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共同売店に関する考察13〜伊計島共同売店がある暮らし〜

かつていた場所と、今いる場所

長期の沖縄滞在から戻り、福岡県上毛町(こうげまち)に移転した実家で年末年始を無事に過ごした正月明け。今は上毛町有田集落の、海が見える山小屋の中で考えをまとめています。
昨年は、沖縄県うるま市の「うるまシマダカラ芸術祭」の事務局スタッフとしてお手伝いさせていただき、かねてから興味のあったうるま市島嶼地域にがっつりと関わった半年弱でした。知れば知るほど愛着が湧いてくる不思議な場所、うるま市。観光開発が進む西側と異なり、東側はまだ沖縄の暮らしの風景が残っています。なんといってもうるま市伊計島には、共同売店がある。私にとってこれはかなりの魅力です。

「共同売店がある暮らし」をしてみたい

芸術祭を通して地域の方と仲良くなる中でフツフツと湧いてきた「共同売店がある暮らし」への強い憧れ。上毛町で「おためし共同売店」をしたり、冊子を作ったりイベントしたり、あちこちでその魅力を熱く語ってはきたけれど、沖縄で「共同売店がある暮らし」をしたことはありませんでした。これはやはり暮らしてみなければわからないことがあるに違いない。そうと分かれば実行せずにはいられないため、早速仮住まいできるおうちを紹介してもらい、車に荷物を詰め込んで単身島に向かいました。とはいっても住民票を移すわけではないので、にわかのお試し「共同売店がある暮らし」。どこまで体感できるか・いろんな人にインタビューできるかは未知数です。

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滞在先のおうちは沖縄らしさ満載の古民家、電気と水道が通っているくらいでガスもお風呂も家電もありません。短期滞在だから電化製品を運ぶのは面倒だし、じゃあいっそのこと冷蔵庫がない暮らしをしてみよう、だって昔は共同売店が地域の冷蔵庫代わりだったんだし。ということで、
①必要なものがあれば必要な分だけを共同売店に買いに行く
②共同売店にあるものは、たとえ本島のほうが安いとしても共同売店で買う
というルールのもと、カセットコンロと調理道具一式で食生活はまかなうことに。お風呂はどうしようもないのでいつもお世話になっている近所の岸本さんちに借りに行きました(ないものはご近所さんちに借りに行く、ができるありがたさ!)。

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ちなみにハンモックと寝袋で寝ていましたが、慣れれば意外と快適に寝られます(背が低くないときついかも)。

滞在中の買い物で考えたこと

仕事で本島に出たときにどうしても買い物しちゃうんですが、手にとってふと考えるのは「これは共同売店にもあるんじゃないか?」ってこと。そう考えると、割となんでも伊計島共同売店で揃うことが判明しました。特に伊計島共同売店は品揃えが豊富。ただほしい野菜やお肉、お刺身などに関しては共同売店で手に入らなかったりもします。でもそれは、沢山ある中からその場で選んで買う、ということができないだけの話。

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これは住民にならないと活用するのが難しいんですが、欲しいものは共同売店に電話一本入れれば翌日入荷してくれるという仕組みがあります。たとえば毎日使うようなお豆腐なんかも注文制でした。すき焼き用の上等お肉も、言えば仕入れてくれる共同売店。欲しいものがないな、と思っても取り寄せしてくれるから、言ってみれば「なんでもある」わけです。

お店って本来そんなものなのかもしれません。地域住民がいつも使うもの、消費するのが早いものは陳列棚に常備して、他のものは注文制で必要な分だけ仕入れる。その方が在庫抱える心配がないし、食品ロスも減るはず。何かと連絡を取り合う関係になってお客さんとの密なコミュニケーションも生まれるし。

伊計島共同売店の中にあるベンチでバナナを食べていると、売店の電話が鳴りました。売店に◯◯はあるか問い合わせの電話の様子。ないけど仕入れとこうか?いついるの?どんなね?あぁ、前に言ってたあれね。わかったわかった。とまぁそんな感じで親戚付き合いのようなやりとり。あぁ、いいなぁ。

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(写真:バラ売りのバナナと、ゆんたくおばぁたちがヒゲ取りするもやしの山)地域の自治で成り立つ売店であれば、棚に並ぶ商品数は少なくていいのかもしれません(やんばるの伊部売店が特徴的)。とはいえ選ぶ楽しさもあるので、バランスが難しいですね。

出口調査の現実

伊計島にお試し居住している間、共同売店の前もしくは中で缶コーヒーとパンでも食べながら出口調査をしようと張り切ってたんですが、思うようにいきませんでした(反省)。自分のスケジュール管理の甘さを筆頭にもってくるとして、他の要因としては
①にわかの仮住まいだから顔が知られてなくて話しかけづらい
②親しい島のおじぃに連れ去られる
③通りすがりの島のおばぁにおうちに招かれる(写真:売店前で一緒になり、「乗せていきなさい」と言われて車でおうちまで送った後に「食べていきなさい」と卵焼きをご馳走してくれるおばぁ)

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といったことが挙げられます(短期間コバヤシ調べ)。まずは自分を知ってもらうことが最重要。芸術祭の時に何度か見たり挨拶することはあっても何者か分からないわけで、よく知らない人に買い物袋の中身なんか見せたくないのは当然だし、逆に島の人と仲良くしたいからと誘いについて行ったりしていると、共同売店の出口調査などできないのです。私の考えが甘かった。これらの反省を踏まえ、2020年はちゃんと自分が何者で何をしているかを伝えながらリベンジ調査したいと思います。

イベント「キシモトじゅうてーでシマシネマとおでんナイト」開催。買い物は共同売店で

滞在中に何かイベントを企画しようと思ってずっと考えていたのは「おでん」。肌寒くなるこの季節に食べたいものをみんなでつつきながら、芸術祭で制作された岸本さんちの「KISHIMOTOじゅうてー」を会場に、これまた芸術祭で上映された昔の島の8mmフィルム映像とそれに合わせた岸本さんの三線生演奏を楽しむ宵。ワンコイン500円でおでん食べ放題、飲み物は共同売店で買ってきてもらうという形にしました。

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おでんのタネは定番のテビチ(チマグだった)の他12種類。玉ねぎが好評。

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できればおでんのタネになる素材も全て共同売店で揃えたかったんですが、思うように揃わず悔しい気持ち。でもみんなに楽しんでもらえたみたいだから良いか。こんな風に、地域でイベントを仕掛けつつ共同売店と紐づける、そんな取り組みも今年はしていきたいと思っています。今年は共同売店イヤーになりそうな予感。

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