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【1年ぶり】お耳の病院に行ってきた【3回目】

娘は生まれつき片方のお耳がない。

ないっつーか…まあ、ない。左耳は健常だが右耳はほとんど姿がないのだ。耳の穴もない。
外耳道閉鎖をともなう小耳症というやつで、片耳ないんですよとしか言いようのない病気…っていうのもなんか違う気がするんだけど、病気だ。

と言ってもふだん普通に暮らしてる分には痛いとかしんどいとかは特になく、ちょっと中耳炎にだけ気をつけてればいいくらいのもんなんですけど、一年に一回くらい大きい病院で経過観察つって診察してもらうことになっている。

今年の8月、生まれてから3回目のお耳の病院でした。1歳3ヶ月、前回の受診からはちょうど1年。
その日の記録です。

行くぜ!

タイトルにも書きましたがこの診察が年一回てことで予約したのももう一年前なわけ。

無くすじゃん予約票。

そもそも診察日も忘れてるじゃん。
「いつでしたっけ…」って問い合わせるじゃん。
受付のお姉さんが優しく教えてくれるじゃん。(本当にすみませんでした)
もちろんつーか夫もばっちり忘れてたので仕事入れちゃってるじゃん。
うっ…わたし一人で行くのか……
別にいいんですよこのご時世だし付き添い少ない方がいいですし。わたしも病院自体は苦でもなんでもないし。
そこまでの移動がね!!
運転は下手ではないけどうーん…な腕前。あと地図がめちゃめちゃ下手。ちょっと大きい道通っていくので大体渋滞に引っかかる。夫のナビなしでは心もとない。

しかしやらねばなるまいて。

午前中に耳鼻科、午後に形成外科というスケジュールだったので食事も病院内で済ませなければならない。おうおう、なに食うんじゃい赤ちゃん自分コラ。
昼食はもちろんだけど、診察の待ち時間も昼を跨ぐことになる。どうするんじゃいなにして暇潰すんじゃい。えっどうすんのまじで。
というわけでこの日のために厳選したグッズたちが以下。

【ごはん、おやつ】
・市販のBF弁当×1
・チーズスナック×2本
・バナナ×1本
・麦茶×コップ一杯分
・紙パックの赤ちゃんりんごジュース

これもうとりあえず「泣き止むもんすぐ食わせられるようにしとこ」セットだったんだけど結局病院にいる間じゅう診察時も待ち時間もご機嫌だったし食事自体もわたしが病院の売店(ローソン)でおやつに買ったさつまいも蒸しパンめちゃめちゃ横取りして食ってお弁当半分でギブしてた。
暑かったからお茶はもっと持っていけばよかったな~ご機嫌取りに使うはずだったジュースがふつうに昼食のメニューになりました。
バナナは出番なし。そんなば(略)

【おもちゃ】
・モルカーDVD
・電子メモパッド
・ぷしゅぷしゅぬい
・しかけ絵本


しかけ絵本は音出るやつなので最終手段として。
意外と活躍したのが電子メモパッド。

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これ。ふだんは冷蔵庫に貼ってあるやつ。
ペン細いしどうかな~と思ってたけど座って待つ時間はこれのおかげで平和が保てた。

この日のために…というわけではないが、モルカーのDVDを車内再生用に購入。
家ではついついアマプラとかで見ちゃうからすごく正統でよい買い物なんだけど運転中に隣からぷいぷい聞こえるとちょっと妙な気持ちになる。自分がいま何のハンドルを握っているのかちょっとだけ混乱する。安心して、カチカチの軽自動車だよ。ふわふわのモルカーじゃないよ。

そしてやはりモルカーは効いた。
後部座席の娘の表情は見えないが、シロモが勲章もらったりアビーがレースで優勝すると後ろから「パチパチパチ…」とかわいい音がする。
は、拍手してる!?今拍手してるな!??見てえー!!!!
と、1周目は楽勝。2周目突入時から雲行きが怪しくなってきた。
モルカーがいっぱいでてくる回は好きっぽい(渋滞回、プロポーズ回、パーティ回)けど映画のパロディ回は難しいっぽい。泣く。叫ぶ。暴れる。

娘「ギャーーーーン(どこなんじゃここは)!!!」
ナビ「ポン♪この先左方向有料道路出口です、車線に注意しましょう♪」
わい「ぎゃーーー!!!左入れねー!!」

ナビ「この先500m渋滞しています♪」
わい「アアアアやっぱり…」
娘「ギョワーーーー(出せー! ここから出せー!)」

ナビ「目的地に到着しました♪」
わい「着いてないが!?」
娘「すや…すや…」


というわけで娘が寝落ちしてから更に30分ほど迷子になりつつ到着!
診察の1時間前! 
どうやったらこんなにタイムスケジュール下手くそな大人が出来上がるんだ? 予約票はなくすわ、なんだかんだ来るの3回目だぞ。子どもには似てほしくないですね。

到着!

