2023 BFA U15 中国代表所感



概要

アジア野球連盟(BFA)が主催する15歳以下の野球選手権が2023年8月20日~26日に開催された。
開催地は中国山東省威海市臨港経済技術開発区にある威海藍鯨棒球場である。
8つの国・地域からの参加チームが2グループに分かれ総当たり戦を行い、各グループの上位2チームが2次ラウンドへ進出して他方のグループの上位チームと対戦する。その後、直接対決の成績による暫定順位に基づいて三位決定戦、決勝戦が行われた。

グループA 日本 中国 香港 パキスタン
グループB 台湾 韓国 スリランカ フィリピン
二次ラウンド 日本 台湾 韓国 中国
三位決定戦 韓国 中国
決勝戦 台湾 日本

※第一球場で行われた全試合(初日の台湾対フィリピンは除く)がネット中継された
WeChatアプリ内、抖音の威風特播(棒球)ではアーカイブ視聴が可能

中国代表成績

20日 対パキスタン戦 ☆15-0
22日 対香港戦 ☆12-0
23日 対日本戦 ★0-3
24日 対韓国戦 ★1-11
25日 対台湾戦 ★1-6
26日 対韓国戦(三位決定戦)★1-2


チーム打撃成績


チーム投手成績

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所感

アジア4強の中の4位という結果はまあ前予想通りだったのだが、上位チームとの試合を見るにポジティブな内容だったと評価できる。
今回の代表選考にあたって一番不安視されていたのはMLBDC組の不参加で、MLBの指導を受けた国内のトッププロスペクトたる彼らがいないというのは戦力的なマイナスが大きいとみられていた。
実際にそれを実感する場面も多々あったのであるが、全体的に見て国内組だけでも好ゲームを成立させるだけの実力は持っていたように思える。

特に守備面では、失点に繋がるエラーもないわけではなかったが、ゴロやフライ処理において十分なレベルを備えており、日本戦や二度目の韓国戦において競った展開を作ることができていた。大会を通しての失策数は7でこれは日本(8)や台湾(10)より少なかった。

投手陣に関しては選手ごとのバラつきはあるがボール球を連発してどうにもならなくなるような事態は思ったよりは少なかった。ただ、投球制限もあってか好投していてもすぐに交代することが多かった。また、投野の分業が確立されていないため野手として出場していた選手がそのままマウンドに上がるというのが何度もあり準備不足を懸念していた。上位3チームは中国戦では数人の投手で投げ切らせていたので差を感じてしまう。
数字を見ると四球は34イニングで14個と少なくはないが多くもない。上位との差は奪三振数が顕著で、フェアになった打球が増えたことで被安打も増加し、失点に繋がっていた。

一番懸念されていた打撃面では期待以上の結果と懸念していた通りの問題点の双方が見られた。台湾戦や二度目の韓国戦では相手と互角のヒット数を見せていたが、あと一本が出ずに得点を奪うのに苦労していた。130前後出ていたであろう速球でも外野にはじき返せていた選手がいたのが好印象。一方、変化球にはタイミングが合わず弱い内野ゴロを量産していた。
(もし相手が変化球中心の配球をしていたらハマっていた可能性はある)
長打が出なかったわけではないが、やはりパワー面では差が見え、主力バッターでも簡単に内野フライに打ち取られてしまった。

上位3チームと比較したときに線の細さが気になってしまう。実は平均身長では韓国に次ぐ2番目の177cmと優れていたが、体重はそこまでは無かった。

(ただし、実際の選手を見る限り公式の数値より明らかに小さい選手がいるので参考にできないかもしれない)

サイズの大きさも相まって度々選手の裾からユニフォームがはみ出し、bilibiliのコメントでも「痩せている」と指摘されていた。

将来が期待できる選手が見られただけに気になるのは中国国内の育成環境で、現状スキルアップが一番見込めるのはMLBDCから米大やマイナーと契約して体つくりとメカニック改善を両立する道なので、そこから外れた選手が(他国の環境と比べて)どこまで伸びることが出来るのか疑問。

選手評価

中国棒球協会の記事を見るに選手選考は
①4月末~5月初めに行われた選抜試験(20+2人)
②6月末~7月いっぱいに中国棒球学院(天津体育学院内)で行われた強化訓練(43→24人)
③本選抜(18人)
という流れで行われていた。
①では選ばれていなかった(参加していなかった?)北京の選手が最終選考に多く残った。

中国棒球协会关于对U15国家青少年队运动员选拔结果公示的通知 (qq.com)
增强团队意识,筑牢必胜基础-U15棒球训练营侧记 (qq.com)
中国棒球协会关于国青队参加亚洲青少年棒球锦标赛的通知 (qq.com)

MLBDCのメンバーは先日行われた海峡两岸青少年棒球冠军赛を優先していたとみられる。
在中国,棒球如此精彩! (qq.com)


打撃成績


投手成績

以下、印象に残った選手の寸評
ポジションは公式ガイドと起用に準拠
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鄭子健 Zheng Zijian #13
RHP/DH
今大会の中国代表の顔と言える選手
188cmの長身から最速135kmを投じる右腕であり、ホームランを打てる長打力を兼ねそろえた逸材
小学生時代は最優秀投手に三度輝いた
郑子健---海淀输送的亚洲青少年棒球锦标赛新星_比赛_中国_运动 (sohu.com)

