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フルトヴェングラー氏 最後の録音 ワーグナーのヴァルキューレ
ヴィルヘルム・フルトヴェングラー&VPO
ワーグナー:楽劇「ヴァルキューレ」
1954年9月28日~10月6日録音
東京芝浦電気33rpm HA1160/64(赤盤)
~ 白水社「フルトヴェングラーの手紙」に氏の最晩年の心情が綴られている。
氏が逝去する直前にしたためられたもののうちから一部を引用する。
氏の最後の録音、ヴァルキューレのセッションのことなどのほかに、1955年に予定されながら、逝去により未実現に終わったBPOとのアメリカ公演への複雑な気持ちも吐露されている。~
アントワーヌ・フォン・バヴィエに
クララン、バセ=クロン荘
1954年11月7日
家内の持ってまいりましたご令兄の訃報に、たいそう驚いております。ついこのあいだまでお元気でご活躍なさっておられたということ以外、なにもうかがっておりませんでした。そして今はもう、この世の人ではないなどとは?
しばらく前から、貴兄も私から遠くへ去っていかれたようなような気がしてなりません。おやさしくて魅惑的な奥さまとは、ザルツブルクで二、三日ごいっしょでしたが、貴兄はお子さまを連れてビアリッツにいらっしゃったとのことでした。いずれにいたしましても、ザルツブルク音楽祭の最初の日から、貴兄とは拝眉の折もなければ、お手紙をいただくこともありませんでした。ご近況やら今後のご予定やら、お知らせいただきますようお願いいたします。
こんなことを書きますのも、もう長いこと不快な気管支炎のため床についているからです。十二月までは病気をしていられる時間もありますが、それから先はまた旅行の連続です。でも体の状態がこんなですから、やさしく単純なプログラムだけを組みました。年が明けての旅行、ことにすぐその後に控えているアメリカ行きには、かなり複雑な気持ちでおります。
近く、お便りをいただけることを念じつつ、家内からも、奥さまにどうぞよろしく。匆々
ヴィルヘルム・フルトヴェングラー
追伸 なお、ベルリンへ行ったとき、貴兄のことをお話しておきました。招待がまいるものと思います。―― 最近、『ワルキューレ』の全曲をレコードに入れました。
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