も美しくなった印象です(東京周辺)。 今月も,投稿した記事のなかでよく読まれた記事を振り返ってみたいと思います。 今月投稿してよく読まれた記事では,よく読まれた記事のベスト5です。 第5位第5位はこちらです。「大学生が就職すると自尊感情が変動しやすい」という記事でした。就職して少し経ってから卒業生に会うと,ずいぶん印象が違って見えることがあります。そんなことも研究になるという例ですね。 第4位第

高齢になると右傾化していくのは本当か

少し前の記事なのですが,「なぜ右傾化する高齢者が目につくか──「特別扱いは悪」の思想」という記事があります。 そこでは,高齢者が右傾化しているとはいっても昔と基本的なスタンスは変わっていないということが書かれています。以前は企業や政治家が特別扱いを受けるのは許さないという考え方だったのが,差別されていた側が特別扱いを受けるようになってきたと認識してそれに反するようになったのではないか,という考察がされています。 「亡き父は晩年なぜ「ネット右翼」になってしまったのか」という

ナッジと恋愛必勝法

ナッジとは「どんな選択肢も閉ざさず,また人々の経済的インセンティブも大きく変えずに,その行動を予測可能な方向に改める選択アーキテクチャの全様相」という定義なのだそうです。 報酬や罰といった直接的な誘因を使わずに,知らない間にその選択が促される,といった仕掛けのことです。 ちなみに英単語のnudgeは,肘で隣の人をそっと小突くという意味があります。この言葉を聞くと,モンティ・パイソンのこのコントを思い出します。「Nudge. Nudge. Say no more.」です。

病理的な性格も年齢とともに変化する

一般的なパーソナリティ特性は,年齢とともに変化していくことが知られています。 神経症傾向は青年期に高まってから,成人期を通じて低下していきます(特に女性)。協調性や勤勉性は,成人期を通じて上昇する傾向があります。その一方で,外向性や開放性は年齢に伴ってあまり大きく変化するわけではありません。これらの傾向は海外だけでなく,日本でも同じ傾向が見られます。 全体的に,パーソナリティ特性は年齢が上がると「好ましい」方向に向かうように見えます。自己報告式のパーソナリティだけでなく他

グリットと勤勉性は違うのか同じなのか

「やり抜く力」として知られているグリットという概念があります。努力と根性のような概念ですが,おおよそ2つの要素で構成されるようです。 ひとつは「根気」の要素で,「最後までやる」という意味です。もうひとつは「一貫性」の要素で,「他に注意がそれずに続ける」という内容になっています。このように,他のことに目をくれずに最後までやり抜く,というのがグリットの主な内容だということが言えそうです。 以前,グリットと自己コントロールがとても似た概念なのではないかという研究を紹介したことが

年齢を重ねるとリスクをとるようになるのか守りに入るのか

次のような問題を想像してもらえますか? このようなゲームがあるときに,あなたなら何回くらい空気入れを押して風船を膨らませるでしょうか。 周りの人を想像してみるとどうでしょうか。周囲の人よりも,多く空気入れを押す方だと思いますか?それとも,少ない回数でやめようとする方でしょうか。 カードゲームブラックジャックというカードゲームがあります。手元にあるカードの数字の合計が21を超えないようにするというシンプルなゲームです。 いま,あなたの手元にあるカードが「5」と「9」なら

マゾヒスティックな人の性格の特徴

サディスティックな傾向とかマゾヒスティックな傾向を取り上げた心理学の研究って,ないのですか?と質問されることがあります。 ……ありますよ。 サディズムはパーソナリティ特性のひとつとして研究がされています。これまでに,サディズムを扱った研究を紹介したこともあります。 マゾヒズムサディズムの研究があるなら,マゾヒズムの研究があってもおかしくはありません。 辞書に書かれた内容によると,マゾヒズムというのは「肉体的・精神的苦痛を受けることにより性的満足を得る異常性欲」なのだそ