診察前に受付とか身体測定で時間かかるかもしれないし…(あと1時間も駐車場で待つわけにいかないし)ということで結局予約時間の1時間前に病院入る。

子どもの病院なんですよね。
小児医療なんちゃらセンターちゅうて。
うちの娘もだけど先天的に体に問題がある子たちがたくさん来て、診察や手術や入院やするところ。
なので、なんか独特の空気の重さがあって毎度ビビってしまう。子どもたちが退屈しないようにか院内はかわいい配色でメルヘンな感じの待合なんだけど、ここに来る度ずしっと胸に岩を投げ込まれたような気になる。

酸素チューブ繋いでる、娘と同じ歳くらいの子と入口から受付行くまでの間に2人はすれ違った。
待合のソファにぐんにゃりと座り込んでいる子は5歳くらいに見えるけど新生児みたいな細い細い脚をしている。
たぶんそろそろ中学生くらいの、車椅子に仰向けに寄りかかるようにしているお姉ちゃんが娘を見て舌っ足らずに「ああ、赤ちゃんだ。かわいいね、見て、かわいい」と隣にしゃがんでいるお母さんに嬉しそうに話している。娘は彼女の前をよちよち歩きで不思議そうな顔で通り過ぎる。娘に手を振る彼女になんとか「ありがとうね~」と返して、もう、わたしが子どもに勝手に期待している「発達」とか「成長」って一体なんなんだろうみたいな気持ちになった。なんなんだろうな…

大事なことなんですけど、知育とか幼児教育とか、そういう、でもなんかここに来ると当然のように娘の成長を見込んでいる自分の傲慢さが本当に恥ずかしくて嫌になる。あとふつうに心臓に直にくるかなしさがびしびし襲ってきて、やっぱり夫に着いてきてほしかったな…

あと、妊婦さんもいっぱい目にとまった。

ちょっと前にTwitterで流れてきたツイートが頭に過ぎった。ブログ記事のリンクだったのだけど、


↑これです。
出生前診断というのは妊娠中に胎児に先天的な病気がないか調べる検査のことで、これをやると産まれる前にダウン症なんかの遺伝子疾患があるかどうかがわかるよというもの。
この検査には段階があって、比較的簡易な非確定検査とお腹に針を刺すちょっと大変な確定検査ってのがある。
血液検査やエコー検査なんかの非確定検査で異常の可能性が見つかった場合に、より精密な確定検査に進むわけです。
名前の通り、非確定検査では胎児に確実に障害があるかはわからない。なので、非確定検査で「お腹の子には生まれつきの異常がある可能性があります」と言われた時点で多くの親は確定検査をすべきかどうか悩む。大体の親御さんは悩んだ末に検査を受けて異常の有無を確定させるんだけど、障害がわかって堕胎する方もおり、命の選別に繋がるとしてそもそも出生前診断なんてすべきじゃないよって言われたりもしている。
逆に「障害があっても産むって決めてるから確定検査は受けません」という選択をする方もいる。
のだが、上のブログは「産むならなおさら確定検査は必要ですよ」ということが書かれているのです。

なぜか。
遺伝子疾患を抱えて産まれる子どもは心疾患や心奇形を併発しているケースが少なくないから。

産まれてすぐ心臓の動きが悪くなれば、それなりの施設がある病院でないと処置が遅れてしまう。
実は娘の病気も心疾患のプラスアルファとしても出てくることが多い病気らしい。

そもそも出産は命懸けだ。わたしは帝王切開で産んだから陣痛に耐えることは無かったけど、出血が多くて娘が先に部屋を出てからだんだん静かになっていく手術室で(今どうなってんだ?)(なんか震えがすごいんだけどなんだ?)(死ぬのか?)とふわふわと死の気配と戦っていた。
子どもの小耳症のことを聞いたのは病室のベッドの上で、朦朧としながらまだ10%くらいこのまま死ぬかもと思いながらだった。
あの状態で子どもの心臓が止まりそうで別の病院に搬送中ですなんて聞いたら、自分の息がそのまま止まりそうだ。

