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NAIA ~NCAAとは別のアメリカの4年制大学スポーツ連盟

「NCAAとはどういう組織か&スポーツ留学したい日本人アスリートがNCAAディビジョン1でプレイするためにクリアしなければいけない条件とは」という記事ではアメリカの大学スポーツとして有名なNCAAについてお話しました。

また、「アメリカの2年制大学~なぜ日本人アスリートのスポーツ留学スタート場所としておすすめなのか」では、日本人アスリートのスポーツ留学先としては2年大もあるよ、という話もしました。

実は、アメリカの大学スポーツ連盟には、もうひとつあります。

それが、NAIA National Association of Intercollegiate Athletics という組織です。

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NAIAはNCAAとは異なる4年制大学で構成される大学スポーツ連盟です。NAIAのホームページのNAIAの歴史とされるページによると、

まず1937年にバスケットボールの創始者であるジェイムス・ネイスミス博士が8校参加のバスケットボールトーナメントをミズーリ州、カンザスシティで開催されました。

それをきっかけに3年後の1940年にNAIB, National Association of Intercollegiate Basketballという大学バスケットボール連盟が設立され、さらに13年後の1952年にゴルフ、テニス、陸上競技も加え、競技横断的な組織となり、名前も現在のNAIAに変わりました。

現在は、加盟校250校、27の競技(男子、女子それぞれを1競技としてカウント)、77,000人の学生アスリートが所属する全米規模の組織となっていて、仕組み・ルールはNCAAに近いものとなっています。

NCAAディビジョン1、2の所属大学は州を代表する大型な総合大学が多いですが、NAIA所属校はリベラルアーツ系の小規模な大学で構成されており、その点、NCAAディビジョン3と似たところがあります。
NAIAページよれば、ここ5年でNAIA所属選手数が43%も増加したそうで、NCAAのディビジョン3に所属していた大学が、NAIAへ所属を変えたところが増えているとのことで、実際に移った大学のアスレティックディレクターのコメントがNAIAのページに載っています。

https://www.naia.org/why-naia/naia-vs-ncaa/index

NCAAディビジョン3はNCAAのルール上アスリート用の奨学金は認められていません。そのため選手、その家族としては返済不要の奨学金の援助が出るNAIAと援助がないNCAAディビジョン3との選択の場合は、NAIAを選ぶのは自然なことです。NAIAのページを見ると、NAIA本部がNCAAディビジョン3の大学に対し、NAIAへの移行勧誘を積極的に行っているように見受けられます。(※奨学金のルール等を含めたNCAAディビジョン1、2,3の違いについてはまたの機会にお話したいと思います)

選手資格を得るために前回お話したNCAAのルールと基本的に似たようなルールが設けられていますが、NCAA、特にディビジョン1,2に比べ緩やかな基準となっています。

NAIAで選手資格を得るためには

NAIAでプレイするには、下記の3つのうちの2つを満たす必要あります。


①GPA 2.0以上 

高校の成績、GPAという評定値で 4段階中2.0以上

②Class Rank Letter上位半分以上 

Class Rankとはそのまま読むとクラスのランクですが、クラスは日本でいう組、クラスではなく学年という意味です。つまり学年で半分より上、に入っていることが条件

③SAT 970点またはACT 18点

SATまたはACTと呼ばれるアメリカの共通テスト(英語)で上記の点を取ることが条件

中学の成績を求められるNCAAに比べると比較的緩やかな基準のように思われますが、3つのうち2つというというのがくせもので、②成績上位半分以上がないとSAT/ACTで点数を取らないと選手資格が得られないので注意が必要です。なお、この記事を書いている2021年3月現在、コロナ禍の特別ルールとして2021年秋学期入学生は②③は免除となっています。

TOEFLは選手資格には不要

NCAA同様、NAIAの選手資格獲得条件として、TOEFL等の留学生の英語力を示すテストの点数は求められませんが、各大学からは入学要件として、一定以上の英語力を求められます。大学によっては一定以上の英語力がないと部活に入って練習参加することができません。
(なお、NCAA傘下の大学でも、入学に必要として求められる英語力に達していないと判断され、その大学の付属の語学学校在籍となる場合は、運動部の練習には参加できません。)