自閉症スペクトラム傾向と自己高揚傾向

自己高揚(self-enhancement)という現象があります。自分を実際以上によく見せようとする(あるいは実際以上に良い方向に歪めて見ている)という現象のことです。 そういう現象は何となくあることはわかるのですが,これは実は「明確な基準がない」という厄介な現象でもあります。 自己高揚を測定するこれまで,この自己高揚を明らかにするためのいくつかの方法が考えられています。 たとえば,心理尺度を自分自身で回答して,友人や知人にも回答してもらいます。他の人々が回答した得点と

マインドセットと学業成績は今度こそ関連するのか

以前にも,マインドセットが学業成績を向上させるというのは本当なのかという記事を書いたことがあります。 マインドセットというのは,何かの能力が「生まれながらに遺伝や運命で決まっていて,なかなか変わることはない」と考えるか,「環境や努力次第で変わっていくものか」と考えるかという信念のようなものです。そして,「変わり得る」という可変的(増加的・成長的)なマインドセットをもつと,実際に努力や行動が伴うことで成績が向上するだろうと考えられています。 ところが,このマインドセットは本

論文の考察を書くときのポイント

これまで,いくつか(特に心理学の)論文を書くときに気をつけたほうがよいことを記事にしてきました。 たとえば,『良いリサーチクエスチョンを立てるためには』では,研究をしていく上で欠かせない「問い」を立てるときのコツについて紹介しています。 また『よい仮説を立てるコツ』では,研究結果を得る前に立てられる仮説を立てるときのコツを紹介しました。 今回は,これまた論文を書くときに欠かせないにもかかわらず,初めて論文を書くときにはどうしたらよいのかがわからなくなってしまいがちな,「

マスク警察を生み出してしまう政策のポイント

全国で感染がさらに拡大している中でもありますし,マスクをしないで外出した人に対する視線が痛い世の中になりつつあります。忘れて外出してしまうと,本当に「しまった!」という状況になるので,予備のマスクをどこかに入れておく必要がありますね。 マスクを着用するというのは個人の行動ですので,なかなか強制することはできません。そういう意味で,マスクの着用というのは個々人の行動に任されている感染予防策の一つです。 強制か自由かそういった中で,政治的なアプローチには何があるでしょうか。国

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本来感はこころの健康に関連する

Authenticityという概念があります。日本語にするのはなかなか難しいことばのですが,辞書だと「信憑性」「信頼性」「真偽」「内容の真正」「確実」「自然度」といったように,いろいろな訳語がつけられています。とはいえ……これらの並んだ訳語を見ても,何のことなのかが今ひとつわかりにくいような......。 たとえばこの論文ではauthenticityを,自分らしくある感覚ということで「本来感」と名づけています。なるほど……それだとなんとなくイメージできそうです。どの訳語を選

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大学生が就職すると自尊感情が変動しやすい

「卒業したあともたまには大学に遊びにおいでよ」と,卒業する学生によく声をかけるのですが,今年はコロナウィルス感染症のこともあって,なかなか会うチャンスもありません。 でも先日,偶然大学の近くに来ていた卒業生が,たまたま研究室まで来てくれて,しかもその日は私も対面での会議があって大学に来ていたという偶然が重なって,会うことができたという出来事がありました。 それにしても,就職してしばらく経ってから久しぶりに学生に会うと,ずいぶん違った印象を抱くことがあります。なんとなくしっ

人を操る傾向の生涯にわたる変化

マキャベリアニズム(Machiavellianism)は,ルネサンス期の思想家ニコロ・マキャベッリの思想に基づくパーソナリティ特性です。 ちなみに以前,フィレンツェを訪れたときにマキャベッリの銅像や肖像があったはずなのですがリサーチ不足で現物を見逃しています(気づかず見たのでしょうね)……ウフィツィ美術館にも行ったのですけどね……ちょっと後悔しています。 マキャベリアニズムマキャベリアニズムはマキャベリズムと書くこともありますが,どんな手段を用いても,どんな卑怯な手を使っ