まあ言うてわたしは出生前診断しなかったんですけど。
産院のエコー診断では異常みつからなかったし。

この病院に通ってここで産まれる子は、お腹の中でもう生まれながらの病気があることがわかってる子だ。
でも、それも親御さんが検査の決断をしてわかったこと。お腹の子の命を守るために闘わぬ親はいないが、とりわけ勇気のいることだと思う。
妊婦さんとすれ違いながら、わたしは娘の病気を受け入れるってことが本当にできているんだろうかとまたちょっと沈みかける。
難しいな。出生前診断を受けていたら事前に小耳症のこともわかったんだろうけど、わたしはその方がぐだぐだ悩んでしまいそうだなあ…
答えはない。
みんな健やかに生まれてきてほしいね。


11:30耳鼻科

受付に行ったら「診察前に聴力検査おねがいしまーす」って看護師さんに言われてはーい!って元気にお返事したけど、えっわれわれ今日聴力検査をしにきたのでは…!? 
メインが1番最初に出てきてしまった。そしてやはり早く着きすぎたのか、検査技師さんがお昼休憩中だったらしくちょっと待った。

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↑診察券と番号札で永遠に揃わない神経衰弱に興じる娘。
待ってる間電子メモパッドが大活躍だった。めっちゃお絵描きする。

きっかり30分後に技師さんに呼ばれてお部屋に入る。
検査を受けたのだけどこれがすごかった。赤ちゃん聴力検査ボックスみたいなので技師さんがめっちゃ上手に検査してくれた。ちょっとしたエンターテイメント。

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(画像は宮崎県身体障害者センターHPよりお借りしました)

こういう、3面鏡みたいな形した台の左右にスピーカーついてて、その下にマジックミラー仕込んであって、向こう側にぬいぐるみがいる。
スピーカーから音出て子どもが振り返ると灯りがついて鏡の中のぬいぐるみが見えるっていう。
「あっ!見て!いまうさぎさんいたね!?また来るかな~!?」って繰り返してると子どもが音鳴ると即振り返るようになるから「聴こえてますね~」ってわかる仕組みになってるらしい。
遊戯聴力検査というののひとつのようです。大変だよね、子どもの検査って。

娘は検査中ずっとご機嫌でうさぎさんのぬいぐるみを指さしてはキャハキャハ笑っていた。
なもんで、検査後の診察でも「検査もすごくノリがよかったみたいだから~」と3回くらい言われた。カルテに書かれてたっぽい。そんなにも…
耳鼻科の先生は去年と同じ先生でパキッとした女医さんだった。

「問題ないです! 聞こえはいいしコミュニケーションも年相応にとれてるようなので!」

パキッ! パキパキッ!(竹の割れる音)

ちなみにわたしは去年この女医さんに
「この病気で気をつけないといけないこと? ないです。普通の子とかわりません。この子にできないこともやっちゃいけないことも1つもないです」
と言っていただいて泣いちゃったのである。いい先生だ。

診察結果は変わらず、小耳症の方の耳も全く聴こえてないわけではない。ことばの発達やその他の学習には影響はでないであろう。ということでした。
よかったよかった。

おひるごはん🍽

さて、耳鼻科のあとは形成外科の予約を入れていたのだが午後からしか開かないということでなんと14:30から。耳鼻科終わった時間が12時ちょい前。
すーごいごはん食べる時間たっぷりあるな。
ここの病院、外来の受付を通り過ぎて入院棟の方にコンビニと食堂がある。そして母は食堂が気になる。日替わりメニューが豪華で当たりの食堂っぽい。

ただ、この食堂の手前に魔のローソンがあるのだ。

小児専門病院の入院棟のコンビニである。
まじでなんでもある。ほんとになんでも。
おむつも小わけパックで売ってるしおしりふきも歯磨きグッズも液体ミルクも離乳食も絵本もおもちゃもある。絶対近所にほしい。出店して。
と、コンビニ単体で見ると全コンビニがこうであれよと思うんだけど場所が場所で。
このコンビニのおかげで食堂に全然入れんのである。おもちゃの前から動く気配がない。

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これは根負けして買ったモルカー。
結局ローソンでパンとエルチキかなんか買ってお昼にした。パンはほとんど娘に盗られた。おいしいね、お母さんのさつまいも蒸しパン。

