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【シェフの独り言】伝える味・繫ぐ味

味覚とは舌の感性ではなく
記憶の中で生きる思い出の先入観

味覚というものは不思議なもので
実際に舌で感じるものより嗅覚の記憶や視覚からくる先入観
そして思い出や思い入れが大きく影響するように思う

物理的にもそう
同じ材料を同じ分量で作っても同じ味にならないのです
鍋の大きさや形に微妙な火加減に材料のコンディション
厨房の温度や湿度によっても影響します

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記憶の中での思い出で重要なファクターは

誰が作ったのか
誰のために作ったのか
いつどんな時に食べていたのか

この3つではないでしょうか

子供の頃の母親の味
夏休みの田舎での食事
学生の頃帰り道での食堂
自炊覚えたての得意料理
初めて自分のお金で通った行きつけのお店
背伸びしてデートで使った憧れのお店
同じ家で味わうパートナーの手料理
子供が一生懸命お手伝いして作ってくれた料理

何か思い当たることはありませんか

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料理とは日常であり大衆

高級レストランであっても家庭の食事であっても
変わりはありません
食事は必要の中で取る行為か
日々の楽しみの一つか

思い出はそれぞれ

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思い出の中に残るかどうかは
その作り手の愛情

ささやかでも伝えるものがその料理に込められているか
その時は何も感じなくとも
いつか必ず伝わるものです

それは家庭であっても給食であってもレストランでも変わりません
なぜなら料理はいつだって日常ですから


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それが味の記憶なんです

誰しも思う
母親の味を小学生のとき
毎日感謝して食べる子供なんかそうはいません
誰もが家を出て自炊をしたとき初めて感じ
実家に帰った時久しぶりに母の味を知り感謝する

お店だってそうです
店員とお客様の関係でも
思いやりや愛情があれば
たとえありきたりな料理でも
その味はいつの日か記憶となって蘇り
人の情けを感じる時があるんです

たとえ駅の立ち食いそば屋さんでも
チェーン店の牛丼屋でも
通ったお店なら思い出す店員さんの笑顔
一人や二人はいるでしょう
その笑顔がお店の味だったのです

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味覚とは思い出と感謝の数

あたりまえに感謝
ありがとうは有難し
料理の味もしかり

美味しいものを食べるのではなく
愛情の中で
感謝して食べるから美味しく感じる


家庭での食事でも
レストランでの食事でも
伝えるものは同じ
伝えたもはいつまでも
その味として繋がるのです

大切な記憶の中で

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味とは常に一期一会

目に見えなくとも
声に聞こえなくとも
触れることができなくとも


一番大切なものは
いつだって自分のそばにある



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