投球フォームはかなり洗練されており、日本や韓国の打者からも高めの速球で空振りが取れる。ただし、コマンドは不安定で直球は高めに行きがちであった。ランナーを出して落ち着きを失い、無理なクイックでボールを叩きつけて暴投した場面もあった。

打者としては確かにスイングは鋭いが、タイミングの取り方が洗練されていない。内角高めのボールを無理に打ちにいって空振りすることが何度かあった。公式にポジションがDHと書かれているがライトのポジションにもついた。

台湾戦では早々に交代し、二度目の韓国戦では出場自体無かった。
間違いなく一流の人材であることに変わりはないので、この国際経験をもとに全体的なレベルアップを望む。

楊一  Yang Yi #10
RHP/1B
初戦のパキスタン戦、2戦目の香港戦で先発した投手陣の要
台湾戦、三位決定戦の韓国戦でも好リリーフ
4試合に登板して8.1回を無失点、大会の最優秀先発投手に選ばれた
メンバーの中で一番投手らしいオーソドックスな投球フォーム

周徳柏文 Zhoude Bowen #6
2B/RHP
元国家隊員孫嶺峰率いる強棒天使棒球隊の出身
例にもれず自らも貧しい家庭出身で孫監督のスカウトで人生を大きく変えた
チームに密着したドキュメンタリー映画「棒!少年」に登場しただけでなく、格闘技版「棒!少年」といえる「八角笼中」という映画でも役を演じた野球と俳優の二刀流

专访《八角笼中》少年苏木饰演者:9岁时因棒球改变命运,电影拍的是我的生活,每场戏都是真打 (baidu.com)

セカンドでの動きはまずまずだが一塁悪送球や捕手送球をこぼしたりと細かいミスで精彩を欠いた
投手としては洗練されたフォームだが制球が定まらず、日本戦では2つの四球を出して降板している
トップバッターとして起用されていたが二次ラウンドでは無安打に終わった

宋潮 Song Chao #7
RHP/C
おそらく強棒天使出身
4年前にU10の国内大会に出場した際にインタビューを受けている
公益棒球队:棒球是孩子们人生的另一种可能-中新网视频 (chinanews.com)

三位決定戦で韓国打線を4回2死2失点(2安打)に抑え、今大会投手陣のなかで一番の投球を見せた
しなりのあるフォームから伸びのある直球と曲がりの大きいスライダーを投じる コマンドも安定していた
一方、細身なためバッティングは非力で期待できない

趙鑫 Zhao Xin #10
C/RHP
今大会のベストナインに選ばれた捕手
キャッチングミスも少なく、再三にわたり捕殺でチームを救った
投手としてはスリークォーターから力強い速球と変化球

李然 Li Ran #11
2B/SS
ショートとして出場
二塁方向への動きと比較的安定した送球が売り
一方で球際に弱さがあり、正面の強めの打球を弾く場面が見られた
打撃に目立った点は無かった

范天城 Fang Tiancheng #24
3B
タイミングの取り方がうまく、台湾戦では2本の三塁打を放った
打線で一番期待できるバッター
サード守備では送球難を抱えて2失策

謝文博 Xie Wenbo #12
2B/SS
日本戦で代打で登場するとチーム初ヒットを放った
続く台湾戦でもヒット
守備機会は少なかったが、日本戦ではカットプレーからダブルスチールを本塁封殺しており、スローイングは良さそうに見えた

袁仕安 Yuan Shian #15
OF
全試合でセンターを守った
内野への返球を見る限りスローイングは微妙
食らいつく打撃で韓国戦で2安打
チームトップの打率.353、4盗塁を記録した

蒋奚奇 Jiang Xiqi #4
RHP/OF
ぎこちないテイクバックから投げ下ろす直球は高さは悪くないもののばらつく 特に左打者にストライクが入らなかった

日本戦で先発した際は途中で二つの四球と死球で満塁にしたところで降板

李垚林 Li Yaolin #27
OF
チームで唯一の左打者
低いオープンスタンスからすり足でタイミングを合わせるタイプで動きが多い
外角のボールをよく見極めて四球をもぎ取っていった
一方で打ちに行くときに体が伸び上がっていくのが気になった

孟子聡 Meng Zicong #35
C
176cm 80㎏とチームの中では珍しいずっしりとした体格をしている
打撃フォームもイデホのようながっしりとした構えだが、始動が遅くテイクバックの動きも少ない
結果としてタイミングが合わず直球を空振り、変化球を見逃す打ち取られやすいバッターになってしまった
三位決定戦の一打同点の場面で代打起用されたが見逃し三振に終わっている

楊豊傑 Yang Fengjie #39
RHP
アンダー気味のサイドスローから緩いボールを投げる
たまに上から投げてみたりとクレバーさを備える
一方で制球にばらつきがあり、球威もないため、目が慣れたバッターに痛打され失点を重ねた


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