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【シェフの独り言】アサリの産地偽装 

本日のアサリのワイン蒸しは熊本産のアサリを使用しております

あとりえではお客様に料理を提供する際
食材の産地を説明しております
それは産地に対する生産者の皆)様へのリスペクトを
お客様と共有するためにです
時にはお客様の故郷だったりご両親の出身地だったり
思い出の旅先や仕事で訪れたりと縁の深い地域だと
話も弾み料理にもさらに興味を持って食していただけるのです

当然仕入れる際に産地にはこだわります
農産物も畜産物も海産もどんな小さなものも簡単には東京の市場には届きません
その地域の生産者や関係者たちの想いやこだわりご苦労なども
すべて積み込んで来ていると考えております

もう20年近くも前になります
企業の料理長を勤めていた勤務先の会社は
売上のために平気で産地偽装をしておりました
(大企業傘下の上場会社)
ブラジル産の鶏肉を地鶏と称し
単なる冷凍の豚肉を黒豚を呼び
7割がかまぼこの蟹肉をズワイガニに仕立て
売上を作っておりました
当時お客様への背信行為に胸が痛く
何度も会議などで訂正に戻そうと訴えたものの
会議室で1番若い料理長の自分の意見など相手にされず
悔しいも思いの繰り返しでした
自分が偉くなったら真っ先に改善しよう
その思いが強すぎて上司や会社と闘い
あまりにしつこく訴え会議で立たされた事もありました
それが解雇に追い込まれる(最終的には円満に自己退職となりましたが)形になりました

その時の悔しい経験から独立した際には食材や生産者へのリスペクトをもち
お客様へ誠意ある料理を提供しようと決意しあとりえを立ち上げました

熊本のアサリ偽装
1人2人で出来る偽装ではありません
想像するに多くの人間が違法と知って関わっていたはずです
全く訳もわからず関わっていた人もいたでしょう
悪と知りながら生活のためにと行っていた人もいたでしょう
その中でも不正を訴え戦った人も居るでしょう
見て見ぬふりの人も含めて
多くの関係者が関わり全ての利用者を裏切りました

きっとプライドを大切にして良質の商品を提供しようと思う気持ちよりも
上司や偉い人に怒られない方を選択したのでしょう


客に怒られるのはひと時
上司に来られるのは一生
そんな感じなのかも知れませんね
残念です

残念ながら自分はアサリに限らず
しばらくは熊本の食材を使う気持ちにはなれません
味や値段も大事ですが
それ以上に真面目に仕事する人たちをリスペクトし
その気持ちを料理に変えてお客様に届けるのが
自分の仕事なのですから

そんな自分の父方のルーツも熊本県天草だったりもします

本当に残念なニュースでした




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