NCAAに比べると各種規定が若干緩やかなため、日本人留学生にとってNAIA所属校は有力なスポーツ留学先選択肢のひとつといえます。具体的に見ていきましょう。


NAIA校へのスポーツ留学がおすすめな点

選手資格の基準・ルールがシンプルで選手寄り
 NAIAのサイトではNCAAの選手資格の基準に比べNAIAの基準はシンプルで選手寄りとあります。全般的に複雑、厳格で官僚的なところもあるNCAAに比べ、NAIAは緩やかで柔軟であることを強調しています。
 NCAAのところで出たような在学前、在学中の学業の基準もNCAAに比べゆるめなので、英語がネイティブでない、学業に不安のある日本人にとっては安心材料です。


奨学金獲得のチャンス
NAIA校では奨学金獲得のチャンスはNCAAに比べて高いといえます。NAIAがいうようにルール的な緩やかさがあり、加えてNCAAに比較しての奨学金枠を目指した競争の若干の緩やかさという点もあります。

以前も伝えましたが、アメリカのジュニアアスリートの大多数が進路先を希望するのが、NCAAディビジョン1に所属する大学のチームです。彼らジュニアアスリート・彼らの保護者が、これらのNCAAディビジョン1校を希望するのはもちろん奨学金獲得という理由があることでしょう。

奨学金という条件面に加え、場合によってはそれ以上のものがあります。

それが「NCAAアスリート」というブランドです。

「NCAAのアスリート」はジュニアアスリートにとって憧れの存在であります。NCAAのアスリートたちが地元のジュニアアスリートにキャンプという形でスポーツ教室を開いたり、コミュニティで地域貢献の活動をしたり、一部の競技、トップレベルチームはTV中継されたり、と憧れに感じる演出が方々でなされています。

アスリート側にとってはNCAAアスリートになるということはステータスでありブランドです。したがって、ジュニアアスリートはそのブランドをまず目指していきます。そしてそのブランド獲得にはし烈な競争が繰り広げられています。

その点で、誤解を恐れずにいうと、NAIAの大学でのアスリート枠はNCAAに比べるとブランド力は劣ります。

しかし、「NCAAブランド」にこだわらないのであれば

「返済不要の奨学金獲得して大学でスポーツをやりながら勉強もがんばり、学士をとって4年制大学を卒業する」ことはNAIAでも可能です。

もし、NAIAの学校の方がNCAAの学校より奨学金額が多く得られるのであれば、NAIAの方がおとくにスポーツ留学ができるという事になります。

奨学金ゼロでいいからNCAAディビジョン1に行きたいという選手、たまにいます。日本人アスリートに多いです。一般的に奨学金額の獲得とプレイタイムは比例しているといわれますので、「奨学金ゼロのチームに行ったはいいけど全く出れなかった。」「せめてチャンスぐらいあるかと思ったら、そのチャンスすらなかった。」というのは「スポーツ留学あるある」であり、非常に起こりうる確率の高い選択をしてしまった帰結ともいえます。

奨学金ゼロのNCAAディビジョン1校でずっとベンチで試合に出れないより、奨学金獲得してNAIAでガンガン出場したほうがアスリートとしては充実したスポーツ留学生活を送れると言えるでしょう。(このあたりについてはまたの機会にお話します)


実際、冒頭に述べたようにNAIA登録アスリートの数がここ5年で40%以上増えたということは、ブランドより実質を考えるアスリートがアメリカ人や留学生の中でも増えたということが言えるでしょう。

NAIA所属大学にはアスリート以外の奨学金が充実している傾向にある

さらに、NAIA所属の大学では、アスリート向けだけでなく、アスリート、非アスリート関わらず、一般の留学生向けに返済不要の奨学金獲得の制度をさまざま用意している傾向にあります。そのような学校では大学入学前の高校の成績だけでなく、大学に入ってからの授業で成績をあげれることで応募・適用される学業奨学金を受けるチャンスがあります。

NAIAのレベル

ではレベルはどうなんだ?

