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美しい白鳥の足は、動いている。


アートを生み出す理系脳。

お話を聞いたのです。チームラボの堺大輔さんに。
今や日本に留まらず世界の色とりどりなステージで、体感没入型のデジタルアート作品を人々に投げかけ続けるチームラボ。アートの中身については周知なところも多いので、表立った華やかなイメージとは裏腹のインサイドストーリーを伺います。現在取締役を担務される堺さんが、代表の猪子さんら4名の大学院生とチームラボを立ち上げたのが2001年。今や700名のメンバーを抱える大企業ですが、プログラマー、エンジニア、データサイエンティスト、CGアニメーター、数学者、建築家、UX/UIデザイナー、グラフィックデザイナー、編集者と多彩な陣容が、デジタルを軸にしたテックとアートを融合させるアウトプットの具現化に寄与しています。その構成を見ると、7割はエンジニア。アート集団でありながら、一線級のテック企業です。卓越した理系脳が集まるチームだからこそ、判断軸は合理性。トップダウンでなくフラットなチーム運営がなされているのも、その方が高いクオリティを生み出すのに合理的だから。自分たちで判断していこうよ、素敵な旗印です。


主従を生まないワークデザイン。

そんなクリエイティブの母胎となる職場を堺さんがバーチャルツアーしてくれたのですが、オフィスはまさしく五感を刺激するアートを創造するチームのラボラトリー。積み木のような椅子やクッションのようなテーブル、凸凹した机や砂場のあるデスクと、ワクワクする風景。その中でも、天板自体が書いてはがせる巨大なメモパッドになってるメモデスクが秀逸なのです。小さいことながら大きいと思うのが、近しい機能と思えるホワイトボードは書き手と観客の主従を生んでしまう、と。すると書き手はちゃんとしたものを書こうとする。このちゃんとしないといけないというのをできるだけ辞めたい、と。みんなで答えのないものを一緒につくるには、プライベートとパブリックの境が曖昧な、できるだけ誰もが参加しやすく発言しやすい場が何より大事と思ってる、とのたまいます。メモデスク、手元は自分の落書きもできるし、真ん中はみんなで絵を描ける。このワークプレイスデザインに込められた想いにこそ、チームラボの大切なフィロソフィーが宿っているように思えてなりません。

合理的に支える創造性。

さらに僕が感銘を受けたのは、チームラボがアートだけでなくクライアントワークにもとことん注力してきたことを知れたこと。銀行や航空会社、ファーストフードや鉄道会社etc.名だたるナショナルブランドのアプリやサービスをデジタルソリューションとして手掛けられていたとは。猪子さんの言葉が歩きがちなので、当然アート文脈での理解がチームラボにふさわしいのですが、社会人としては1人のアーティストならまだしも700人のメンバーを扶養する経済性を成立させる困難さは痛いほどわかるので、アートを実践するためにも水面下で受注仕事にしっかり取り組まれてきた姿勢に真摯な必死さを感じて、メディアで報じられる芸術的なイメージとは違う好感を持つのです。加えて聞けば、ソリューションの方がプロジェクトの規模が大きいことが多いからこそ、B2B案件で得られた知見やノウハウがB2Cのアート活動における開発や運営に生かされるというシナジー創出が起きてる、と。単純に、かっこいいです、このチームラボというインディペンデントな生態系。アートやるためにもビジネスで稼ぐ。学ぶべきは、創造性を支える合理的な仕組み。明日から彼らのアートにまた違う魅力を感じてしまいそうです。


武蔵野美術大学 大学院造形構想研究科 クリエイティブリーダーシップコース クリエイティブリーダーシップ特論/第6回/堺大輔さんの講義を聞いて 2021/5/17

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