生まれてからほとんどの時間ここにいるみたいな子もざらにいるんだろう。その子らの娯楽のほとんどがこのローソンで補完されてるんだろうな。
新生児用よりもっと小さいサイズのおむつ、あるのは知ってたけど実物初めて見た。
小さいおむつも種類豊富なミルクも絵本もキャラグッズからも、生まれたからには生きねばならぬ楽しまねばならぬみたいな願いを感じた。

それはそうとおむつの小分けパックと液体ミルク、離乳食はまじで近所のコンビニにも置いてほしい。

モルカーで遊んでごはん食べてしてたらけっこうあっという間に時間が経った。
カラフルな院内はよちよち歩くだけでも楽しいらしい。
待合のソファの破けたとこに補修テープが貼ってあるんだけど、それが星型で点々と散らばってたりして、そこら中のものに子どもと過ごしてきたその物なりの名誉の負傷みたいなのが見られてよかった。
患者さんたちとボランティアさんかな? がペイントした大きな壁を結構ずっと眺めていて、なんか指さしたり拍手したりしていた。

14:30形成外科

いっぱい食べて院内お散歩してご機嫌。 
泣き止ませる用意ばっかりしてたのでちょっと拍子抜けだけど素晴らしいな。

形成外科は午前中の耳鼻科より混みあっているようだった。
娘より小さな赤ちゃんもたくさんいる。

異所性蒙古斑やいちご状血腫なんかの皮膚の治療も形成外科でやるようだし、それらの治療中ですって子はTwitterでも0歳の早いうちから見かけていた。
あとは口唇口蓋裂、目や、うちのように耳介の異常も、0歳のころから治療を開始することも多いようだ。

小耳症は結構な割合で第一第二鰓弓(さいきゅう)症候群というのを一緒に指摘される。
というか、小耳症というのが第一第二鰓弓症候群の症状の1つみたいなことなのかな。
鰓弓っていうのは顔や首の元になる部分のことらしい。第一から第六まであるうちの上から2つになんらか障害が出たのが第一第二鰓弓症候群。耳、口、下顎の形態異常がなぜか片側だけ出ることが多い。(両側に出る子もいる)
娘は今のところ外見は小耳症以外気になるところはないけど、顔の片側だけ麻痺が出たり、お口が片側だけ大きく開いてしまったりする子もいる。

「お顔の非対称は今出てないだけで、成長していくにつれてちょっとずつ気になってくるケースもあるので気を抜かないで見せに来てくださいね」

って言われちゃったけど。
先生によっては「初診から目立たない子は後からすごく顔が歪むってことはないですよ」って言う人もいるみたいだから、まあ気を抜かず、気にしすぎずかな。
お耳を作る手術はもっと大きくならないとできないので、それまでに本人が気にするようならエピテーゼ作ろうかなとも思っている。


すごいよねこれ。
まだお着替えも1人でできない娘にはずっと先のことになるだろうけど。
より多くの選択肢の中から彼女が自分の望むものを選び取れるように、今からどういうものが使えるのか、どういう手段があるのか、手術も含めてたくさん調べておかなければな。

帰るぜ!


やっぱり疲れてたのか、帰りの車内で娘はぐっすり眠っていた。

わたしも疲れた。
1年に1回ではあるけど、親としてのあり方やこどもの病気にがっちり向き合わずにいられない。この日ばかりは逃げられない。なにかから逃げたいわけじゃないけど。
でも、本当に片耳にしか症状のない、しかも小さい方のお耳も全く聴こえてないわけじゃない娘の病は日常的にはほとんど意識しないで過ごせてしまう。彼女がこれから抱くかもしれない苦しみも、わたしは見て見ぬふりができてしまうかもしれない。
もちろん、ずっと酸素を背負って生活したり、補聴器が手放せなかったり、一時だって病を忘れることができない子どもたちや親御さんの前でこんなことは口が裂けても言えないが。
でも、これから娘が小耳症を抱えて生きる中で出会う苦難は、親のわたしにも他の病気を持った子にもない悩みかもしれない。
そんな時親としてちゃんとサポートしてあげられるのか考えること。よい先生に恵まれたことを感謝すること。世の中にはさまざまな病があって、その病気と生きている人が同じ社会にたくさんいるということ。これから年に1度の受診日に毎回思い出して噛みしめるのだろうなと思う。

そして症状や重さは違えど、通院している子の親の願いはみな同じだ。
次に来る時までどうかすこやかに。

帰りは渋滞にはまらずに済んだし、娘は家の布団に寝かせても穏やかに眠っていてくれた。
次に行くのは来年。
また予約票をなくさないようにしなくては…


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