当然アスリートとしては興味があるところだと思います。NCAAのチャンピオンとNAIAチャンピオンが戦うという大会はありません。したがってあくまでも一般的となりますが、NCAAのディビジョン1はアメリカ大学スポーツのレベルでは最高峰と言われており、個別の例は別としてあくまで総合的にはNCAAディビジョン1チームはNAIAよりも高いレベルにあるということに多くの方は異論はないかと思います。

またMLBドラフト指名選手やNBA,NFL,MLB等で指名される選手数という客観的な数として比較した場合もNCAAD1校の指名選手数がそれぞれのリーグで最も多い数として示されています。

一方、NAIAの強豪チームの中には、NCAAディビジョン1チームを倒す実力があるところが、競技によって、時期によってあるなど個別のケースでは逆転現象があるかもしれません。また個々の選手ではプロで開花して大活躍する選手も出ています。

NAIAサイトでは、かつてNAIAに属した大学チームでプレイした下記の往年の名選手を挙げています。( )は出身大学。チームは主なチーム。※彼らの出身大学中には、現在はNCAAに加盟しているものもあります。

ウォルターペイトン (Jackson State University) NFLシカゴ・ベアーズ  NFLラッシングヤード歴代2位 のレジェンド

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ルー・ブロック  (Southern University at New Orleans)MLBセントルイス・カージナルス等。メジャーリーグ通算盗塁数歴代2位のレジェンド

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スコティ―・ピッペン(Central Arkansas)& デニス・ロッドマン(Southeastern Oklahoma State) NBA シカゴ・ブルズ  ロッドマンはブルズの2度目の3連覇にピッペンは2度の3連覇に貢献。

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ニック・ナース (Grand View University) NBAトロントラプターズヘッドコーチ 2019年NBAチャンピオンヘッドコーチ。現在、渡邊雄太選手が所属するラプターズのナースコーチは、コーチ歴初期にNAIAの大学でコーチを務めていました。

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マイク・マッカーシー(Baker University)  NFLダラスカーボーイズヘッドコーチ。グリーンベイパッカーズヘッドコーチ時代にはスーパーボウルチャンピオン。大学ではアリゾナの2年制大スコッツデール大からNAIA傘下のBaker Universityに編入。タイトエンドとしてプレイしていました。

ほかに同ページ では、

スペイン女子サッカーリーグ、セビージャでプレイしていた女子サッカーナイジェリア代表のUchenna Kanu (Southeastern University)、陸上十種競技北京五輪金メダリストのBryan Clay(Azusa Pacific University)やNFL、MLBの最近の選手も紹介されています。


アスリートブランドの日本人選手では

2年制大にソフトボール留学。2年間で大活躍して全額奨学金を獲得してNAIA傘下の大学3年次に編入。その後も活躍を続け、カンファレンスの優秀選手賞を受賞した早貴子さん

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野球留学で2年制大からNAIA傘下4年大に進み活躍し、帰国後は某プロ野球球団のスカウトに就任した大地君

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同じく2年大からNAIA傘下4年大に編入し、現在活躍中のK君のほか、編入ではなく留学スタートの1年時からNAIA傘下大学への道に進み、頑張っている野球留学生、サッカー留学生の例も増えています。

ベンチでなく実際にプレイして、数をこなして経験を積み重ねる。その結果、さらなる高みにたどり着く。名より実を取り、さらなるレベルに自分を引き上げるために実戦経験を積みたい。それも奨学金獲得して。
そういう選手にはNAIAはぴったりな場所になるかと思います。


2年制大からNAIAの4年大への編入、1年次からNAIAの4年大に留学、いずれのパターンもありますのでお気軽にご相談ください。


最後に上記で上げたNCAA,NAIAの比較はあくまで一般論です。Ⅾ3の中には素晴らしい学校がたくさんあります。実際に選ぶ場面になった時は個別個別では、様々な検討点を抽出し比較をしていくことが望ましいです

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